ソラノハジマリ〈6〉
通信室。隊員と〈英雄〉と、呼ばれるその者が、集い会っていた。
「〈陽光隊〉か。正に、目指す先の意味含めてる」
提示される書類に《ハーゲ=ヤビン》と、記入し、捺印する。
「おまえたちとは、随分と、久しいものだ。だが―――」
「くだらん。俺達は、あんたに罪を償えなんて、望んでない!」
ルーク?
〈英雄〉の帰りを待っていた。
「父上。こんなときにこそ、自分をさらけだすのだ」
―――感謝する。
ハーゲ、目頭を指先で押さえ、肩を震えさせる。
「【この地】にたどり着いて、随分と、回り道をさせてしまった」
ハーゲ、顔を揚げ、隊員に眼差し向ける。
「ここより先は、おまえたちの目で、確かめるのだ。帰還したら、その、見聞を報告せよ」
隊員一同、敬礼。
《鍵》を手にして【国】を目指す〈扉〉は、おまえたちで、今度こそ、開かれる。
ハーゲ。通信室より、靴を鳴らしながら去る。
「バース、結局《鍵》は何だったのだ?」
タッカ、前髪掻き分け、その言葉を口にする。
俺達の“光”を〈空〉に飛ばすのさ―――!
【サンレッド】紅い列車は再び、其処に、停車する。
「うわっ!バースさん、何ですか?」
満天の空の下。重ね着姿のバースに、タクトは驚愕する。
「陽が沈むと【ここ】では、こう、なんだよ」
ぶ、えっくしょいっ!
よしてくださいよ。僕にめがけて、そんな、はしたないこと !
このまま、こいつを転がしてやるのだ。
そして、その摩擦で、暑くなったところで、身ぐるみ剥がして―――。
「おいっ!俺を、パンツ一丁にさせるつもりか?」
「自虐したか?」
「日頃の、バースさんの頭の中を、疑います」
俺をいじくるな――。
「僕を、誘わなくても、お二人だけでこの空を見ればよかったのでは?」
「バースが、おまえを連れてこいと、言ったのだ」
「…………。綺麗過ぎる」
バース、着込む服の裾を整え、くしゃみをする。
「アルマさんの“光”が綺麗です」
俺“それ”好かん。
沈黙。
「【国】はまだ、生きている。辿り着くまで、どれ程掛かるか分からないが、いいな?」
流れ星。彼らの頭上に、群れを成し、地上に降るように、地平線の彼方に消える。
「【其処】に民はいるのでしょうか?」
タクト、草原から腰をあげ、停まる列車を目視する。
「〈陽〉が空に咲いているのだ。居るに決まってる」
「俺達では、掴めない〈それ〉を守ってる」
「受け入れて貰えるでしょうか?」
その為に、姉上は子供を集わせた。その“力”得と拝見しようではないか?
何が起きても、引き返せない。
ただ、まっすぐに、進むのみですね!
―――風を吹かせてやるぞ!
三人の手、重なり“虹色の光”を灯させる。
―――そして、また、陽が昇る――――
「地平線に陽が剥ける。それに、合わせて“光”を飛ばしてください」
ロウス。おまえ“力”を抜き取られたのは、 本当に『あれ』だったのかよ?
おまえを昇格させる為だったと、何べんも言わせるな。
ハゲが娘を取られた腹いせに。と、しとけ!
「其処のお二人、お気持ちをひとつにしないと《主》は知らんぷりしてしまいますよ!」
アラ?怒った顔、アルマちゃんにソックリ!
ザンル。後でぶっ飛ばす!
ノンノン。そんな、顔、ダメ、ダメよ!
「陽が見えてきましたよ。みなさん、心静かにしてもらえませんか?」
一同、陽の方向に注目。
ソラノハジマリ、ココカラ――
エターナ、鈴の音高らかに、深紅の衣装の袂を風に含ませ、輪を描く。
――トドケ、ヒカリ。ワレラノコエニ、ミミスマセ!
薄紅に染まる空に、11の“光”飛翔する。輝き轟き、雲を貫く。
黄金色の“光”の柱、地上に差し込まれ、その形、タクトが言葉に表す。
「太陽?」
「これが【国】を目指す為の〈扉〉だ。タクト」
――おまえのおふくろさんは、この先にいる―――。
今、何ておっしゃったのですか?
行けば判ると、バース、微笑する。
「マシュ!列車を〈扉〉の前まで移動させろ」
ええ?線路、無いですよ!
つべこべ、もたもたせずに、さっさと動かせろっ!
「ルークよ」
「何だ?《親父》」
アルマを―――頼む―――。
任せろ。
バース、昇る太陽の光浴び、満面の笑みを湛える。
陽光隊、列車に乗り、見送るハーゲとエターナに、車窓より敬礼する。
列車、紅い風を吹かせ〈扉〉を潜る。
一度、汽笛高らかに鳴り、最後尾の車両が駆けていく。
再び、汽笛。
〈扉〉音なく閉まり、溶けて消える。
始まりましたね?お父様。
風が【国】を目指す、物語だな?
ええ、お母様の故郷を、あの方達がきっと―――
―――新しい、大地に生まれ変えてくれることでしょう――――。
「アルマ、何かいったか?」
「何も……言ってないぞ」
それにしても、何だ?さっきから、ぴーぴー汽笛がうるさい!
タクトだ!護送中、自粛していたものだから、自分が鳴らしたいと、運転室に駆け込んで行ったのだ。
――アルマ、だったら、さ。
――脚下!
「と、言いたいところだが――」
アルマ、バースの頬を両手で挟み、眼差しをその顔に重ね合わせる。
おまえが、愛おしい―――――。
―――アルマ。
唇、重なり、更にその身体手繰り寄せる。
車窓の光景、摩訶不思議。
羽を広げる珍獣、髭を絹糸に似せ『ふるん』と、銀色の歯を剥かせる。
生い茂る草葉の隙間より、言葉を紡ぐ水の玉。
空想のような現実が、大地に果てしなく刷り込まれる。
何処を目指すかの如く、列車はひたすら―――
――――今日も、駆けていく―――。




