◆167・ふえ? □
食事が終わったあと、部屋へと戻ってからしばらく……。
レイと雪丸さん、白竜様と金竜様とが、ロイド様と大公子様の話し合いに参加しにいった。
私と残りのお竜様たちは、猫妖精たちと一緒に部屋で寛ぎ中である。
ルー兄も一緒だ。
そんなルー兄の前に、ポニドラが一体……。
「《ふぅん、お前、確かにファウストに似てるな》」
そう言ってルー兄に声を掛けたのは、黒竜様だ。
呼びかける時は『アーテル様』と言うようにしているけれど、今は『黒竜様』でいいだろう。
そんな黒竜様、実は今まで一度も、私以外の人間と言葉を交わしていない。
金竜様が『黒竜は人間が嫌いなんだよ』と言っていたけれど、私とは話すし、人間の作った料理も普通に食べている。
人間が『嫌い』というより、人間に対しての警戒心が強いだけのような気もするけれど……。
まぁ、細かいことは気にしなくていいだろう。
それより、『ファウスト』って確か、ルー兄の先祖の来訪者さん……だっけ?
白竜様も同じようなことを言っていた気がする。
……とか何とか考えている内に、黒竜様とルー兄が話し始めた。
ルー兄は少々困惑の色が大きいようにも見えるけれど、黒竜様が気にせず話しているので、多分大丈夫だろう。多分……。ファイト!
黒竜様とルー兄がお喋りしているのを横目に、私はとあることに挑戦してみることにした。
それは! 《アーティファクトを創ろう!》――である。
こういうものは、あまり創らない方がいいかと思っていたんだけれど、ロイド様のあの様子を見ちゃうとね……。
国宝だと思っていたアーティファクトが実は『擬き』で、もうすぐ壊れてしまうなんて、不憫過ぎて忍びないと思ってしまったのだ。
ロイド様には現在進行形でお世話になっているからね。
まだ、私がアーティファクトを創れるかどうかも分からないけれど、ポニバス様やレイたちには相談済みだ。
ポニバス様たちには、現在ロイド様が持っているものと同程度の効果を齎すものであれば渡してもいいという許可を得ている。
という訳で、ナツメさんに作り方を教えてもらって、作ってみることにした。
私の周りには、ポニワな銀竜様と青竜様、ロックくんとトラさんがいる。
小さき人外組に囲まれながら、ナツメさんに話を聞く。
作り方は、『魔石や魔力の籠った金属に齎したい効果を付与する』……だそうだ。
う~む、前に作ってみた魔道具擬きと似た感じ?
説明だけ聞けば、発熱する石やマジックバッグを作るのと大差ない感じである。
何となく、『結構、簡単にできそう?』なんて思ってしまったけれど、そもそも私のような作り方は、他の人にはできないらしい。
私の作り方は、『妖精流』……だそうで。
「ぇえ~? ……まぁ、いいや。ところで、魔力の籠った金属って?」
「《数が多いのは魔銅か魔鉄だな。こちらは含まれた魔力が然程多くない。魔鋼や魔金も入手はしやすいはずだ。こちらの魔力含有量は魔銅や魔鉄よりは多いな。ウーツ鋼やミスリルであれば魔力含有量はそれなりだ。ヒヒイロカネやオリハルコン、アダマンタイトであれば、魔力含有量は充分と言えよう》」
「へぇ~……、そんなんですね」
銀竜様の説明に『へぇ~』と言ったものの、私はどれも持っていない訳で……。
持っているのは、この世界ではレア扱いされているらしい形が整った魔石。
それから、モルタットの市場で買ったクズ魔石だ。
というか、ヒヒイロカネやらオリハルコンやら、最後らへんに羅列された金属ってレア物なのでは?
教えてくれたのがお竜様なので、人間世界でのレア度が謎である。
まぁ、とりあえず、練習……ということで、クズ魔石で試してみようかな。
――うむ、やってみっぺ。
クズ魔石を握りしめ、魔力が三千UPするようにイメージしつつ、力を籠める。
「っふんぬ!」
――《ピキッ》
「んぁ?」
――《サラッ》
クズ魔石を握っていた手を開くと、ひび割れた魔石が目に入った。
そして、次の瞬間、塵と化した……。
「あ、消えちゃったにゃ~」
「サラサラだったにゃんね」
「………………」
「魔力の籠め過ぎだにゃ」
「《ふふふっ、気合いを入れ過ぎちゃったのかしら》」
「《まぁ、その魔石ではな》」
「もう一回……」
今度は魔石をゆるく握り、ふわ~っとしたイメージをしながら、魔力を籠めてみる。
まぁ、握り込む力加減など、多分、全く関係ないはずだけど……。
「え~い」
「お?」
「《あら……》」
「《ほう?》」
「……できた!?」
―――――――――――――――――――
◆魔力増加石
[効果] 三万の魔力増加
[効果時間] 制限なし
[製作者] リリアンヌ・ベルツナー
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「ふぁ?」
――桁、間違うてますやぁ~ん!
