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第16話 授与式の最中で

「あの人はハイデン・アルテミエフ。最高の騎士と呼ばれているね」

 後日、アリスからそう教えてもらった。

 称号の授与式、当日。会場は沢山の人で溢れかえっており、ちらほらと騎士の姿が見える。その多くは会場の中を等間隔に立ち並び、玉座の隣には立たない。

 ただ一人だけ。玉座の隣に許されている騎士がいる。

「最高の騎士?」

「第一位にして、あの人よりもすごい騎士はいないから。すごい人だよ」

 昨日、騎士の決闘を止めた男がどれほどすごい男だったのか。その時は思いもしなかったけども、あの速さを見れば納得だ。

 ただ一人。玉座の隣で王が来るのを待つ存在。

 最高の騎士が王をお守りするのは至極当然だし、それが王の隣に立つのも理解できる。

「アリスが男の人を褒めるなんて初めてだね」

「私もあの人は流石に認めるよ。は! まさかリヴァちゃん、あの人のことが好きに」

「なりません。どんだけ私は惚れやすいのよ」

「そうだよね。良かった、良かった。でも昨日の戦いの後、ずっとハイデンさんのこと見続けていたから」

「そうだった?」

 確かにそうだったかもしれない。

 でもそれはあくまで驚きであって、好意ではない。

 一見すれば優しそうなおっさんだし。見た目で言えばあまりよろしくはない。でも一位ということはこの国で最強ということになる。どれだけ強いのだろうか。

 何時か、戦ってみたいものだ。

「でも良かった。不問になって」

「うん」

 真剣を使用しての騎士の決闘は問題行為だったが、ハイデンさんはこのことを問題にせず許してくれた。

 そして無事授与式を迎えることができた。

 授与式は今は王を待つ時間であり、メインとなる騎士見習いたちは会場の入り口で待つ形になっている。

 初めに女子から入るらしく、入口の一番近くだ。

「そろそろ始まるみたい」

 アリスが呟くと同時に甲高い音楽が鳴り響いた。


 一人ずつ、騎士見習いは入場を始める。

 周りには大勢の観客。騎士たちが見守る中、指定の位置までゆっくりと歩く。ヴァレンティナさんの教え通りに。

 たまに観客の声が聞こえる。

「まあ、可愛い子たち」

「あの子だけ異彩を放っていますわね」

「誰が今年のトップなのでしょう」

 注目されていて、少し恥ずかしい。

「リヴァさーん」

 そして一人。ダリアさんが観客の中に混じってこちらに手を振っていた。アルベール一家がいるみたいだ。

 ということは観客のほとんどは貴族なのだろうか。

 とにかく、知り合いに見られてこんなにも恥ずかしいとは。顔が沸騰しそうだ。

 指定の位置に到着すると、一度深呼吸。

 指定の位置にはアリス、俺、ナタリー、ラリサ、そして男子の順に並ぶ。場所は玉座の前の特等席であり、ハイデンさんの顔が良く見える。

 そして、再び甲高い音楽が鳴り響いた。

 玉座の数は三つ。

 壇上の袖からゆっくりと三人の王が一人の騎士の付き添いの下、姿を現した。

 王と言っても同い年ぐらいの少年が一人、少女が一人。そして少し歳の離れた青年が一人。

 それぞれの名前は聞いている。

 第七王子、ロラン・ヴィリアーズ。

 第八王女、アデリーナ・ヴィリアーズ。

 第三王子、ヴァレリー・ヴィリアーズ。

 中央にヴァレリー王、その左右にロラン王、アデリーナ王女が順に座る。そして付き添いの騎士がハイデンさんの隣に立った。

 姿で分かる。付き添いの騎士は騎士隊長だと。

 王が座った瞬間、全員が膝をついた。

 そして隣に立つハイデンさんが一歩前に出た。

「初めに。騎士見習いの諸君。合格おめでとう。君たちはこれから騎士となり、国のために戦わなくてはいけない。君たちには国を守る使命があり、そして国を守る力がある。何時か君たちの中から隊長になれる素質を持つ者が現れるのを期待している。以上」

 簡単なハイデンさんの挨拶。

 それを合図に一人の騎士見習いが立ち上がった。

「では称号の授与を開始する。代表であるアダン。前へ」

 その騎士見習いの少年はゆっくりと壇上へと向かう。

 アダン。

 どこかで聞いた名前だけども、どこだったろうか。思い出せない。

 アダンはヴァレリー王から称号の証となる胸飾りを頂いた後、ゆっくりと頭を下げ、そのまま元いた位置へと戻る。

 そうこれで終わり。

 のはずだった。

「では」

「ハイデン、待て」

 その声はロラン王のものだった。

「どうした、ロラン?」

「ヴァレリー兄さん。少し良いか?」

 ロラン王は立ち上がり、壇上を降りる。そしてゆっくりと俺の方へと向かってきた。

 そう俺の方。

 どうして?

