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第4話 アラン君と戦って

「そうなの?」

「うん」

 リナはコクッと小さく頷く。

「どこの魔法学の本にも載っていないのにどうしてアリスは知っているの?」

「アリスちゃんのお母さん、国の中でも数本の指に入る、賢者だから」

「何それ初耳」

「だから、アリスちゃんは、魔法が得意」

 確かに。アリスはひときわ、騎士見習いの中でも魔法が得意だった。魔力が多いわけでなく魔力を集める術が得意な様子だった。

 そうなのか。アリスの母親がそんなすごい賢者とは。

 そう言えば、俺が食べた魔法使いは女性だったよな。

 あれ?

 ふと思う。

 あの魔法使いの魔法の知識は凄まじいものだった。それこそ、その魔法の知識を得た俺に使えない魔法がないほどに。

 あれこそ数本の指に入る賢者と呼ぶべきだろう。


 俺が食べたあの魔法使いはアリスの母親だったのではなかろうか。


 いや、そんな偶然はない。

 でももしもそうなら、俺はどうすれば良いのだろうか?

 どうして俺はアリスの母親を殺したかもしれないことを深く考えているのに、あんなにも簡単に人を殺せたのだろうか?

「どうしたの?」

 リナが心配そうに聞いてくる。

「ううん。ただちょっと。考え事をしてただけ。大丈夫」

「そう」

 リナは納得していないみたいだ。

 大丈夫になんか到底見えない表情だったのかもしれない。そこまで神経を使うことはできなかった。

 俺は空気を変えようとリナの質問に答えることにする。

「それで、どうして私がこの魔法を知っているかだけども」

「うん」

「気づいたら覚えてた」

「気づいたら?」

 リナが可愛らしく首を傾げる。

「うん。気づいたら。どこで教えてもらったかは忘れちゃった」

 そう答えるとリナはそうなんだと頷いた。

 こっちは納得した様子である。

「気づいたら覚えていた、とかあるよね。何でも、いつどこで知ったかなんか、覚えないものだよね。リヴァちゃん、すごく強いから。全然不思議じゃない」

「うん」

 俺は頑張って作り笑顔を作った。

「じゃあ、そろそろ、勉強の邪魔だと思うから」

「ありがとね」

「ううん」

 リナは最後に俺の耳元に顔を近づけて。

「悩みがあるなら、相談しても、良いんだよ?」

 そう言い残して、リナは部屋を出て行った。

 やっぱりリナは優しい子だなと俺はもう一度思った。



 少しだけ一人で考えてみる。

 あの魔法使いは船でどこかに行くところだった。

 それが長い航海ならば、もしかしたらまだ訃報が国に届いていない可能性もある。あるいは行方不明扱いされ、不明となっているか。

 この国の魔法使いじゃない可能性もあるにはある。

 考えれば考えるほど、俺が殺した魔法使いがアリスの母親でない可能性の方が高くなる。

 しかし、考えれば考えるほど殺した魔法使いの姿が今になって思い出されていく。その姿をアリスに当てはめるとどこか似ているのである。顔たちや髪色が。


 騎士試験の前に聞きたくないことだった。

 聞いたとしても、騎士試験に落ちるつもりはないけども、この問題は解決しないといけない。でもどうやって。

 まずアリスの母親が生存しているかどうかを知らなくてはいけない。

 でもアリスに聞くのは難しい。

 というよりも冷静を装える自信がない。

「どうすれば良いの」

 食堂で一人、昼食を食べ終えた後。そう呟きながら俺は女子寮までの道を歩く。ほとんどの男子は昼食を食べることなく訓練に励んでいる。

 そんな光景を見ながら横を通り過ぎようとすると、その中の一人。アラン君が俺に気づいてチョコチョコと近づいてくる。

「リヴァさん!」

「アラン君。どうしたの?」

「これからまた勉強ですか?」

「ううん。リナから良いこと教えてもらったから特に勉強はしないかな」

「でしたら!」

 アラン君が目を輝かせて。

「一緒に訓練しませんか? 僕なんかリヴァさんのお相手として不足ですが」

「ううん。良いよ。やろっか」

 アラン君の申し込みを受けた俺は中央広場に出た。

 アラン君の予備の模擬剣を借りて、俺はアラン君と向かい合う。すると他の男子たちが観客として周りに集まってくる。

 アラン君は両手で剣を持ち、鋭い目になる。相当やる気なみたいだ。そんなアラン君は俺に向かって走ってくる。

 アラン君の剣を受け流し、受け流し。

 アレックさんがやっていた訓練方法を真似て。

「くっ!」

 アラン君が必死になって剣を振り回す。その剣をさばきながら俺は柄にもなくアラン君に教える。

「アラン君。もっと相手を見て。もっと相手の隙を探って。むやみに振り回しても当てることなんか出来っこない」

 多分初めて。師匠としてアラン君のためになることが出来ている気がする。

「このっ!」

 アラン君の剣が少しだけ強くなる。

 ふと俺は笑みが出た。

 そうだ。

 騎士試験に合格する者。そうでない者が出てくる。合格すれば、皆と離れ離れになるかもしれない。

 この光景は最後なのかもしれない。

 楽しい毎日だった。

 初めての出会いが何度もあった。

 騎士になっても、出会えなくなるわけではないのに、悲しい感情が生まれてくる。学校の卒業と似た感情。


 そして俺がしたことはこんな楽しい光景を否定しかねないもの。


「リヴァさん。どうしたのですか?」

 思わず涙が出てきた。

 それがただ事でないと悟ったアラン君が聞いてくる。

「ううん。気持ちに決心がついただけ」

 もしもアリスの母親を殺したのが俺だったなら。

 正直に話そう。

 そしてそれ相応の罰を受けよう。

 それが俺がするべき行動だ。


 でもアリスのために。いや俺のために。

 アリスに母親について聞くのは騎士試験が終わった後にしようとも考えた。

キャラ紹介26

モブ ジャック

34歳男性。隣国の土の一人。騎士みたいなもの。

ミケルとフランツとは腐れ縁。実力はもちろん五分。

堅い男に見えて実はノリがいいタイプ。ちなみに妻子持ち。娘を溺愛する親ばかな一面もある。

多分何時か敵として出るかもしれない。

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