第二話 心を閉ざした容疑者たち
■見張りの兵士
「ええ、昨晩23時ぐらいにお休みになったんです。はい。
かなり体調が悪そうでフラフラと歩いておりました。
いつもはもっと夜遅くまで起きていたと記憶しております。
お声をかけても、呂律がまわっていないご様子でした。
今朝、直属のメイドが奥様を起こしに来ましたね。
まもなくメイドが慌てた様子で戻ってきて、
すでに亡くなっている奥様を発見しました。
その後、自分は医師を呼びに走りました。
扉を壊す以前に部屋に近づいたものは旦那様以外にいません。
もちろん、自分も近づいておりませんです。はい。」
■夫人の御主人
「確かに、妻は晩酌をしてからめれんな様子だった。
月を見ながらワインを飲むのが日課だったんだ。
酌は使用人から気まぐれに指名していた。
え、アテですか。
いえ、ワインしか飲んでないはずですね。
夕食の時には、調子が悪い、なんて様子は少なくともなかったと思う。
でも、たったの2杯であんなに酔うなんて、今までなかった。
眠る前、日付が変わるくらいに扉の前で声を掛けたけど、返事はなかったよ。
他意はない。心配だっただけです。
今思えば、その時にはもう……死んでいたに違いない。
勤めで早朝から家を出ていたけど、話を聞いたときは耳を疑った。
殺されたのか、それすらわからん」
■夫人と気の置けなかったメイド
「う、うぅ……。なんで、奥様が……。
はいぃ。今朝、わたしが奥様を起こしに参りました。
でも、ノックをしてもお返事が無くて、鍵もかかっている。
これはただ事ではないと思い、
兵士さんにお願いして鍵をこじ開けて貰ったんです。
そうしたら、奥様が……!ベッドで真っ白になっていらしたんです!
兵士さんは慌てて医者を呼びに行きました。
わたくしは、奥様に縋り付いて、
ワンワンと泣いていることしか出来ませんでした。
え? ワインですか?
昨晩のワインボトルはキッチンに片付けました」
◇
聞いた内容をメモ帳に記入していく。
聞けば聞くほど謎は深まるばかりだ。
夫人は23時に部屋に入った。
日付が変わる24時頃にはもう反応がなかった。
この時点でもう亡くなっていたと考えられる。
この僅か一時間で見張りの目を盗み、
どうやって扉をすり抜けたというのだろうか。
そもそもどうやって夫人を手に掛けたというのだろうか。
「苦戦しているようだな」
「先生」
「窓も扉も施錠。
しかも、部屋は見張られており容易には開けない。
実に模範的なツンデレだ」
出た。またツンデレ説。
部屋の遺体はすでに運び出されている。
先生は腕を組んでベッドを睥睨していた。
「さて、君ならどうアプローチする?」
『どうやって出た?』『どうやって入った?』
そんなことばかり考えているようでは、
おそらく一生、彼女は振り向いてくれない」
「じゃあ、何を考えれば?」
「なぜ彼女は、そこまで頑なに心を閉ざしているのか」
彼は枕を裏返すと、重々しく頷いた。
「密室も同じってことさ。
関係者を集めてくれ。
犯人がわかった」
「は、はいっ!」
ボクは一目散に部屋を飛び出した。