「ふむ。美しい。そこのお前」

 そんなことを言って、俺へ指を向けて来る。

「私ですか?」

「そうだ。気に入った。お前を妻に選ぼう」

 ロラン王がそんなことを言った。


「…………?」


 急なことに頭が追い付かない。

 どうしてプロポーズされたんだ?

「返事は?」

 返事の催促を受ける。

 とりあえず分かっていることはロラン王からプロポーズされたことだ。付き合ってほしいじゃない。妻に選ぼうとはっきりと言った。

 ここで俺の返事は決まっている。

「お断りします」

 例え相手が王であっても関係ない。嫌なものは嫌だ。

 反吐が出る。

「その強気な姿勢。ますます好きになった」

 でも、逆効果だった。

「ロラン! 何をしている!」

 壇上でヴァレリー王が立ち上がり、ロラン王に対して叱咤する。

 それを意に介さず、ロラン王は俺の手を取った。

「どうだ? 悪い話ではあるまい。騎士から王の妻へとなれるのだから。王族の生活には憧れているだろう?」

「いえ、別に」

「頑固として、断るか」

 ロラン王は肩をすくめ、俺の手を離す。

「ロラン王。これは何事ですか?」

 遠くからゆっくりとヨハンさんがこちらへ歩み寄って来た。ヨハンさんを見るや否やロラン王はふんと鼻息を立てて。

「なんだ。ヨハン。来ていたのか」

「ええ。私の騎士見習いから四人も合格者が出ましたからね。ちなみにリヴァさんは私が見つけた人です」

「見つけた? つまり国民ではないのか? まったくお前のわがままには呆れるな。でも今回は良い行いだと褒美をやろう」

「結構です」

「それよりも、リヴァだったか?」

 ロラン王が俺の方を再び見て。

「何故断る? まさか、授与式の最中だからとは言うまい? それとも王族が嫌いか?」

「私の夫は私が決めます」

 まあ、一生結婚しないけどね。

 その言葉にロランは呆れたように、俺のすぐ耳元で。

「では、こうしよう。騎士の決闘。これを問題にしよう」

 ロラン王はそんな脅迫をしてきた。

「脅迫ですか?」

「いいや、違う。法に基づいて罰則を与えるだけだ」

 まずい。

 仮に断り、アリスとラリサの騎士の決闘が問題になれば、それを止めなかった俺とナタリー含め四人の騎士の称号のはく奪も考えられる。

 ここはどうするべきだ。

 えっと。

 どうにかする手。

 そうだ!

 それにハイデンさんとも戦える可能性がある良い手がある。

「では、こうしましょう。ロラン王。私は騎士です。騎士の決闘で決めましょう?」

「ほう?」

 その言葉にロラン王が笑った。

「だが、俺は騎士じゃない。ならば代わりを用意しなくてはいけないな」

「ええ、どうぞ」

「では」

 ロラン王が壇上の方を見る。

 そのままハイデンさんの方に視線をやり過ごして、その隣の騎士に目を向けた。

「ヴァレリー兄さん。数日後、闘技場を借りるよ。そしてシモン。出番だ」

「ロラン! 何を勝手に」

「良いな、シモン!」

「分かりました」

 シモンと呼ばれたもう一人の騎士が返事をした。

「シモンを知らないわけじゃあるまい?」

「残念ながら」

「知らないのか。ならば、特別に教えてやろう」

 ロラン王はこう続けた。


「あいつは第二位の騎士隊長にして、最強の騎士だ」

キャラ紹介35

モブ ナタリー

16歳の少女。

良くしゃべる子で、ラリサの幼馴染でもある。

言動は騎士になる身としてはあまりふさわしくなく、行動もどこか子供っぽい。ただ優しさという点で言えば人一倍で、嫌われ友達のいなかったラリサと友達になろうとした唯一の子。

とある作品の影響を受けて生まれたキャラ。

個人的に一番好きなキャラ。

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