第17話 授与式の後で
「どうしてあんなことを言ったのっ!?」
授与式が終わった後、リファーナの宮殿の休憩室でアリスが大きな声をあげた。
今部屋にいるのは俺とアリス、ホン君、ロン君、そしてヨハンさん。そしてなぜかラリサとナタリーもいる。
「大丈夫。勝てば良いのだから」
「勝てるわけがないです。相手は最強の騎士ですよ?」
ロン君がそう言った。最強の騎士か。
「その最強の騎士と最高の騎士はどちらが強いの? 順位で言えば最高の騎士であるハイデンさんの方が高いけども」
「実力で言えばシモン殿の方が強いと言われています」
ヨハンさんが答えてくれた。
「リヴァさん。あの場は私に任せてくれれば、まだ何とかなったのかもしれないのに」
「そうだよ。ヨハンさんがいたんだから」
アリスがヨハンさんに便乗する。
確かに早計な判断だったかもしれない。
でも俺が断ることでアリス、そしてラリサとナタリーの騎士の称号がはく奪されるのを避けたかった。
俺だけならよかったのだけれども。
「仕方がないです。シモンさんが手加減してくれることを祈って」
してくれなかったら、ボッコボコに致しましょ。
「リヴァさん。あなたは何故そうも楽観的なんですか?」
「元々私は楽観的ですよ?」
日本にいた頃は楽観が俺の長所だった気がする。
「いや、違う。それは楽観じゃない。無謀というんだ」
と誰かが言った。
確かにそうとも言える。
あれ?
「アンタ、誰?」
知らない少年がホン君と隣に立っていた。
いつの間に。
「アダンだ」
思い出した。授与式の時に前に出た最優秀な騎士見習いの子だ。そして試験の時にホン君から教えてもらっていたことも。
こいつがアダンか。
「…………っ!」
ふとアリスの様子が可笑しいことに気づく。
指をこちらに向けて震えさせている。
「どうかしたの?」
「ううん。ただ、驚いただけ。リヴァちゃんから、アンタなんて言葉初めて聞いたから」
そう指摘されたものだから、俺は思わず口に手を当ててしまう。
よく見ればヨハンさんも驚いていた。
危ない。危ない。
悩みが解決したのと、今日の驚きで気が抜けていた。
これからは気を付けないと。みんなには汚い言葉を使わない自分を見せないと。ただでさえ怪しい人物なのだから。
「もしかして、それがリヴァちゃんの素? この前言ってたよね。人前のリヴァちゃんは作られた人格だって」
「さあ、どうかな?」
そう言って俺はとぼける。
「何時か絶対、リヴァちゃんの素を出してあげる」
そしてなぜかアリスはやる気になっていた。
「それよりも、一ついいかしら」
ラリサが手を挙げて聞く。
「どうしてロラン様の妻になるのが嫌なのですか?」
その質問に俺ははてと考え込む。
「ラリサ的にはロラン王子は格好良い方?」
「ええ。性格に多少の難はあるかもしれませんが、外見は優れていますし、能力面もそれ相応のものを持っています。それに血筋も王族と完璧ではありませんか?」
確かに、女の子が憧れる王子なわけだから。
断るのはむしろ可笑しいのだろうか?
いやでも、俺は心は男だからなぁ。
「ラリサは面食いだからね。ヨハン様も気を付けたほうが良いよ」
「ナタリー!」
「怖い怖い。逃げよう、と」
ナタリーは休憩室の外へと逃げて行った。その後をラリサが追いかける。
唖然とする一同。
と思ったら、ナタリーが戻って来た。ラリサははしたない真似をしたみたいに恥ずかしそうに顔を俯かせている。
というのも休憩室の外に人がいたいみたいだ。
「リヴァ。シモン様がやって来たよ。どうする? 通す?」
その言葉に驚きながらも、俺は頷くことにした。
シモンさんが訪ねてきたことにより、他の全員は休憩室を出ていった。
シモンさんが一対一の話し合いを申し込んできたからだ。
「初めましてだな。俺はシモンだ。よろしく」
そう言って握手を求めて来る。
「リヴァです」
「授与式の時に見たが、なるほど。ロラン王子が惚れるのも無理がない」
「ありがとうございます」
シモンさんを見た時の感想は、一言で言えば大男だ。
外見的な強さで言えばハイデンさんよりもはるかに強そうではある。そして外見だけでなく中身も伴っているのは最強の騎士の名から明白だ。
そんな人がどうして会いに来たのか、その目的が分からなかった。
「もしかしなくても、手加減してくれますか?」
「手加減?」
「できれば、騎士の決闘で負けてほしいのですが?」
「よっぽどロラン王子のことが嫌いなようだな」
「嫌いではなく、結婚が無理なだけです」
「どっちも同じだ。だが、まあ考えなくはない。そもそも俺が訪ねてきたのはその件だ」
シモンさんが俺に近づいたと思ったら見下ろしながら聞いてくる。
「取引をしよう。騎士の決闘は負けよう。だから、一つ俺の言うことは聞かないか?」
「言うこと?」
「俺と付き合うと約束するならば、負けてやろう」
お前もそっちか!
ダン君、アレットさん、ロラン王子、そしてシモンさん。どうしてこうも男運がないのだろうか。いや別に男運はいらないのだけれども。
でもせめて少しぐらい誠実な人が来ても良いだろう?
アラン君みたいな。
「…………」
「なんだその顔は?」
シモンさんが俺の顔が不愉快だったのか、そうドスの聞いた声を出す。
こんなことが続けば、こんな顔にもなりますよ。どんな顔かは見れないのだけどね。
「いえ、まあ。何でしょう。お断りします。少なくとも、あなたよりもロラン王子の方が良いから」
見た目だけで言えば。
「おいおい。別に俺は妻になれと言ったわけじゃない」
「どちらにしても、お断りします」
反吐が出るぜ。
「それに、私は本気のあなたと戦ってみたい気持ちもありますから。出来ることなら面倒事にはかかわりたくないですが。まあ今回は諦めましょう。最強の騎士の名が次は私が貰えると思うと少しだけ心躍りますね」
「言うじゃないか」
シモンさんがそう怒りを見せた。
俺は諦めた。
勝っても、負けても。
どちらにしても俺の人生に大きく響く以上、俺は勝ちを選ぶ。
例え、これによって…………。
キャラ紹介36
モブ ハイデン・アルテミエフ
第一位の騎士隊長。最高の騎士の名を持つおっさん。
見た目はただのおっさんながら、実力は化け物クラス。
多分何時か主人公と戦うかもしれない。
モブ シモン
第二位の騎士隊長。最強の騎士の名を持つ少し若いおっさん。
本来最強の騎士の名は一位の騎士隊長が持つのだが、実力がシモンの方が高いため、シモンが持っている。
実力はハイデン以上とされているが、正式な戦いはしたことがなかったり。
次の話で主人公と戦う。




