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第5話 警備任務3

「いやぁ、可愛い子だなぁ」

「可愛いというよりも綺麗な子じゃないか?」

「綺麗。綺麗」

「内の息子の嫁に来てほしいぐらいだ」

「あんたとこの息子、まだ生まれたばかりだろ」

「良いんだよ。そこは」

「それにしても、こんな子が内にいてくれたらなぁ。やる気が出るのになぁ」

「可能性があるとすればこの子が騎士隊長になった後に下に着くぐらいか」

「年下の美人騎士隊長様の元で働く。ありじゃないか?」

「ありだね」

「むしろ良くて困る」

「素晴らしい」

「まあ、可能性はなきにあらずだけども。無理だよね」

「警備任務が任されることはないだろうからな」

「王様か、王子の護衛が主な仕事になるだろうな」


「は、はは」

 七人の先輩騎士たちとの会話。

 思わず乾いた笑いが出てしまう。

 名前を忘れた先輩騎士たちが楽しそうにリヴァという話題で会話をする。アダン君には触れない。その辺りは何とも男らしい。

 そして、俺自身は何一つうれしくない。

 警備任務ってこんなので良いのだろうか。

「皆さんはずっとこの屋敷に住んでいるのですか?」

「警備任務は基本住み込み。たまに帰れるけども。いることが大きな意味になるからな」

「実際には、ここに七人も必要ないのだけども、厳重警戒の一環でさ。急に増やしてさ。上の奴らはバカなんじゃないかと思うよ」

「ああ、バカ。上の指導者は基本皆バカだね。ハイデン隊長とかなら全然良いんだけども。キリル隊長とか。良い人なんだけども、頭がちょっと弱いんだよね」

「剣で戦った方が強いくせして、無理して魔法使うからな。それで自爆して負けるから笑える」

「そうなんですか」

「任務は選べないのですか?」

 アダン君がそんなことを聞いた。

「まあ選べると言えば選べるさ。でも建前上だよな。実際は仕事なんか選べる立場じゃない騎士の方が多いから」

 その辺りは何とも日本らしいなんてふと思ってしまう。

「それにしても」

 先輩騎士の一人が言った。

「こんな綺麗な子が、最強の騎士を倒して、騎士隊長の座が確定してるなんて驚きだよな。どうして騎士見習いの時に力を見せようとしなかったんだ?」

 その質問に俺は素直な気持ちで答えた。

「注目を浴びたくなかったから?」

「ああ、なるほど。確かにそうだ」

「力を持てば、面倒事に巻き込まれるからな」

「その点。俺らは大丈夫だな。力がないから」

「本当にそれだよな」

 その会話は悲しくないのだろうか。

「でも、それは正しかったな。もしも騎士見習いの時点でそんなことをすれば、大変なことになるだろうな。隣国のセリアみたいにさ」

「…………隣国のセリア?」

 その名前に俺は興味を示す。

「タトス王国が誇る最強の騎士さ。少なくとも内の最強の騎士よりも強い。世界で五本の指に入る実力者だろうね。あの強さと美貌には敵ながら惚れ惚れするよ」

「そんな方がいたんですね」

 ちょっと面白そう。

 シモンさんよりも強い化け物か。

 どれほど強いのだろうか。

「リヴァちゃんなら、いい勝負出来そうだよな。シモンさんを中々圧倒していたみたいじゃないか」

「それだと、まるで。中々圧倒していた程度じゃ勝てないみたいな言い方ですね」

「そりゃあ」

「シモン隊長は騎士の中で最強なのであって。この国で最強の人間なわけじゃないからな」

「そうだったのですか!?」

 ちょっと驚き。

 最強の騎士の名でてっきりカウナ帝国最強の人間なのだとばかり思っていた。

「まあカウナ帝国で最強の人間は十中八九、賢者の中の誰かだろうな」

 先輩の一人がそう教えてくれる。

 賢者というとアリスの母親か。賢者の中ということは他にもいるのだろうから。例え最強じゃなくてもアリスの母親の偉大さが良く分かる。

 賢者にも興味を持ってしまいそうだ。

「もしかしなくても、戦ってみたいとか思ってる?」

 ふと先輩騎士からそんなことを言われる。

「何だかものすごく楽しそうな表情をしてた」

「良い笑顔だった」

「素晴らしい笑顔だった」

「惚れる笑顔だった」

「そうですか?」

 そんなに良い笑顔だったのだろうか。

 自分では分からない。

 そんな会話をしていると、ふとアダン君が何か違和感を感じ取ったのか。部屋に付けられた唯一の窓に走り寄った。

 窓の外を見る。

 そして、それとほぼ同時に。

 甲高い鐘の音が鳴り響く。


「何?」

 その音に先輩騎士たちが剣を構えて、それまでの緩い表情が一変して鋭くなる。

「敵襲だな」

「襲ってくることがあるのですか?」

「そりゃあ、まあ」

「そうだな」

 ほどなくして、部屋の外から悲鳴が聞こえてくる。

「雑兵たちがやられている。敵は一人。でも、相当の強さだな」

 アダン君が窓の外からその状況を実況してくれる。

「助けに行かなくて良いのですか?」

「俺たちの存在意義は雑兵を守ることじゃない。頭首を守ること。そして国宝を守ることだ」

「国宝から離れては守ることはできないからね」

 確かにそうだけども。

 ヨハン邸を襲った侵入者にしろ。隣国は強行突破をし過ぎだ。戦争に発展しかねないと思わないのだろうか。

 いや、まあ。隣国とは限らないけども。

「では、私一人で応戦に行くのは?」

「ダメだ。敵が一人とは限らない。この中で一番国宝を守れるのは君なのだから。むしろ君がいるべきだ」

「分かりました」

 うーむ。

 久々に戦えると思ったけども駄目みたいだ。

 騎士たちが出て手っ取り早く倒せば、被害を最小限に抑えることができる。被害よりも何よりも国宝を優先する姿勢はどうなのだろうか。いやむしろ正しいのだろうか。

 俺にはよく分からない。

「敵が屋敷に侵入しました」

「非番の奴らはまだ来ないだろうから、まずいな。外のマキシムと巡回してる五人じゃ全然足りないな」

 足りない?

