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姫と呼ばれて  作者: イルハ
第1部
3/47

異世界

私の名前は山田雪。24歳。社会人2年目の普通のOL。

それが、どうしてこうなったのか気づいたら、異世界にいました。


何で、異世界って分かるかって?

そりゃあ、日本じゃ考えられないことがたくさんあったからね(泣)


あ。ちなみに、言葉は普通に話せました。

私が話す言葉は自動でこちらの世界の言語に翻訳されているみたい。

文字も読める。


ただ、こちらの世界のことは全く分からないから、奥さんとご主人に色々教えてもらいましたとも!

何で何も知らないのか不審がられないように、めちゃくちゃなストーリーを作って2人に話したからね!


この国では珍しい黒い瞳と黒髪を持つ私は、幼くしてかの変態貴族に捕まって。

外の情報は何も与えられず、今まで生きてきた。

数年前、自分と同じように連れ去られてきた男の子を自分の弟のように可愛がっているうちに2人で逃げようという話になった。

行き先は男の子の実家。

けれども、逃げ出す時に見つかってしまって。

男の子は私を庇って重傷を負う。

だけど、それでも何とかここまで逃げてきた。…って感じで。


だから、私はこの世界のことを何も知らない=何を聞いても不審がられない


だから、私達は本当の兄弟じゃない=顔が似ていなくても不審がられない


完璧!!


…ではないけれど。

人の良い2人を騙すようで、本当は心苦しいんだけど。

ここを追い出されたら、本当に私達は路頭に迷ってしまうから。

せめて、男の子が元気になるまで。

私が何とかこちらの世界のことが理解できるようになるまで。

このままでいさせてもらおうと思ったの。


っていうか、こんな話があっさり信じられてしまう、ここの変態貴族本当に大丈夫なのか!?


それで、分かったのがここはセリンガムという国だそう。

大国ではないけれど、資源豊かなここは貧しい国ではないらしい。


そして、驚いたのがこの世界には魔道というものがあるみたい。

もうね、絶対異世界でしょ!?この設定!!

ただし、魔道を扱えるようになるには生まれつき、その才能を持っていなければならなくて。

数千人に1人という確立でしか生まれないから、魔道士はとっても少ないらしい。


そういう魔道士は、その才能が見られた時からほぼ強制的に王宮へ連れていかれて、そこで魔道士になるための訓練を受けて、そのまま王宮お抱えになるから、この辺りで魔道士を目にすることはまず無いのだそう。


でも、魔道という不思議の恩恵に与るのは王家の人間だけではなく、一般の人達は魔道士が作りだす魔道石という物を買うことができる。

これは、本当に便利なもので用途によって色々と種類があるみたいだけど、例えば火属性の魔道石があれば、水をお湯に変えることができるんだそう。

つまり、ガスや電気を使わなくてもシャワーが使えるってわけ。

光属性のものを使えば電気の代わりになるし。

水属性のものがあれば、水洗トイレもOK。


この魔道石のおかげで、こちらの世界でも私は日本と大して変わらない水準の生活ができている。


もう一つ、驚いたのがクウちゃんの存在。

クウちゃんは「翼竜」というとっても珍しい動物だそう。(恐竜顔だと思ってたら竜だったのね!)

とても頭の良い動物で、こちらの言う事も理解できる。

そして、自分が認めた人間でないと絶対に懐かない。


クウちゃんは今は赤ちゃんだからいいけれど、大人になると体長が10メートルくらいになるらしく。

口から火を吐き硬い鱗はどんな剣も矢も通さず、素早い動きで空を駆け巡る。(お、恐ろしい…。)

戦闘時、これ程戦力になる動物はないのだそう。

王宮には竜騎士と呼ばれる、翼竜達と共に闘う騎士までが存在するらしい。

そんな、動物の頂点に立つような翼竜だから、気性の荒いものも多く私のような普通の女性に懐くなんてことは例え赤ちゃんでもないみたい。


そんなすごい竜が、なんで私なんかと一緒にいるんだろう…。

あの森で出会った瞬間から、可愛らしく懐いてくれたよね。

うん。今考えても分からないことは、後で考えよう…。


まぁ。懐く懐かないは別にして、翼竜なんて本当のお金持ちしか手にすることはできないから、初め私の側にいるクウちゃんを見た時に、どこか貴族の屋敷にいたっていうことが決定付けされたらしい。

赤ちゃんの頃はその鋭い爪に注意すればいいけれど、大きくなったらクウちゃんは歩く凶器なので、竜の里という所に預けるか王宮の騎士団に預けるかしないといけないんだとか。


確かに、いつこの可愛いお口から火を吹かれるのかと思ったら、周りの人は恐いよね…。









「今日もお疲れさん」


お店を閉めて、掃除が終わった頃ご主人がニコニコと笑いながら私にココアを出してくれる。


「ありがとうございます!」


見た目はとっても厳ついけど、その太い指からは信じられない程、繊細でおいしい料理を作るご主人のいれるココアは格別。


くぅ。疲れた体に甘いものがしみる~~~。


「あの男の子の具合はどうだい?」


幸せな気持ちでココアを飲む私に近づいて、奥さんが声をかける。

ご主人に負けず劣らず、大柄な体で普段は大きな声ではきはきと喋る奥さんは、とても優しい瞳を持っている。


「最近は、スープやおかゆとかなら何とか口にできるようになりました」


あの男の子の様子を見に、お店が少し落ち着く時間帯に私はご主人の許可をもらって、おかゆとかスープとか体に優しいものを作っている。


「そうかい。それにしても、ほんとお金持ちは酷いことしやがる」


奥さんは吐き出すようにそう言うと、私の髪に触れる。


「こんなきれいな髪なのに…。これもヤツのせいだろう?」


私の髪は肩につくかつかないか位の所謂ボブヘアなんだけど、こちらの世界では女性は髪を伸ばすのが普通らしくて、こんな風に短くすることはないらしい。

だから、こんな長さの私は屈辱的なことを変態貴族にされたということになっている。


なんか、すみません。変態貴族さん。あなたが変態なおかげで、私こうしてここにいられます。


「男の子が元気になったらここを出ていくんだろう?でも、いいかい?あの子の家で少しでも嫌な思いをするようになったら、ここに戻ってくるんだよ?遠慮はいらないから」


「そうだよ。ユキちゃんならいつでも大歓迎だからね」


男の子が元気になるまで、ここで働かせてもらって私達の飲食と宿泊代を引いたお給料が貯まったら、ここを出ていく約束だったけど奥さんとご主人は、他人の私が男の子の家に行って虐げられないかと心配してくれる。


「はい!その時はよろしくお願いします!」


私はぺこりと頭を下げる。

そう言ってもらえて、本当に嬉しい。

一応私はあの男の子の保護者のつもりだから、あの子を家まで届けた後はどうしようかと思っていたけど、路頭に迷うことだけはなさそうだ。


うん。ただ、奥さんとご主人は私のこと17歳~18歳くらいだと思ってるみたいなんだよね。

なんか子ども扱い…。


いや!気にするのはよそう!

元々、童顔だしね。

若く見られてるんだし!前向きに捉えよう!!

評価をしてくれた方、お気に入り登録してくれた方、ありがとうございます!

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