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ありがとうチート!~トンズラ幼女はマイペースに異世界を堪能することにしました~  作者: 伊藤琳


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166/168

◆164・私のと何か違う……。


―――――――――――――――――――――――― 

 ◆ギアンダノッティ

 ノッティマクロークから採れる堅果型魔植生物。

 危険を感知すると警告音を鳴らすことがある。

 火に入れると弾ける。


 備考:リリアンヌ・ベルツナーに従属中

――――――――――――――――――――――――



 ――うわ……。



 私にはそんな気など一ミリもないというのに、なぜだか勝手に従属されてしまったらしい。



「《ふむ、リリアンヌに屈服したからだな》」

「くっぷく……」

「《リリアンヌには逆らってはいけないと、本能で悟ったのだろう》」

「はぁ……」



 ――カラカラ笑う前に悟ってよ。危険感知能力どうした。



 勝手に従属してくる、押しかけ従魔どんぐり。

 せめて、もっとかわいければ……。



《カラカラッ!》



 ――鳴くとこ、間違ってるよ!



 このどんぐり、普通に感情表現のために鳴いてるでしょうよ。



「これ、解約とか……」

「従魔解除しても、その内また勝手に従魔になっちゃうと思うけど」

「えぇ……」

「まぁ、害がある訳でもないし。これからは、ちゃんと危険を感知したら教えてくれると思うよ?」



 ――どんぐりの感知能力、当てにならないんですけど?



「リリアンヌ、いいにゃ~! 僕もノッティを従魔にするにゃ~!」



 何だか、盛大に押し売りされた気分だけれど、ロックくんがくれたノッティだしね……。

 その後、ノッティことギアンダノッティについて、周りの人たちに聞いてみた。

 従魔になったとはいえ、特に世話らしい世話は必要ないらしい。

 ポニワは分類的には根菜(?)なので、土に植えたり、魔力水をあげたりするのがいいらしいのだけれど、ノッティは木から離れた木の実だからね。



 そうこうしている間に、ロックくんもノッティを従魔にしていた。

 どうやら、私にくれた小袋とは別に、まだ他にも持っていたらしい。

 しかし、カラカラ言うだけのどんぐりを従魔にしたとて……。

 いや、ロックくんが嬉しそうだから、それで良いか――。



「魔植生物って、従魔にできるのですね……」

「一応、()()だからですかね?」

「スチューも試してみたらどうだ?」

「そうですねぇ……」



 ――え? ミルマン兄さんもどんぐりを従魔に!?



 いいの? それ、どんぐりだよ? ホントに?



「どうだ?」

「できましたね」

《カラ》

「………………」



 なんか、私のどんぐりより紳士的な鳴き方に聞こえるんですけど。

 それに、ミルマン兄さんのどんぐりの方が、心なしかキリッとした顔付きだし……。



《カラカラッ♪》

《カラカラッ♪》

《カラカラッ♪》



 ――おい!



 私のどんぐり共が間違いなく、私を嘲笑っている。

 こ奴ら……、私に屈服したとか、絶対、嘘だ。



「成敗!」

《カラカッ……カカッコ……》

《カラッ……カッ……カッラ》

《カッカッ……カラッカ……》



 私がノッティ入りの袋をシャカシャカしていると、別室で作業中だったらしいロイド様たちが出てきた。



「リリアンヌ、何をしているんだ?」

「どんぐりころころです」

「は?」

「(どんぐり殺殺……)」

「ん? レイ、何か言った?」

「ううん」

「ああ、そうだ。明日、エミリオ殿下と会うことになった。レイ殿にも話し合いに参加してほしいとのことで、場所はまたこの宿でということになったのだが……」

「ああ、うん、分かった」

「《ふむ、では我も参加しよう》」

「え?」

「何だ! 生き物か!?」

「「あ……」」



 そういえば、ポニバス様、誰にでも見える状態になっていたんだった……。

 私たちの陰からひょっこりと現れたポニバス様の姿に、ハインリヒさんとブラッドリーさんが困惑している模様だ。

 私たちが慌てていない様子を見たからか、剣を抜くまではしなかったけれど、ロイド様の前に出て臨戦態勢を取っている。



「お前たち、大丈夫だ、下がれ。それより、白竜様が見えているのか?」

「「……白竜様!?」」

「《誰にでも見えるようにしたのだ。これからは、リリアンヌの使い魔を名乗ることにした》」

「そうなのですね。承知いたしました」

「――っ! では本当に?」

「しかし……」



 ハインリヒさん、ブラッドリーさん、大丈夫。

 みんな、思っていることは同じだよ? 口に出しては言わないけどね。

 まぁ、アルバス様自身は、ポニワ姿を気に入っているらしい。

 なぜだかポニワを『愛らしい生物』と認識しているようで、マイポニワを育成中の猫妖精たちに交じって、アルバス様もマイポニワを育成し始めた。

 もちろん、そのポニワを配給したのは私である。

 ポニワ姿のアルバス様が鉢植えを持って、私に「《ポニワをひとつ》」と言ってきた時には、何の冗談かと思ったけれど……。



 とにもかくにも、誰にでも見えるようになってしまったポニバス様のことや、なぜか勝手に従属してきたどんぐりのことなどを、ロイド様たちに話したり何だりをしている内に、夜も更けていった。



