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姫と呼ばれて  作者: イルハ
第1部
1/47

始まり

駄文です。暇つぶしにお願いします。

目が覚めたら、森だった。


ここは、どこ?


木々が鬱蒼としげるそこは、昼間のようだが薄暗い。

そして、私の本能がここは日本ではないことを告げていた。


落ち着け。私。

昨日は、残業で夜遅くに帰ってきて。金曜だったから、お風呂に入ってさっぱりしたら、そのまま倒れるように寝てしまったんだっけ。


そして、目が覚めたらここ。


ココハドコデスカ……。


着ている物は、ここ数年愛用しているパジャマ。

うん。これは変わらず。


靴下は、はいたままね。脱ぐの忘れて寝てたのね。

当然、靴もなしと。


その時、ガサガサっと私の背丈ほどはある草の葉を揺らす音がした。



なっ、何!?

もしかして、これは何処とも知れぬ場所でよく見られるシーン=動物(しかも肉食系)と出会っちゃうパターン!?


ちょっ…ちょっとちょっと!!

私、自慢じゃなけど運動神経なんてないんだからね!

逃げられないわよ!!


っていうか、完全に腰が抜けて動けません!!



パニックになる私を無視して、ガサガサと草の間から出てきたのは、(有難いことに)予想を反してかわいい生き物だった。


「きゅい?」


くりんとした大きな目。

耳は2つ。4本足で、胴体がぷっくりとした体調30センチメートル程の動物。

背中には小さな羽根が付いていて、浮いたまま直立した態勢で近づいてくる。


それは、何とも言えず愛くるしい形で……。


「かわいぃぃぃぃ~!!!!!」

「きゅい!?」


私は恐がっていたのも忘れて、思わず近づいてきたその動物を抱きしめていた。


うむむ…。意外と体は硬いわね。

あっ、でもお腹はぷにぷにしていて気持ちいいかも~。


「きゅいきゅい!」


動物は私の腕の中で嫌がるそぶりも見せずに、すりすりと体を摺り寄せる。


愛い奴よの~。

撫で撫で。ひとしきり撫でて、そして気づく。


「ここ、どこ?」


やっと、当初の疑問に立ち返ったのでした。









「クウちゃん。ここ、日本じゃないよねぇ?」

動物に(勝手に)名前を付けて歩き始めること数十分。

クウちゃんは、私の近くをふよふよと飛びながら、付いてきてくれている。


「きゅい!」


元気に返事をしてくれるのは嬉しいんだけど、「そうだよ!」みたいな返事はさすがにツライ。

言葉が通じているとも思えないけど…。


まぁ、一人より二人(?)の方が不安も少しは減るし。

クウちゃんが一緒にいてくれるのは、とっても有難い。


こうやって見ると、クウちゃんはどう見ても、地球上の生物じゃないって気がする。

だって、顔は確かにものすっごく可愛いけど、どことなく恐竜に似てる。

とがった耳とか、かわいいお口を開けると立派な牙が何本もあるとことか。

体も鱗で覆われてるし、両手両足に付いてる爪も鋭い。


いきなり抱きしめたりして、よく無傷だったな、私。


そんなことを考えていたら、突然クウちゃんが私のジャージの袖を引っ張った。


「きゅいきゅい!!」

「え!何?そっちに行くの?」


口で袖を引っ張りながら歩いていた道から逸れた茂みの方へ、私を引っ張っていこうとするクウちゃんにつられ、そちらへ足を向ける。


私が後を付いてきていることを確認しながら、クウちゃんはどんどん進んでいく。

仕方なく付いて行った先にあったのは小さな池。

そして、その近くには一人の少年が倒れていた。


「えっ!?ちょっと、大丈夫!?」


慌てて、駆け寄ると少年はぼろぼろだった。

体中に切り傷や痣がある。

顔も殴られたのか、腫れていて、ひゅうひゅうという掠れた呼吸音がするのみ。


「酷い…」


どう見たって、10代前半の子どもなのに。

意識が無くなるほどに暴力を振われたのだろうか。


さっと全身を触る。

うん。骨は折れてないみたい。

捻挫はしているかもしれないけど…。


「クウちゃん!この近くに治療ができる所ない!?とにかくお医者さんに診せないと!!」

「きゅい!!」


付いてきて!って感じのクウちゃんに頷くと、私はゆっくり少年を抱き起して背負う。


……くぅっ。


意識のない体はやっぱり子どもとはいえ、重い。

だけど、そんなことも言ってられない。


足に力を入れて、何とか立ち上がると私はそのままクウちゃんの後を付いて行った。


















これが、私とクウちゃんとルイの始まり。

そして、私たちの人生を変える出会い。

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