135_帝国激震
【書籍化】アレクサンダー英雄戦記
本作品が書籍化されることになりました。
発売予定は2020年12月2日の予定です( ^)o(^ )
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領内の物流を促進させるために、何より軍を速やかに移動させるために、セップ郡とケール郡の街道整備をすることになった。貿易港として栄えつつあるデジム港、セップ郡の郡都でありデーゼマン領の領都であるケストリス町、セップ郡第二の都市であるペニシア町、ケール郡の郡都であるセトニア町、ケール郡第二の都市であるコムリス町を繋ぐ大動脈をアレクの土魔術で整備する。
元々街道はあったが、その街道をできるだけ真っすぐにして拡張するのである。そういった街道や町と、重要な拠点を繋ぐのは領内の繁栄には欠かせないものだ。
東部のデジム町とその北側にある塩の産地のフリック村を繋ぎ、デジム町からケストリス町へ。
同じく東部にあるボールニクス家のケレミア町からケストリス町へ。
北部のゼンバー家のホルト町からは、ケストリス町とペニシア町へ。
北西部のペニシア町からケストリス町へ。といった感じでセップ郡の街道を整備する。
ペニシア町からケール郡中東部のセトニア町に。また、その間には防衛拠点であるデゼナン家のポロス町があるため経由する。
セトニア町から西部のコムリス町に街道を伸ばし、その間でアバジ家のテクラス町に分岐させる。
デーゼマン家の公共事業として、民間の業者に街道整備を任せることも考えたが、もうすぐ帝国との休戦協定の期間が終了するため、ケストリス町、ペニシア町、ボロス町、セトニア町、コムリス町を繋ぐ街道の整備は急がなければならない。
また、デーゼマン領の最西端にあるコムリス町からアレクサンダー城(旧ヘルネス砦跡地に建設が進んでいる城)までの街道も整備したいが、そこは他の貴族の領地や王家の直轄地なので、宰相府に上申書を提出しているところだ。
もし、コムリス町からアレクサンダー城を繋ぐ街道が整備されれば、帝国軍がアレクサンダー城に迫った時、素早く移動ができるメリットがある。
アレクはケストリス町とペニシア町を繋ぐ街道を四日で整備し、さらに西のボロス町へ進んでいる。この距離を普通の土魔術士が四日で整備するのは不可能である。しかしアレクであれば、それを可能にしたうえで地面を硬く固めることができる。
「アレクサンダー様。少し休憩をされてはいかがでしょうか?」
「そうだね、少し休もうか」
ラクリスは従者兼メイドだが、ラクリスの他に専属のメイドが二人いる。一人が手際よくテーブルや椅子をセットしていき、一人がお湯を沸かす。
お湯が沸くとラクリスがお茶を淹れる。アレクのお茶を淹れるのは、ラクリスの役目である。
「ライムたちも、それぞれ休憩してくれ」
「は、ありがとうございます。交代で休憩をとらせます」
街道整備はアレクが行っているので、ライムは百人の兵士を率いてアレクを警護している。
ライムは火魔術と槍術を所持しているため、魔槍士である。槍単体の腕前は家中で中位といったところだが、火魔術を併用する魔槍士なら中位上くらいの腕前である。しかし、ライムの才能は部隊の指揮能力だとフォレストは言っていた。
生真面目なライムは軍規に厳しいが、しっかりと部隊をまとめ上げ、アレクの警護を行っている。
他にメンディスとゴディスの兄弟もそれぞれ部隊を率いて、周辺を周回して遠巻きにアレクの警護を行っている。
メンディスもライム同様、部隊の指揮能力が高いと評されている。しかし、ゴディスは部隊の指揮能力は大したことなく、ゴディスの真骨頂はその類稀な戦闘力だ。怪我をする前のフォレストやフリオには敵わないにしても、層の厚いデーゼマン家の中にあっても上位に入る武の持ち主だ。
ラクリスが淹れた美味しいお茶を飲み休憩したアレクは、街道整備を再開する。
ペニシア町からボロス町へ向かうと、緩やかな丘陵地になっている。残る轍の先を見ると、丘の向こう側へ続いているのが分かる。
街道をいく商人や旅人たちは、少しの間だけ街道の脇にどいてもらう。そういった者たちの整理もライムの部隊の役目である。
「殿。街道上に人はいません」
ライムの言葉に頷いたアレクは、トレントの杖を掲げ土魔術を発動させる。
「街道」
道幅が広くなっていき、轍が平坦にならされていく。丘の上まで一キロメートル以上あるが、道は一気に整備されていく。
その光景を見ていた商人や旅人は、近くにいる兵士にあの魔術士は誰かと問う。そして、兵士からアレクだと聞いて感嘆の声をあげる。
噂に聞く英雄アレクサンダー・デーゼマンの土魔術を間近で見た者の中には、手を合わせて拝む者までいるのであった。
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