始まり
駄文です。暇つぶしにお願いします。
目が覚めたら、森だった。
ここは、どこ?
木々が鬱蒼としげるそこは、昼間のようだが薄暗い。
そして、私の本能がここは日本ではないことを告げていた。
落ち着け。私。
昨日は、残業で夜遅くに帰ってきて。金曜だったから、お風呂に入ってさっぱりしたら、そのまま倒れるように寝てしまったんだっけ。
そして、目が覚めたらここ。
ココハドコデスカ……。
着ている物は、ここ数年愛用しているパジャマ。
うん。これは変わらず。
靴下は、はいたままね。脱ぐの忘れて寝てたのね。
当然、靴もなしと。
その時、ガサガサっと私の背丈ほどはある草の葉を揺らす音がした。
なっ、何!?
もしかして、これは何処とも知れぬ場所でよく見られるシーン=動物(しかも肉食系)と出会っちゃうパターン!?
ちょっ…ちょっとちょっと!!
私、自慢じゃなけど運動神経なんてないんだからね!
逃げられないわよ!!
っていうか、完全に腰が抜けて動けません!!
パニックになる私を無視して、ガサガサと草の間から出てきたのは、(有難いことに)予想を反してかわいい生き物だった。
「きゅい?」
くりんとした大きな目。
耳は2つ。4本足で、胴体がぷっくりとした体調30センチメートル程の動物。
背中には小さな羽根が付いていて、浮いたまま直立した態勢で近づいてくる。
それは、何とも言えず愛くるしい形で……。
「かわいぃぃぃぃ~!!!!!」
「きゅい!?」
私は恐がっていたのも忘れて、思わず近づいてきたその動物を抱きしめていた。
うむむ…。意外と体は硬いわね。
あっ、でもお腹はぷにぷにしていて気持ちいいかも~。
「きゅいきゅい!」
動物は私の腕の中で嫌がるそぶりも見せずに、すりすりと体を摺り寄せる。
愛い奴よの~。
撫で撫で。ひとしきり撫でて、そして気づく。
「ここ、どこ?」
やっと、当初の疑問に立ち返ったのでした。
「クウちゃん。ここ、日本じゃないよねぇ?」
動物に(勝手に)名前を付けて歩き始めること数十分。
クウちゃんは、私の近くをふよふよと飛びながら、付いてきてくれている。
「きゅい!」
元気に返事をしてくれるのは嬉しいんだけど、「そうだよ!」みたいな返事はさすがにツライ。
言葉が通じているとも思えないけど…。
まぁ、一人より二人(?)の方が不安も少しは減るし。
クウちゃんが一緒にいてくれるのは、とっても有難い。
こうやって見ると、クウちゃんはどう見ても、地球上の生物じゃないって気がする。
だって、顔は確かにものすっごく可愛いけど、どことなく恐竜に似てる。
とがった耳とか、かわいいお口を開けると立派な牙が何本もあるとことか。
体も鱗で覆われてるし、両手両足に付いてる爪も鋭い。
いきなり抱きしめたりして、よく無傷だったな、私。
そんなことを考えていたら、突然クウちゃんが私のジャージの袖を引っ張った。
「きゅいきゅい!!」
「え!何?そっちに行くの?」
口で袖を引っ張りながら歩いていた道から逸れた茂みの方へ、私を引っ張っていこうとするクウちゃんにつられ、そちらへ足を向ける。
私が後を付いてきていることを確認しながら、クウちゃんはどんどん進んでいく。
仕方なく付いて行った先にあったのは小さな池。
そして、その近くには一人の少年が倒れていた。
「えっ!?ちょっと、大丈夫!?」
慌てて、駆け寄ると少年はぼろぼろだった。
体中に切り傷や痣がある。
顔も殴られたのか、腫れていて、ひゅうひゅうという掠れた呼吸音がするのみ。
「酷い…」
どう見たって、10代前半の子どもなのに。
意識が無くなるほどに暴力を振われたのだろうか。
さっと全身を触る。
うん。骨は折れてないみたい。
捻挫はしているかもしれないけど…。
「クウちゃん!この近くに治療ができる所ない!?とにかくお医者さんに診せないと!!」
「きゅい!!」
付いてきて!って感じのクウちゃんに頷くと、私はゆっくり少年を抱き起して背負う。
……くぅっ。
意識のない体はやっぱり子どもとはいえ、重い。
だけど、そんなことも言ってられない。
足に力を入れて、何とか立ち上がると私はそのままクウちゃんの後を付いて行った。
これが、私とクウちゃんとルイの始まり。
そして、私たちの人生を変える出会い。