私の知らない祝福
実は初対面の人など、接触がありそうな人には一番初めに私の魅力が感じられない、という祝福があったらしい。
自分の事なのに、自分では知らないことが沢山あると私は今更ながら感じさせられた。
きっと、今日この場所にシルフに連れてきてもらわなければ、一生分からなかったかもしれない。
生きていると信じられないことに遭遇するものだ。
そう思っているとそこで村長のカルが私の方を見て、
「公爵令嬢リズ様、ぜひ、我々に力をお貸しください」
「……私が持っているのは知識だけですよ? そして療養のために来ておりますので、いつ帰るか分かりませんが、それでよろしいですか?」
丁度ここに来てぼんやりしている予定ではあったので、少しくらいならと思ったのだ。
ほんの少し手を貸して誰かに喜んでもらえたなら、そう私は思ったのだ。すると、
「それでもかまいません。少しでも“村おこし”が成功に近づくならば」
「でも私は確かに菓子職人に教わったりしたけれど、本当に私のケーキは商品になるのかしら」
そこがどうにも不安で、口に出してしまう。
するとサナが、
「ではそちらの村長のカルさんに、先ほどリズが作った庶民のおやつである蒸しケーキを持ってきましょうか。これを食べて頂いて、村長さんの意見を聞きましょう。それにこの蒸しケーキはこの村の作物や卵、ミルクを使っています。参考になるのでは?」
といった提案を受けて私は蒸しケーキを一つ取り出し村長のカルに差し出す。
どうだろう?
不安と期待を胸に様子を見ていると、
「……素晴らしい。ここまで美味しいものが出来るのですね。ぜひ公爵令嬢リズ様にも村おこしを手伝って頂きたい」
村長のカルが、そう真剣に私を見て言ったのだった。
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