 何故、そう言い切れるのだろうか。

 むしろ十分な数じゃないか。騎士一人一人の実力はバラバラだけども、騎士が五人いればヨハン邸を襲った侵入者一人なら倒せるはずだ。

 それ以上の実力者が一人で襲ってくるとは考えにくい。

「大丈夫、私が行ってきますー」

「ニーナさん。何時から?」

 部屋の中に音もなく現れたニーナさんに一同驚く。

「警報が鳴りましたのでー、急いで戻ってきましたー。私が応戦に行きますのでー、あなた方は引き続き警備の方、よろしくおねがいしますねー」

 そう言い残して、部屋の外へと飛び出して行くニーナさん。

 そのさいも一切の音はない。

 鎧からきしむであろう音がないのはどんな手品を使っているのだろうか。まるで忍者のような存在だ。フィオナさんを彷彿とさせるが、弓を使う彼女よりも剣を使うニーナさんの方がよっぽど忍者っぽい気がする。

「ははは、驚いただろ。彼女は特別な騎士だからね」

「特別な騎士?」

 何だろう。特別な騎士とは。

 初めて聞く単語だ。

「ニーナが行けば大丈夫だろう。お相手はニーナに惚れてるから」

「…………んんん?」

 何だろうさっきから。

 何を話しているのだろう。

 ちょっと理解が追い付かない。

「もしかしなくても、お相手を知っているのですか?」

「ああ、知っているよ。よく知っている人物だ」

「…………はい?」

「…………ああ、なるほど」

 隣でアダン君が納得する。

「どういうこと?」

「ニーナさんの言葉とか、先輩たちの言葉を思い出せば自ずと答えは出て来るよ」

「言葉?」

 言葉。そう言えば、ニーナさんは言っていたよな。何も起きなければ良いのですが、とかどうとか。

「つまり」

 そういうことか。

 そう理解した時、部屋の外から大きな爆音が鳴り響いた。



 一人の男の侵入。

 それへの理解にコンマ数秒。

 咄嗟的に先輩騎士七人が剣を抜いた。

 しかし。

 瞬く間にやられる先輩騎士たち。そしてその男の剣先はアダン君に向けられ。一瞬剣と剣が交差する。

「君は少し強そうだ」

「…………くっ」

 アダン君が苦しい表情を見せる。

 純粋な力で押し負けている。そして一瞬見せた隙を男は見逃さず。アダン君の剣を遠くへと弾き飛ばした。

 その隙を俺は攻撃をした。

 しかし、剣で受け止められる。

「へぇ」

 俺は感心したように、何度も何度も剣で攻撃をする。

 中々強い。少なくともアレックさんよりも強い気がする。でもシモンさんよりかは弱そうだ。

 男は俺の剣をはじき返すと、一度距離を取った。高くジャンプして格好良く距離を取ろうとして、そして天井に頭をぶつける。

 ゴツンと大きな音と火花が見えた気がした。

「痛い」

「でしょうね」

 結果的に距離を取れなかった男との距離を詰め、再び剣を振るおうとしたとき。男の手が光り輝いた。

 魔法。

 それも詠唱を唱えている。

 小さく小言で唱えられる詠唱の言葉。それが徐々に魔方陣を巨大化させ。

 放たれる風の魔法。

 それは俺の横を通り過ぎ、そのまま引き返し。

「ぐふぉ!」

 男に直撃する。

 男が壁へ押し付けられる。

 完全なる自爆。

「やるじゃないか」

 そして男は倒れた。

「…………」

 何だろう。

 皆がバカと表現したのが良く分かる。

「キリル隊長。大丈夫ですか? どうしてこんなことを?」

「いや、シモンさんを倒した子が来るもんだから、戦ってみたくて。月一の訓練をしてみようと思ってさ」

「そうですか」

 としか俺は言えなかった。

 侵入者などいなかった。

 これはただの訓練だったのだから。

キャラ紹介40

モブ ニーナ

年齢不詳。騎士の一人。実力的には相当なもので、騎士の中でも特別。

主な仕事は国宝の警備だが、最も得意とする仕事は暗殺や情報収集であり、どちらかというと暗躍する忍者みたいな存在である。そう言った存在がそれぞれの隊長に数人は着いており、彼女はキリル隊長の下にいる。

怖がられている、はこの特別な騎士であるが故に人を殺すのを一切のためらいなくするため。

怖がられないようにゆったりとした話し癖がついたが、それでもまだ怖がられている模様。

ちなみにキリル隊長からの好意には気づいているが、無視し続けている。


モブ

アントン、ブラート、エゴール、フロル、ヘルマン、コンドラト、ラスカー、マキシムの先輩騎士八人

この警備任務のためだけに生み出されたキャラ。個性はそれほど豊かではないため、今後出ないと思われる。

国宝のすぐ近くにいることが許されているのは騎士三十二人中、この八人含めた十二人だけである。実力的には騎士の中でもそこそこある方だったりする。少なくともヨハン邸を襲った侵入者たちよりかは上。これはニーナ同様。

それなのにキリル隊長によって瞬殺されたのは、本気で戦っていなかったから。

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