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捨てられた異世界人を保護する村長は、伝説の大賢者でした  作者: ニック
第1章:大工親方と、背伸びした勇者たち

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第16話:反撃の構造解体

「——全軍、前進! 敵の防衛線の継ぎ目を一気に突くぞ!」


五年間の修行を経て、俺たちは防衛一辺倒だったかつての王国軍を引き連れ、魔王軍の本拠地である『断絶城塞 ガルガ・ロクス』へと逆侵攻を仕掛けていた。


かつて王都を絶望に陥れた魔王軍の絶対不可侵とされる巨大城塞。だが、大工の俺から見れば、急ごしらえの石組みと過剰な暗黒魔力で無理やり補強されただけの『黒岩の欠陥要塞』に過ぎない。


「敵のギガントオーガが来ます! 重圧で陣形が潰される……!」


 先陣を切る王国の兵士たちが悲鳴を上げる。

 だが、その先頭へ疾風のごとく躍り出たのは、二メートルを超える巨躯へと成長したガルドだった。


「慌てんじゃねぇ! 支点と軸を通せば、こんなもんただのデカい木材だ!」


 ガルドは巨大な盾を構え、地面に深く足の軸を叩き込む。

 十メートルを超える巨物の棍棒が一撃が振り下ろされた瞬間——ガルドの身体は微動だにしなかった。衝撃(過荷重)がすべて足元の土台を通じて地面へと逃げ散り、大地のほうがバキバキと砕け散る。


「耐荷重は無限大だ……! セシリア、決めろ!」


「はいっ! 【神聖構造結界・アンカー】!」


 ガルドの背後から跳躍したセシリアが、神聖魔法を帯びた手斧を一閃。

 無駄な魔力の散逸が一切ない、完璧に密度の高められた光の結界が巨大魔物の脚の関節——「動きの継ぎ目」に直接打ち込まれた。自重を支えきれなくなった巨大魔物が、ガタガタと音を立てて崩れ落ちる。


「よし、本陣の城門に隙間ができた! シルフィ!」


「……ん。隙間、もらった」


 気配を完全に殺したシルフィが、崩れた魔物の影から影へと滑るように移動し、要塞の巨大な鉄門の支点に滑り込んだ。

 手斧の刃先で、門を支える一箇所のボルトをコンッと軽く突く。

 たったそれだけで、何十トンもの重量を誇る重厚な城門が、自重の歪みに耐えきれずガラガラと音を立てて内側へ全崩壊した。


「城門が開いたぞ! レオン、親玉の解体にかかるぞ!」


「了解です、義一さん!」


 最奥の玉座の間。そこに鎮座していたのは、圧倒的な威圧感を放つ魔王だった。

 暗黒の魔力を全身に纏い、空間そのものを歪めるほどの暴威。だが、レオンの澄み切った瞳は、魔王の強大さではなく、その身体と魔力の「流れの継ぎ目」を冷静に見抜いていた。


「選ばれし勇者でもない雑魚どもが……我が暗黒魔力に耐えられると思うか!」


 魔王が解き放った絶大な魔力の濁流。

 だが、レオンは一歩も引かず、手斧を水平に構えてスッと深く踏み込んだ。


「どんなに巨大な魔法でも……『順目』と『逆目』がある。流れを解析すれば、斬る必要すらない!」


 すん、と静かな音が響く。

 レオンの手斧が、魔王の魔力の「節」に吸い込まれるように滑り込んだ。

 力で押し返すのではない。魔力の構造の流れに沿って刃を添えただけ。それだけで、魔王の解き放った絶大な暗黒魔法が、まるで木割りのように左右へと綺麗に裂け、霧散していった。


「な……なに……!? 我が魔力が……解体された……だと!?」


「終わりだ、魔王。お前は自分の強さに頼りすぎて、自分の『土台』の欠陥に気づいていなかった」


 レオンの手斧が、魔王の胸元の「軸」を一直線に貫いた。


 ドゴォォォォン……!


 魔王の巨体が崩れ去ると同時に、黒岩要塞全体が自重を支えきれなくなり、ガラガラと音を立てて瓦解していく。

 かつて世界を絶望に陥れた魔王軍は、五年かけて完璧な「構造解体」の術を身につけた『勇者』たちの手によって、見事完全に滅ぼされたのだった。

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