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ハジマリ
「あなたのそのお茶にNPCという特殊な薬物をしこみました」
俺、波子 結城は少女の言葉に頭をかち割られるような痛みを覚えた。
NPC。
近年発見された猛毒細菌を1億詰め込んだ史上、最も危険な毒薬。
国によって厳重に管理されている毒薬がなぜこの少女が持っていると言うのだ。
「その目は信じてないようですね?ふふっ。私を誰だと思っているんですか?」
そう嘲笑うように少女は言い、長い黒髪を白く綺麗な指で遊ぶ。
嘘だ、そう信じたい。
しかし少女ならやりかねない。少女、川崎 由梨は人間を実験台にする、科学においては天才だが人間に関しては冷酷極まりない人物だ。
毒薬をそのままコピー商品のように生産するのも難しいことではないはずだ。
「安心しろ。うまくコピーできた」
そう言うと少女は妖艶に微笑み一歩、また一歩と俺に近づく。
春の実験室に張り詰めた空気が漂う。
「今回は君が実験台だよ、波子クン」