第二話 「裁判開始」
「一方の証言だけでは、真実は見えてきませんよ。」
私のその言葉が修羅場に響いたとき、周りの野次馬は息を呑んだ。
こいつ、王太子に逆らった。そういう珍しいものを見る目で。
「何?俺が間違ってるというのか!」
ウィリアム様はこちらに向かって怒鳴ってきた。
怒鳴ったって、なんともならないのに。
「間違ってるとは言っておりません。ただ、」
私は、頭を下げながら、冷たい目でウィリアム様を見る。
「『ジャッジメント』の使い手としては、一方の証言を鵜呑みにし、もう一方の証言を聞かないのはいかがなものかと思ったため、申し上げただけでございます。」
プリズム様はその場にしゃがみ込んでいながらも、目を私の方へ向けていた。自分の味方をしてくれるものがいるとは。そういう目線で。
「れ、レミィが叩かれたのは本当だよぉ…!?ほら、頬が手形型で赤くなってるでしょ…!?」
典型的なぶりっ子な女は自身の頬を指さす。
「では、裁判してみましょう。」
私は指をパチンと鳴らし、模擬法廷を作り出した。
「ジャッジメント」発動の事前準備だ。
もちろん、裁判官の席には私。被告人席にはプリズム様。被害者席にはウィリアム様と自身のことをレミィと呼ぶ典型的なぶりっ子の女だ。
「それでは、『ジャッジメント』、開廷。」
手元にあった木槌でコンコンと机を軽く叩いた。
開廷の合図だ。
「それでは、まず、お名前と事実の確認を。」
私がそう言うと、被害者席にいたレミィと名乗っている女が
私の前に立つ。
「え、えっとぉ…、レミリア・ファミリアです…。前々から陰湿な虐めをプリズム様から受けていて…。」
レミリアは頬をさすり、俯きながら言う。
「陰湿な虐め、ですか。例えば、どのようなものでしょう。」
レミリアを見ながらそう言った。特に感情は無い。ただ、正しいかを確認するだけだから。
その時、被害者席に取り残されたウィリアム様が怒鳴り上げた。
「おい待て!!!なぜ俺たちが裁判をしなければならない!!レミィが泣いているのだから、それだけであの女が悪いのは確定だろう!!」
あの女とは、きっとプリズム様のことだろう。
私はウィリアム様を見ながら、言う。
「それだけでは証拠になりません。それに、裁判は静粛な場です。お黙りいただけますか?」
傍聴席で見ている野次馬たちはまた息を呑んだ。
何度息を呑めば気が済むのだろう。
「っ…。」
ウィリアム様は俯きながら黙った。私の言葉が正論だったのだろう。反論もできない。そう思ったのだろう。
「では、レミリア様、続きを。」
判決までにはまだまだ時間がかかるだろう。




