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第13話 授与式を行う宮殿で

 次の日、早朝。

 王都からお迎えが来た。

 俺含む四人は他の騎士見習いとお別れをした後、馬車に乗り込む。

 王都まではそれほど離れていないらしく、昼前には着くとアレットさんは教えてくれた。

 馬車の中は俺と、その隣にアリス、前にロン君、その隣にホン君。そしてホン君とホン君を挟むように二人の騎士が乗っている。十人は乗れる大きな馬車である。

 この時まで、アリスとは挨拶ぐらいしか言葉を交わしていない。

「あちらに着いた後、どうするのですか?」

 俺は騎士の一人、ユーリーさんに聞いた。

「今日の昼頃にはすべての地域で試験に合格した騎士見習いが王都に集まる予定だ。そしてまず初めに明日の本番に向けて練習を数度行う」

「練習?」

「王から称号を頂くのだから、礼儀作法知らずは許されないだろう?」

 まあそうだけども。

 練習とは、面倒そうだ。

 ふとアリスと目が合う。そしてすぐに目が逸らされる。アリスは馬車の外を必死になって見続ける。

 リナが言っていたこと。俺がアリスのことが嫌いで嘘をついたと考えて、それで心に戸惑いがあるのか。それとも別の考えに至ったのか。

 分からない。

 でも元気のないアリスは見ていて悲しくなる。

 その原因は俺にあるのだけども。

「…………どうかしたのですか?」

 ロン君が耳打ちで聞いてきた。

「アリスさんと仲が良くないように感じます」

「どうもしないよ?」

「本当ですか?」

「うん」

 ロン君はそれ以上聞いてはこなかった。


 なんとも静かな馬車の旅だった。

 騎士二人とホン君とロン君にとって居心地が悪くこの上ない時間だったかもしれない。

 その間、俺はずっとアリスのことを考えていた。

 だからか時間はあっという間に過ぎ去り、気づいた時には馬車が王都に到着していた。

 馬車の窓から王都を見る。

 あわただしい人の数。綺麗な建物が立ち並び、中央には巨大で真っ白な城。街ではなく都市と呼ぶべきだろう。

 日本の東京とは違った良さがある。

 そんな都市の中、豪華に飾られた建物の前に馬車が止まる。

 順に降り、俺たちはその建物に圧倒されていた。

「ここで授与式を?」

「ああ」

「城でするものだとばかり」

「城は王が住む建物だ。そこに不特定多数の人間を入れるのは警備上よろしくない。城の中をくまなく点検するのよりも、この建物を点検する方が楽だからな」

「ここに王を呼ぶのは大丈夫なのですか? 警備上」

「ああ、騎士隊長殿が四人出席する」

 なるほど。

 確かにそれなら安全だな。

 騎士隊長が前回みたいに裏切り者でなければだけども。

 ユーリーさんに連れられて、建物の中を案内される。

 建物の名前はリファーナの宮殿。美術や講演会を開くための多目的ホールがその大部分を占めている。残りは絵画が飾られた廊下。待機室や休憩室。トイレや風呂。兵士が寝泊りする小さな部屋だ。

 そういろいろな部屋はあるのだが、多目的ホールがあまりにも広い。この前舞踏会が開かれたヨハン邸の広い部屋よりもはるかに広い。

 前方には壇上には玉座が幾つか置かれ、明かに入ってはいけない空間が作られていた。

「明後日には別の授与式があってな。今その練習が行われている。それが終わり次第始めるつもりだ」

 ユーリーさんの言葉通り。

 建物には大勢の人が行きかっている。

 慌ただしく。装飾品や機材を運んだりしている。そして多目的ホールではその練習、入退場が行われている。

「…………一度で覚えられるかな」

 やはり王の前だからか厳しい練習みたいで。

 何度も何度も同じ工程をさせられている。

 遠くに騎士に連れられた15歳ぐらいの少年少女のグループもいた。おそらく俺たちと同じ合格した騎士見習いの子たちだろう。そのグループもこの練習が終わるのを待っているみたいだ。

 指を向けて、透き通るような声で指導する女性が一人。

 その女性がこちらの方に気づき、指導を中断してこちらの方へ歩み寄って来た。

 ユーリーさんへ笑顔を向けた後、俺たちににこやかな笑顔を向けた。

「こんにちは。初めまして。この子たちが新しい騎士の子?」

「ああ。指導をよろしく頼むよ。ヴァレ」

 どうもユーリーさんと知り合いみたいだ。

「またそんな。あなたたちはこの名前で呼ばないでね? 私の本当の名前はもっときれいな名前なの。ヴァレンティナよ。よろしくね」

 そう言って一人ずつ握手を求めて来る。

 女性の名前はヴァレンティナさんね。覚えた。綺麗な人だ。歳は30代後半だろうけども。大人のできる女性みたいな印象だ。

 ロン君、ホン君、アリス、そして俺の順に握手をしていき。

「お前たち。この方はヴァレンティナさん。愛称を込めてヴァレとみんなは呼ぶな。騎士の技術以外のマナーとかの指導を務めている指導員だ。今後お世話になる」

「よろしくお願いします」

「男の子は格好良くて、女の子は可愛い。今年はヨハンさんの街からは四人も出たのね。そのうち二人は女の子。他の男の子たちはこんな可愛い子なら大喜びでしょうね。お名前は?」

 何ともよく喋る方だ。

 羨ましいぐらいに。

「私はリヴァです」

「リヴァちゃんね。綺麗な子。青い髪に青い瞳。お人形さんみたい。ううん。お人形さんよりもよっぽど綺麗ね。どこかのご令嬢かしら。あなたは?」

 次にアリスの方を見て聞く。

 そしてそのアリスの赤い髪を見て。

「あら、その真っ赤な髪。くりくりした目。どこかで見た子かと思ったら、アリスちゃんね。アリサさんの所の」

「はい」

「どうしたの、元気ないわね?」

「色々とあって」

「なら私がアリスちゃんを元気づけてあげる。そんなあなたに朗報よ」

「朗報?」

「アリサさん、もうそろそろしたらこっちに戻ってくるって知らせが来てたわよ」

「え?」

 その言葉に俺と、そしてアリスが大きく驚いた。

 驚いた表情が見れてうれしいのか、ヴァレンティナさんの声が弾む。

「何でも、船が難破したらしいわね。命からがら大陸まで戻って来たみたい。流石は大賢者ね。本当に魔法は便利。でも他の乗客は守れなかったみたい。それに王様からの命も達成できなくて少し問題があるみたいだけどね」

「それ本当ですか?」

「ええ、もちろん本当よ。今は港町で休養しているわ」

「詳しく後で教えてください!」

 アリスが大声をあげた。

 ヴァレンティナさんの言葉で状況が理解できる。

 俺は殺したと思っていたが、実際は殺していなかったみたいだ。

 あまりにも小さな人間を食べたと実感があったわけではなかった。でもまさかあの状況から逃げたとは思わなかった。

 ふと疑問が浮かぶ。

 あの魔法の記憶は一体誰のだったのだろうか。

 俺が食べてしまったと思った大きな理由でもある。

 でも今は関係ない。

 少なくとも、アリスとの悩みが解決したわけだから。


 アリスが俺の方を見て、今日初めて笑顔を作った。

キャラ紹介32

モブ ユーリー

34歳男性。騎士。もう出さない。

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