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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
十六章

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150/160

150_帝国激震

 


「マリア。帝国は僕と同等の土魔術士を用意してきた。今回の戦いに勝てないまでも、負けない作戦はないかな?」

 最前線に近いキミリス城で何日も過ごしているので、マリアは不機嫌だ。そのマリアにアレクは知恵を出してほしいと頼んだ。

 デーゼマン家はフリオの武、アレクとマリアの魔術が際立っている。戦いにおいてはこの三人をどう使うかで、勝敗が左右されると言っても過言ではない。しかし、それ以上にマリアの知識とスキル神略こそが、デーゼマン家の最大最高の武器なのだ。

「アレク兄様に匹敵するような土魔術士はいない」

 マリアは不機嫌ながらも、大好きなアレクの問いにはちゃんと答えた。

「でも……」

「あれは大魔術。多くの魔術士を使っただけ」

「大魔術だとしても、撃ち合いになれば大きな被害が出るのは間違いないと思うんだ」

「帝国の皇帝はバカじゃない。土魔術がいかに戦いで有用な魔術か、しっかりと把握した」

「それはどういうこと?」

 その場にいるアレクとフリオ、そしてデーゼマン家家臣たちがマリアの言葉を待つ。そんな状況でも、マリアはお菓子を頬張りお茶を飲む。マリアがマイペースなのは誰もが知っていることだし、マリアから菓子を取り上げようものなら、死を覚悟するような状態になることも知っている。だから、マリアが喋るまで待つ。

「魔術の攻撃は防御魔術で防がれる」

「そうだね」

「防御魔術は魔術の発動に干渉するものではない」

 魔術についての講釈が始まり、魔術士でないフリオや家臣たちは戸惑いを隠せない。

「防御魔術は発動した魔術を防ぐもので、火と風は発動して防がれたら、それで終わり。でも、土は発動したら落とし穴が開いてしまう」

 マリアにしてはかなり珍しく饒舌である。

「落とし穴は防御魔術で防ぐのは、難しい。だから、戦いに土魔術を使うのは賢い。バカは火や風の魔術をありがたがる」

 火魔術や風魔術に対してかなり辛らつな言葉だが、アレクの戦いを実際に見てきたフリオたちはマリアの言葉に納得した。

「アレク兄様と同様の魔術士など、いない。いるわけがない」

「マリアが言うならそうなんだと思うけど、なんで兄さん同様の魔術士がいないと言い切れるの?」

「バカフリオ」

「酷っ!」

「バカフリオのために教えてあげる」

「………」

「お願いしますは?」

「……お願いします」

 マリアは鷹揚に頷く。

「アレク兄様は人外。人でない以上、人がその域に辿りつくのは無理」

 その言葉に全員が絶句した。

「いや、僕が人外でその領域に辿りつくことができないって、言い過ぎでしょ」

「言い過ぎじゃない」

「でも、マリアなら兄さんにも匹敵するよね」

「私は天才。兄様とは比べるものが違う」

 マリアが天才なのは、デーゼマン家の者であれば誰もが知っていることだ。だが、本人がしれっとした顔で言うかと思い、どう反応していいか皆が迷った。

「天才と人外、どっちが上なの?」

「魔術の練度なら私。魔術の威力も一回なら私。でも、アレク兄様の魔力量は私の十数倍はある。それは宮廷魔術士の百数十倍。並みの魔術士なら数百倍くらいになる」

 今のアレクの魔力量はまさに人外であった。若い頃から魔力を使い果たす努力を積み重ねた結果である。

「僕の魔力がマリア以上ってことは、分かるけど……そんなに?」

「間違いなく人外の魔力量。そしてその魔力の回復量が半端ない。宮廷魔術士が魔力を使い果たしたら、回復に三日はかかる。でも、兄様は数時間寝ただけで回復する」

「確かに寝たら魔力は回復するけど……」

「兄様が土魔術でごり押しすれば、帝国が用意した魔術士なんて相手にならない」

「兄さんが魔術でごり押しか……」

 フリオや家臣たちが腕を組んで、アレクの魔術でごり押しでいけると信じ始める。しかし、アレクは違う考えが頭に浮かんできた。

「今の話だと、マリアが魔術を使えば、帝国を押し返せるんじゃないの?」

「ちっ」

 マリアは気づかれてしまったと舌打ちをした。マリアとアレクが魔術を使えば、大した苦労なく帝国軍を撃退できる。しかし、マリアは面倒なことはしたくないのだ。だから、そのことに気づいたのがアレクでなかったら、睡眠の魔術でその人物を眠らせていただろう。

「今、舌打ちしたよね?」

「してない」

 マリアがとても嫌そうな顔をしているので、それ以上は追及しない。世の中にはしてはいけないことがあるのだ。

「私の魔術よりも面白いことがある」

「ん? 面白い? それは?」

 マリアはアレクとフリオを交互に見てから、ラクリスを見てティーカップと空になったお菓子の皿を指差す。どこにいてもマリアはマリアである。

 ラクリスに新しいお茶とお菓子を出してもらったマリアは、対帝国軍の作戦内容について語った。

「そ、それは……」

「大丈夫。上手くいく」

「「………」」

 アレクとフリオが見つめ合って、苦笑いをする。家臣たちも苦笑いが漏れる。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 数日かけて一気読みしたけど登場人物が多すぎて名前が覚えられないけど話自体はサクサク進むので読みやすかった。 [気になる点] いくら回復速度が早くてもアレクの魔力量の最大値が数百人分なら千人…
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