流石に、三万UPはマズイでしょうよ。
これはナシ、ナシ! と、あわあわしていれば、時間差で魔石が割れた。
「………………」
「あちゃ~……にゃ~ね」
「もう一回やるにゃんよ!」
その後、数度の魔石大破を繰り返し、ようやっとの思いで一個目の完成を成就させた。
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◆魔力増加石
[効果] 八千の魔力増加
[効果時間] 制限なし
[製作者] リリアンヌ・ベルツナー
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まぁ、まだちょっとUP率が高いけれど、練習だからね。練習。
あと数回練習すれば、『魔力三千UP』のものができるだろう。
そうして、練習を続けること数回……。
「お!?」
「お?」
「できたにゃんか?」
「できたにゃ~?」
とうとう、狙った通りの効果を付与できるようになった。
失敗……いや、練習作品は自分のアイテムボックスにナイナイしておこう。
その後も数回の練習を繰り返し、お次は本番!
……と、いきたいところだけど、効果付与した石だけ渡してもね……。
効果を付与するなら、装着できる状態に加工してからの方がいいだろうし。
どうしたもんか……と思っていれば、ナツメさんが『魔金』の塊をくれた。
「いいの?」
「にゃっ! いっぱいあるからにゃ」
「ありがとう」
「《ん? なら私からも……》」
そう言った銀竜様の前に、ゴトッと何かの塊が出現した。
「わっ!」
「《あら、アルギュロス、貴方……》」
「《うむ、これを少し転移させただけなのだが……》」
「あ~……」
どうやら銀竜様、ポニワに憑依中なのに、いつもの感覚で魔法を使ってしまったようである。
それとも、こんなに魔力を消費すると思っていなかったのかな?
十五センチほどの大きさだったポニ銀様が、五センチくらいに縮んでいた。
ここまで小さいと、素直にかわいく見える不思議。
「《リ、リリアンヌ……》」
「ああ、はい」
今のポ二銀様に表情などないのに、とても申し訳なさそうにしている表情に見えた。
個人的にはこのサイズのままでいてほしい気もするけれど、心なしかしょんぼりしているポ二銀様に言うのは無理だなと、シュバッと素早く魔力注入をした。
そうして十五センチサイズに戻ったポ二銀様は、先ほど出現させた十センチ大ほどの、青みがかった銀の塊を私にくれると言う。
「これは何ですか?」
「《ミスリルだ。魔銀とも言うな》」
「ミスリルって何だか希少そうなんですが、本当にもらっていいんですか?」
「《うむ、今はこれだけしか転移させられなかったが、私の島にたくさんあるのだ。遠慮せずに受け取るといい》」
「あ、ありがとうございます」
いっぱいある? なら、いいのか?
もしかして、この世界ではそんなにレアじゃない?
まぁ、くれるというなら、もらっておこう。
なんかキレイだしね!
「《だったら、私も!》」
「え?」
そう言ったポニワな青竜様であるポ二青様も、自分の前に何かの塊を出した。
例の如く、ポ二青様も五センチサイズに縮んでしまったので、同じく魔力注入をして戻す。
「《ありがとう。あ、これ、受け取って》」
「ありがとうございます。これは?」
「《緑柱石よ。魔力含有量は魔金と同じくらいだけど、磨けばキレイになるわ》」
「そうなんですね」
ポ二青様がくれたのは、水色や緑色などが混ざったような石の塊だ。
大きさは十センチ大ほど。デッカイ琥珀糖みたいで、こちらもキレイである。
あとで、自分用の装飾品も作ってみようかな。
まぁ、まずはロイド様用のアーティファクト製作からだ。
どれを使ったらいいかを話し合った結果、ロイド様用には、ナツメさんがくれた魔金を使うことにした。
付与する効果を考えた時、魔金くらいが丁度いいのだとか。
どれがいいとか私には分からないので、その辺はお任せである。
という訳で、魔金の塊を自分の前に置いた。
――して、これをどうしろと?
装飾品に加工してもらう? 誰に? 業者?
この世界だと、鍛冶師とか? はて?
「にゃ? リリアンヌがやればよかろう?」
「ん?」
――いやいや、そんな技術、持ち合わせていないんですが?
「魔力を通して、変形させれば良い」
「え……」
――そんなことできんの?
てな訳で、とりあえずやってみた――。
「できたわ……」
とはいっても、とてもとてもシンプルな、ただのリングである。
ロイド様が着けていたものは、もっと凄い装飾が施された石付きリングだったけれど……。
「まぁ、いいか」
魔金は、黒い石に金のラメが入っているような金属だ。
装飾がなくても、それだけでキレイだし、問題なかろう。
サイズが分からないので、前にミルマン兄さんが持っていた腕輪のように、サイズを自動調整してくれる効果も付与してみる。
さてさて、できているだろうか?
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◆自動調整機能付き魔力増加リング
[効果] 三千の魔力増加
[効果時間] 制限なし
[製作者] リリアンヌ・ベルツナー
備考:不壊
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「…………ふえ?」
――なんか、余計なの付いとる~!