 今日はいろいろあったからね。ゆっくり休みましょう。

 おやすみ――。



 ◆ ◆ ◆



「で? 回収した資料は見たのか?」

「うむ、先ほどな。まだ軽く見た程度だが」



 真っ白い空間で、集った五体の竜と人型のレイ。

 ゾルジ邸で白竜たちが回収した資料を広げ、話し合いを始めた。



「ダミアーノ・ゾルジと名乗っていた尾和戸(おわと)耕紀(こうき)も、召喚されてこの世界に来たようです」

「召喚……。そんなことをできる者なんて……」

「どうやら、来訪者が召喚したようだ」

「来訪者が!?」



 ダミアーノ・ゾルジと名乗っていた尾和戸耕紀。

 ウルヒナ・ゾルジと名乗っていた菊川雛。

 そのどちらもが、本来の来訪者とは異なる手段でこの世界に現れた。

 ゾルジ邸で回収した資料の中には、尾和戸耕紀がこの世界にいた『来訪者』によって召喚され、この世界に来たことが記されていたものもあったのである。



「来訪者が、異世界人を召喚したとは……」

「しかし、だからこそ納得もできる。来訪者のような特殊な力を持たぬ限り、別の世界の人間を喚ぶなどできぬであろう」

「しかし、一体、何のために……?」

「資料によれば、『元の世界に戻るため』だ」

「元の世界に……」



 来訪者は別の世界での生を終えたあと、この世界にやってくる。

 すでに別の世界での生を終えているため、来訪者が元の世界に戻れることはないのである。



「元の世界に戻るために、なぜ、別の世界の人間を喚んだのだ?」

「喚んだ人間と自分を入れ替えるつもりだったようです」

「ならば、オワトコウキなる者を喚んだ来訪者は、どうなった」

「分かりません」



 そう、その来訪者は、異世界人を召喚することには成功したのだ。

 しかし、その後どうなったのかは不明だ。

 資料は尾和戸耕紀が引き継ぎ、そして、尾和戸耕紀も自分が元の世界に戻るために、菊川雛を召喚したらしい。



「その来訪者って、一体誰なの? 名前は?」

「それも分かりません」

「ふむ、誰ぞ、思い当たる者はおらぬか? 元の世界に戻りたいと言っていた者など……」

「「「「………………」」」」



 銀竜の問いかけに黙り込む、他の竜族たち。

 それぞれに、今まで出会った来訪者を思い浮かべているのだろう。



「元の世界に帰りたいと言う者はいたが、『できぬ』と言えば、何かに納得したように、受け入れる者ばかりだったからな……」

「うむ、我の記憶でもそういう者ばかりであった」

「私も同じくだな」

「私の所には、そもそも来訪者が来ないのだけれど……」

「お前の所は、海の中だからだろ……」



 その後、竜族たちはしばらく黙って考え込んでいた様子であったが、結局、誰にも思い当たる人物が思い浮かばなかったようである。



「何だか、スッキリしないわねぇ」

「そうは言ってもな……」

「どっちにしたって、もう死んでるんじゃないのか?」

「数百年ほど前のことであろうしな」

「でも……」

「その来訪者の資料を、別の奴が持ってたんだろう? なら、その来訪者はもういないってことなんじゃないのか?」

「それって、その来訪者が元の世界に戻ったってこと?」

「それはできないって分かってんだろ?」

「そうだけど……」

「それより、コイツらどうすんだよ? まずは、コイツらの処分が先だろ」



 そう言った黒竜が、水晶牢の中にいる尾和戸耕紀と菊川雛の魂を指差した。



「処分って……、消して終わりにするつもりじゃないでしょうね?」

「そんな訳ないだろ」

「じゃあ、どうするの?」

「この者たちは、あまりに多くの者たちを犠牲にしてきたようだからな」

「ふむ……、こ奴ら自身が今まで犠牲にしてきた総ての者たちの苦しみを、追体験させるのはどうだ?」

「なるほど。その身をもって、自分たちのしてきたことを味わえってことか」

「うむ」

「いいんじゃない? 私は賛成」

「我も賛成だ」

「俺もそれでいいと思うぜ」

「俺も」

「レイもそれでよいか?」

「僕? うん。でも、追体験させたあとはどうするの?」

「さあな。それはこ奴ら次第だ」



 白竜の答えに、レイは怪訝な表情を見せた。



「……どういうこと?」

「追体験を経て、こ奴らが心の底から深く反省していれば解放されよう。しかし……」

「しかし?」

「追体験を経ても尚、何の反省もなければ、もう一度同じ追体験を繰り返すことになる」

「それって……、反省しない限り、永遠に追体験を繰り返すってこと?」

「そうだ」

「そうなんだ……」



 確かにそれならば、『こ奴ら次第』だと言えよう。

 しかし、この場にいる誰もが、この二人がそう簡単に反省するとは思っていなかった。

 どちらかと言えば、苦しみを与えた者への憎しみを募らせたり、苦しみの原因を他人のせいにする性質であろうと。

 二つの濁った魂の色が、それを物語っている。



「反省して解放されることがあっても、この世界にも、元の世界にも戻れることはないがな」

「その時はデイジーと同じ世界に?」

「うむ。あの世界でどうなるかは、あの世界の管理者次第だが……」

「どうなるって、転生が許されたとしても、『人間』以外のナニカに、だろ」

「そもそも、解放される日が来るかどうかだと思うがな……」

「そうだな」



 こうして、尾和戸耕紀と菊川雛の処遇は決定された。

 しかし、その後も竜族たちの話し合いは続いたのであった――。



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どんぐり殺殺www
どんぐり殺殺(笑)
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