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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
十二章

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091_失地奪還戦

 


 王国軍が立てこもるボロス城に攻撃が開始された。

 昨日と同じように魔術攻撃をするが、今回は全魔術士集めて東門だけを攻撃させることにした。

 ボロス城を守るジークフリート・ローゼンは、帝国軍の魔術攻撃が東門に集中したことを受けて、素早く魔術筒部隊の配置を再編した。

 軍務大臣は軍服組と言われる将校についても、優秀なものを引き上げて家柄だけの者を閑職に追いやった。これによって、帝国軍と対峙する各軍の指揮官は優秀な者が充てられている。

 ジークフリート・ローゼンもそういった軍務大臣によって引き上げられた人物である。


 下級貴族の九等勲民家の当主であるジークフリート・ローゼンは、すでに60歳を超える年齢だ。

 年齢もあって昨年の秋に退役していたところを、軍務大臣によって帝国軍と戦う軍の指揮官に抜擢された。それまでは地方の守備隊の隊長であったのだから、大抜擢である。

 ただし、40代の頃に当時の軍幹部と意見が合わず、閑職に飛ばされてしまったジークフリート・ローゼンは、40代で中将となっていたことから軍指揮官として非常に優秀な人物である。


 ハイネルト・ヒリングが軍務大臣に就任した当時、ジークフリート・ローゼンに軍を預けようとしたことがある。

 だが、その当時は対抗する勢力(貴族派)が軍の実権を握っていたことで実現しなかった。

 しかし、この数年は貴族派が自滅してくれたため、軍務大臣が思うような人事が行えるようになった。その代償は多くの領土を失うものであったが……。

 貴族派が権力を失っていったことにデーゼマン家も深くかかわっているが、アレクやフォレストはまったく自覚していない。


「今日1日を持ちこたえれば、英雄の援軍がきてくれるぞ! 気合を入れて守れ!」

 ジークフリート・ローゼンは白髪混じりのくすんだ赤毛を肩の下まで伸ばしていてその赤毛を首の後ろで結んでいるが、その紐が解けるのではというほどに体全体を使って魔術士や魔術筒部隊を鼓舞する。

 ジークフリート・ローゼンは歩き回り魔術士と魔術筒部隊全体を鼓舞し、さらに1人1人に声をかけていくことで魔術士と魔術筒部隊員の信頼を得る。

 アレクのように圧倒的な魔術で兵士の士気を高める英雄とは違うが、ジークフリート・ローゼンは細かな気遣いで兵士の士気を高める術を知っているのだ。

 単調だが気を抜くことができない防衛戦において、こういった気遣いのできる将軍はとても強いのである。


「閣下! 西門に敵の大軍が押し寄せています!」

 伝令がジークフリート・ローゼンの前で跪いて報告する。

「敵の数は?」

「およそ2万です」

 ジークフリート・ローゼンは瞬時に考え、兵の配置を考える。

 攻撃の密度からすれば、帝国軍の魔術士はこの東門に集められているのは明らかだ。そして西門には少数だが魔術筒部隊を配置している。

 防御魔術のない、もしくは魔術士の少ない帝国軍が近づけば、魔術の餌食にできるだろう。

「予備の弓隊を西門に向けろ。魔術と矢の弾幕を張って、敵を寄せつけるな!」

「はっ!」

 伝令が足早に立ち去っていく。


 まだ戦いは始まったばかりであるが、帝国軍も昨日の戦いから攻め方を変えるのは当然だ。

 ジークフリート・ローゼンであっても、攻め方を工夫してボロス城の防御の弱いところを見つけるだろう。

 その時、東門を攻めていた帝国軍本隊の上空に眩い魔法陣が展開した。ジークフリート・ローゼンは大魔術を警戒し、魔術士と魔術筒部隊に防御魔術を切らすなと大声で命じる。


 魔法陣は帝国軍本隊の上空で高速回転し、地上の帝国軍へと落ちていく。

「あれは……。そうか!?」

 ジークフリート・ローゼンはあの魔法陣を見たことがあった。

「きてくれたか! 英雄殿がきてくれたぞ! 敵が崩れたら攻めに転じる! それまで少しの我慢だ!」

 兵士たちの歓喜の声があがる。

 視界の先では、帝国軍本隊がなくなった地面に飲み込まれていき、阿鼻叫喚の光景が繰り広げられている。

 さらに、視界の左から土煙を上げて帝国の魔術士部隊へ猛進する部隊も見え、その先頭に真っ白な巨馬に跨った偉丈夫の姿があり、その後ろには同じように巨馬が2、30頭、さらにその後方にアースリザードの姿が数百騎あった。

 それが王国軍の誇る機甲科魔術部隊であると認識するのに、時間はかからない。


 帝国軍の魔術士部隊が機甲科魔術部隊を認識し、突撃してくる機甲科魔術部隊へ魔術攻撃を開始する。

 本来であれば浮足立ってもおかしくない状況だが、帝国軍の魔術士たちは冷静に対応をした。よく訓練された魔術士たちだとジークフリート・ローゼンは、敵ながらあっぱれと感想を持ったが、ここが攻めに転じる好機だとも判断した。

「機甲科魔術部隊を援護する! 魔術士はそのまま防御魔術で敵の攻撃を防げ! 魔術筒部隊は攻撃用の魔術弾を装弾しろ!」

 ジークフリート・ローゼンは悪い笑みを浮かべ、元々深いシワがより一層深くなる。

「悪いが、これは戦争なんでな、減らせる時に数を減らさせてもらうぞ」

 帝国の魔術士に向けて魔術筒部隊の攻撃を命じる手が振り下ろされる。

「撃てぇぇぇぇぇっ!」

 防御魔術の隙間を縫って魔術筒から大量の攻撃魔術が放たれる。


 このボロス城の東門には、1200もの魔術筒兵がいる。これは、デーゼマン家の魔術筒兵を含めた数だ。

 魔術士と魔術筒兵は同じように魔術を行使することができるため、魔術筒兵の数だけ魔術士がいると同義である。

 そして、魔術筒兵は魔術弾がなくならない限り、永遠に魔術を行使できる優れた兵士でもある。


 帝国の魔術士の数にはやや劣るが、それでもほぼ同数の魔術筒兵の一斉掃射を受けて帝国の魔術士たちに動揺が走る。

 北からは王国の援軍と思われる騎馬が猛進してくる中、これまで防御に専念していたボロス城からは攻撃魔術が放たれたのである。

 戦慣れしている魔術士たちとは言え、動揺せずにはいられないのだ。

 その動揺が防御魔術の展開を一瞬遅らせ、その一瞬の差によって数十人の魔術士が犠牲になった。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 反撃開始だな
[一言] やっちゃえ!帝国潰せ!!(`・ω・´)
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