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第12話 見世物

 舞踏会は、ヨハン邸で行われるダンスパーティーのことである。

 一般人も参加可能であるが、貴族も多く参加するため、安全面の理由により一般人と貴族が踊る場は別れているらしい。俺やアラン君は一般人側になる。

 そんな舞踏会は踊るだけではない。様々な料理、ワインなどの酒や紅茶などの飲み物まで。これらが無償で飲食できるため、毎年沢山の人が来るらしい。


 男子たちの訓練を終え、俺はリナとアリスの元へ行く。アリスは俺が近づいて来たのに気づくとどこかへと逃げて行った。

「いろいろあってアラン君と舞踏会に行くことになったから、リナたちも来る?」

 リナに対して言うと、リナは頷いた。

「私も、アリスちゃんも、毎年参加してるから」

「なら何時ものメンバーで参加して」

「でも、それは、アラン君に、申し訳ない」

「申し訳ない?」

 どうしてそうなるのだろうか?

「リヴァちゃんは、アラン君と二人で、参加したら」

「駄目!」

 するとアリスがこっちへやって来た。

 元に戻ったみたいだ。

「リヴァちゃんは私と参加しよう! そうしましょ!」

「アリスちゃん?」

「リナちゃん、止めないで」

「止めるつもりは、ないけども。でも、アラン君が可哀想」

「私も可哀想だよ」

「全然」

 そこでアリスは俺の目を見て、はっと気づくと小さく縮こまる。

 元に戻ったと思ったらこれだ。

「さっきから、アリスはどうしたの?」

「その、えっと」

 アレックさんとの戦い後のアリスは変だ。

 リナは恥ずかしがってるとか言っていたけども。

 アリスは顔を赤らめて。

「リヴァちゃんがさらに好きになって」

 はい?

「リナ、通訳して」

「アリスちゃん、リヴァちゃんが戦う姿が、格好良すぎて、さらに好きになって。会話をするのが、恥ずかしがってるだけ」

「乙女か!」

 いや、乙女か。

 いろいろと問題はあるけども、心の奥底は恋に生きる少女だものな。それで恥ずかしがってたのか。

 やっとで理解した。

「と言うわけで、これからの私は少し変なままになるから!」

 アリスはそう言い残して、耐えられなくなったのか、どこかへと消えていった。

 その日の晩はアリスは部屋には来なく、俺は久々な快眠を取ることが出来た。

 ただ少しだけ寂しくはあった。


 俺は少し軽卒に動いているのかもしれない。

 男からモテたいと思わなくても、客観的に見れば、こんな容姿ならば男の視線は集めてしまう。そして注目を浴びるような事をすればさらに視線を集めることは少し考えたら分かることだ。

 あの時、俺はアレックさんに対してムキにならない方が良かったかもしれない。そうすれば、告白とかも無かったかもしれない。

 でも、ムカついたからな。

 容姿も性格も能力も高いとかおかしいだろ。俺は日本にいた頃は容姿も性格も能力もどれも低かったぞ。神様はもう少し平等に与えてくれよ。

 完全なる男の嫉妬だ。

 今は男じゃないけども。

「恋愛は、相手を悲しませるからな。特に俺は男でも女でもあるから厄介だ」

 次の日の朝。

 もう少しある朝食までの時間。

 俺は考え事をしていたら、ふいに扉がノックされた。

 リナだろうか。

 もしくはアリスか。

 なんて思いながら部屋の扉を開けると目の前にアレットさんがいた。予想外の人だった。

「おはよう」

「おはようございます」

「朝早く申し訳ない。それで、リヴァ、少し良いか?」

「はい」

 アレットさんを部屋の中へ招き入れる。

 何だよ、この状況。

 なんて思っているとアレットさんが口を開く。

「まず初めにすまなかった。私の兄は女好きでな」

「いや、全然大丈夫です」

「それで肝心の要件なのだが」

「どうぞ」

「舞踏会で行われる見世物を知っているか?」

 見世物?

「毎年、女騎士が二人、舞踏会で実剣による戦いを披露する。騎士とは強さと同時に戦いの綺麗さを目指す必要がある。それを貴族たちへ見せるのだ」

「はあ」

「ヨハン殿がリヴァ、お前を指名した」

「ヨハンさんが?」

 何故俺を。

 アレットさんは続ける。

「それに兄さんが便乗した。相応しい騎士だと」

「まだ、私は騎士見習いなんですが」

「確かにそうだ。しかし、ヨハン殿はリヴァの強さ、可憐さに注目している。ヨハン殿が認めれば例え騎士見習いでも参加できるだろうな。この話は舞踏会の二日前ほどに来るだろう」

「それを教えに来たのはどうしてですか?」

 わざわざアレットさんが教えに来る要件では無いように感じた。

 するとアレットさんの表情が曇る。

「言っただろう。見世物だと」

「はい」

「正直な話、良いものでは無い」

 だから見世物と表現したのか。

「沢山の貴族が見る中、騎士は見世物として使われるのは、さながら貴族たちの娯楽のために自身がいるように感じる。そして相手が相手だけに断ることも出来ない。アリスやリナは耐えられないだろう。リヴァ、お前も」

「大丈夫だと思います」

「良いのか? 私が兄にお願いすれば、もしかしたら断ることが出来るかもしれない」

「だって、そう言うのは慣れてますから」

 社畜だった頃にね。

 俺が笑顔で答えると、アレットさんはそうかと安心したように呟いた。

「分かった。ただ、リヴァは舞踏会に貴族側の方に参加することになる。噂話で聞いたが、アランと一緒に行くのだろう?」

「そういえばそうでした」

「そのことは、私が話を通しておこう。リヴァの他に三人ほど貴族側の舞踏会に参加出来るようにな」

「ありがとうございます」


 その時は思いもしなかった。

 まるで神様が意地悪をしているかのように。

 俺は巻き込まれることになる。

キャラ紹介16

モブ ラク

15歳少年。庶民の子。まだ登場はしていない、騎士見習いの一人。

ものすごく普通。他のキャラが濃いがために、逆に濃いと感じてしまうほど普通。

あまりにもモブ過ぎて、今後登場するかも怪しい。

実力は中の中。

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