第5話 試験初日は筆記試験
騎士試験の日がやってきた。
アリスとは何気ない日常を過ごせたと思う。顔にはそこまで出していなかったはずだ。
試験の日程は筆記試験が初日に、実技試験が二日目、三日目にある。
筆記試験は午前の時間帯を使い、教室で行われる。
時間にして午前すべてを使う筆記試験である。授業で行われる小テストとは訳が違う。ただ日本にいた頃、センター試験や模擬試験を受けてきた俺からすると短い試験だ。
あの魔法使いから得た知識を使い、朝早くに俺は自身に魔法をかけた。
記憶を忘れさせない魔法。
知識を身に着けるなんて調子のいい魔法じゃない。一時的に見た情報を忘れないようにする魔法である。これは脳に大きな負荷をかける。今から見るすべての情報、教科書を見ればそのすべての文字を覚え、どのページがどんなふうに傷んでいるかまで、ありとあらゆる情報が忘れられないからだ。
覚えたいものだけが覚えられるわけではない。
それにこの魔法を使っている間に違う場所を見ればその情報も頭に残ることになる。
「アリスはこの魔法を使って大丈夫なのか?」
初めて使ったが、酷くしんどい。
頭が痛い。
これに慣れているのか、あるいは賢者の娘という血筋が大きいのか。
それとも俺の仕方が間違っているのか。
そんな中試験に挑んだ。
試験の内容は世界情勢から、魔法の構造。語学など。
幅広い分野について、難しい内容の試験だったが、数学などの応用を利かす問題は少なく極端な話、丸暗記でどうにかなる試験である。
無事、ほとんどの問題を解くことができた。
試験の結果は試験終わり昼休みを挟みすぐに返却された。というのも筆記試験に落ちた子は次には進めないからだ。
順番に男子たちがルドルフさんから解答用紙を受け取りに行く。
緊張した男子もいれば、そうでない男子もいる。
そしてみんな、解答用紙を受け取ると喜んだような表情をした。なんてわかりやすいのだろうか。
「緊張するね」
すると教室で隣の席に座るアリスがそんなことを言った。
「アリスは大丈夫?」
「私は自身満々。それよりもリヴァちゃんはどうだった? 勉強苦手そうだったから、それだけが心配」
「ああ、うん。大丈夫。リナから良いことを教えてもらったから」
「良いこと?」
そこでふと俺は気づく。
リナはアリスにあのことを話していないみたいだ。
むしろそっちの方がうれしいのだけれども。
「良いことって?」
「秘密」
「リヴァちゃん酷い」
なんて会話をしていると、自分の番が来た。
恐る恐る取りに行くと、ルドルフさんは険しい表情で試験の解答用紙を返してくれる。
ああ、もしかして落ちたのか。
と思ったら200点満点中162点。合格ラインである八割をぎりぎり突破していた。
「よくやったな」
「良かった。ありがとうございます」
どうしてルドルフさんは険しい表情なのだろうか。
喜んでくれても良いのに。
どうもルドルフさんは表情で合格か否かを判断させないために常に険しい表情をするみたいだ。
なんて紛らわしい。
解答用紙の返却が終わる。
俺以外のアリス、リナ、アラン君は皆無事に突破しており、他の男子たちも落ちた子はいないみたいだ。
皆優秀だ。この日のために頑張って来たのだから当たり前だけども。
「良かった。本当に良かった。リヴァちゃんが無事合格して」
女子寮へ向かう道でアリスがそう俺よりも喜んだ。
「おめでとう、リヴァちゃん」
リナからもそう言われて俺は思わず笑う。
「ありがと」
他の子たちはみんな余裕の表情だった。
それはアリスもリナも、アラン君も。
リナが俺の服の裾を引っ張る。足を止めるとリナが俺の耳元に口を近づけて。
「やっぱり、魔法、使ったの?」
「うん」
アリスがそんな俺とリナに対して不振に思い。
「何? どうしたの?」
「内緒話」
「私は!?」
「アリスには教えられない内容なの」
「何それ。リヴァちゃん、リナちゃんと妙に仲良くなってる。はっ! もしかしてリナちゃんもリヴァちゃんを狙い始めたの!?」
「ふふふ」
「何その不適な笑い!」
リナはアリスに対して意地悪をしていた。
まるでそうだと言わんばかりの態度だけども、俺には分かる。リナにそんな気はない。
そうただ。
こんな何時もの光景が好きな俺のためにしてくれたのかもしれない。
俺もつられて笑ってしまう。
「良かった。笑ってくれて。無事解決した?」
「ううん。まだ。でも少しだけ前よりかは気持ちが楽になった」
「そう。良かった」
「何の話をしてるの?」
アリスが俺とリナの会話に入ってこれず、首を傾げている。
「また内緒話?」
「うん。私も知らない、内緒話。アリスちゃん、相変わらず、鈍感だね」
「どういうこと?」
アリスはただ不思議そうにしていた。
キャラ紹介27
モブ ハインリヒ
31歳男性。隣国の風の一人。騎士みたいなもの。
ミケルとフランツ、ジャックとは腐れ縁。
実力はもちろん五分ではなく、四天王最強と主張したが、四人の中で少しだけ強かったりする。
実は風はそこまで好きではない。
多分何時か敵として出るかもしれない。




