ホンモノの兄が訪ねてきました
「おお、親愛なる我が妹、寧々子よ。息災であったか」
策士っ! と寧々子とジルは、宮殿を訪ねてきたセゼリアの兄と会った瞬間、衝撃を受けた。
そもそも、今の登場の挨拶からして計算高い。
寧々子、と呼ぶことで、事情はわかっているぞ、とこちらに一言目からちゃんと知らせてきている。
寧々子はカミル殿下に微笑みかけた。
「お久しぶりです、お兄様。
長旅、お疲れになったでしょう」
兄妹の対面を眺めている壁際の貴族たちが話しているのが聞こえてくる。
「なんと麗しい兄妹だ」
「そっくりなご兄妹だなあ」
人の目とは、かくも適当なものなのかと寧々子は思った。
「この国の奴らの目は節穴かな」
みなが去ったあと、寧々子の部屋でカミルが言う。
「……私もこの国のものなのですが」
そうジルが言うと、
「お前だけ毛色が違うな。
いつも寧々子といるのか」
とどっかり椅子に座ったカミルは酒を呑みながら言う。
はあ、悪巧みは、いつもこのメンツで。
王様はピュアなので、という言葉を二人は飲み込んだ。
カミルがチラとメイッサを見ると、察しのいいメイッサはみんなを下がらせた。
ジャンヌは、私は残りたいです~という顔をしていたが。
「それで?
お前は誰なのだ。
うちの妹は何処に行った?」
「たまたま通りかかった私にこの腕輪をはめて、ばあやさんらしき人と逃げました」
困った奴だ、とカミルは溜息をつく。
「それにしても、たまたま通りかかったのを捕まえたわりには、上手くことが運んでいるではないか。
王を手玉にとっていると聞いたぞ」
「手玉にはとれてません」
「ほう。
では、王がお前が手玉にとっているのか」
「そのようなことができる感じの方ではないですねえ」
「……誰が手玉にとっておるのだ」
寧々子はジルをチラと見た。
「ほう。
お前がこの寧々子の愛人で、王を手玉に……」
「誰も手玉にとってませんって、カミル様」
「お兄様と呼べ。
もうセゼリアは戻ってこないだろう。
お前が正式にセゼリアとなるのだ、それでいい」
私が許す、とカミルは言う。
「そもそも、あまり付き合いのない妹でな。
愛想のない奴だし。
私もよく知らないのだ」
「そうなんですか」
ジルが、
「王族や貴族の兄妹なんてそんなものですよ。
知らない間に兄妹増えてたりしますしね」
と言う。
そうそう、とカミルと二人、笑っていた。
よくわからない世界だ。
「待てよ。
ということは、お前は貴族ですらないのか」
もうどうしようもないくらい庶民ですね、と寧々子は思ったのだが。
「うちの妹より、王族としての気品があるぞ。
庶民は食べ物も豊かでなかったりして、険しい顔をしているものだが」
とカミルは言う。
飽食の時代を生きてきましたからね。
「まあ、また立ち寄らせてもらうよ」
とカミルは立ち上がる。
「正体がバレて、私の首が飛ばない限りいますので、いつでもどうぞ」
歓待しますよ、と言ったが、
「莫迦め。
お前の首が飛ぶときは私の首が飛ぶときだ。
私はお前を妹だと認めてしまった。
こんな大国の王を共に謀ったわけだからな」
と去り際、カミルは言っていた。




