題15話 騎士の決闘
何が起きたのか、簡単にまとめると。
アリスとラリサは仲が悪い。
そんなラリサは俺に友人関係を要求してきて、それがアリスには気に入らなくて。だからアリスが断って、アリスとラリサは騎士の決闘をすることになった。
騎士の決闘とは平たく言えば一対一の果たし合いで、殺し合う。一つの問題、その最後の解決策として存在する。ただ今は殺し合わない決闘も存在する。その時は二人にもう一人、審判役が必要となる。
場所はホテルの中庭で二人はそれぞれ決闘の準備を始めた。
時刻は夕暮れ時。
今回アリスとラリサがするのはこの殺し合わない決闘のはずだ。
でも。
「アリス、どうして真剣を使うの?」
「だって決闘だから」
どういうわけかアリスは真剣を持ち出していた。模擬剣ではなく、本当の刃がついた剣だ。
少し離れた所でラリサが同じように準備をしていて、アリス同じく真剣を取り出していた。
「ラリサ、あんた模擬剣を使わないの? ものすごいやる気ね。たまにあんたのそういう容赦がないところを見ると真似たくなるよ。本当にたまにだけどね」
「ナタリー五月蠅い」
「まあ、あたしはアリス側だから、あんたにストレスをあげようと思ってね。いつだったかな。前にもこんなことあったよね。騎士見習いのくせして騎士の決闘を申し込んだ時は笑ったね。今も心の中は笑ってるけども」
「ナタリー!」
「怖い怖い。あっちに逃げよう」
ナタリーがこちらの方に逃げてきた。
先ほどからのナタリーとラリサの会話に思わず俺は聞いてしまう。
「ナタリーはどっちの味方なの?」
「あたしは面白い方の敵だよ?」
「つまりラリサの方が面白いということ?」
「まあ、そうだね。あの子、からかうと面白いんだ。毎回反応を見せてくれるから」
「良い性格してるね。君」
「ありがと。いつも言われる」
そう言って、ナタリーがアリスの方を見て。
「アリス。あの子あんな感じだけども、殺さないように手加減はしてね。あの子弱いからそれぐらいできるでしょ? それに正式な騎士の決闘じゃないから殺したら犯罪者よ? 若くして牢獄にいれられたくないでしょ?」
そんなナタリーにアリスが呆れた表情をする。
「本当にナタリーは言葉が減らないよね」
「それがあたしの唯一の良いところだからね。もしかして、あたしのこういうところ嫌い?」
「そこはあまり好きじゃないけども、そこ含めて友達の中では好きな方だよ」
「え、本当に? 告白はしないでよ? あたしにそっちの趣味はないからね」
「大丈夫。今好きな子はリヴァちゃんだから。ね?」
アリスが俺の方を見て来る。
そんな目を向けられても困る。
「つまり今はリヴァが彼女なのね。え? あなたもそっちの趣味があったの?」
「別に付き合ってはないよ。断ったから」
「なんだ」
確か。
そう言うと、アリスが悲しそうな表情をする。
「何雑談していますの!」
遠くでラリサが怒鳴って来た。
「さあ、行きますわよ」
準備が終わり、ラリサが剣を構える。鉄の鎧はつけない。簡単には切れない上部な布の鎧。
止めるべきなのだろうが、止めた所で二人の仲はいがみ合い続けるだけだ。だったらいっそのこと戦わせた方が良い結果になると俺は考えた。
もしも怪我しそうになったら、その時は介入しよう。
同じ騎士隊長の下に着くのかもしれないのだから、仲良くしていきたい。
「やっ!」
ラリサが剣を構えてもいないアリスに斬りかかる。
それをアリスはすぐさま反応し避ける。そして剣で数度ラリサに斬りかかった。
普段のアリスの剣捌きよりもはるかに遅く。それでいて受けやすいように。
その姿を見て、安心する。
アリスはラリサを傷つけないようにしている。
なんだ、そこまで嫌っているわけじゃないのか。もう片方はものすごい執着心があるみたいだけども。
「この!」
何度も何度も剣がまじりあう。
この光景に少しずつ周りの人が気づき始めた。
それまで中庭で呑気に寝ていたおじさんから、仲良さそうなカップルから。人が集まってくる。
少し危ない。近づくような真似をする人はいないが、完全に安全ではない。
それに騎士に気づかれる可能性も出てきた。もしも騎士に気づかれて、大きな問題にされたらあまり良い結果にはならないかもしれない。
「ラリサ! 早く負けなさい! みっともない姿は少しの人にしか見られたくないでしょ!」
ナタリーが隣でそんなヤジを飛ばす。
「ナタリー五月蠅い!」
ラリサはナタリーへの怒りも込めて、強く強く剣を振る。
それにアリスがどこか苦戦の表情を見せた。
「いけ!」
そして。
アリスの剣が弾き飛ばされた。
「…………しまった」
「これで終わりですわね」
そしてラリサの剣が振り下ろされる。
まずい!
そう思った俺が前に出るのよりも早く。
「やめなさい」
鎧を着たその男はラリサの剣を遥か彼方へ弾き飛ばした。
そう俺よりも早く、どこからともなくその男は現れた。
キャラ紹介34
モブ ラリサ
16歳のお嬢様。
実家は金があるが、称号がないため貴族になれず、それに大きなコンプレックスを抱いている。そのためミス・ラリサと名乗り、貴族になるために、最も簡単な称号である貴族を目指すことにして、二年半の年月をかけついになった。
ナタリーとは幼馴染で、酷い言葉を浴びせることもあるが、ナタリーのことは友人として大切にはしている。




