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Go to Fantasy  作者: マネキ・猫二郎
第一章──雨編
2/2

【一章一話】雨で始まって

 「そういえば思ってたんだけど、【チート】とかは貰えないんすね」

 『あ』

 「──?」


 『すみません、忘れてました』

 「え、じゃあ、本来ならチート貰えたはずなの!?」

 『ですね』


 「今からでも貰えたりとか……」

 『天界から地上までの距離だと声を届けるので精一杯です。もう一回死んで天界まで昇ってきてもらえば、その限りでは無いのですが……』


 「機会があれば」

 『ええ、ではまたの機会に』


 「ちなみに街まであと何分?」

 『約十五分です』



 〇



 「そういえば思ったんすけど、さっきの風魔法以外に、俺ってどんな魔法が使えるんですか?」

 『全属性の初級魔法です』


 「全属性?」

 『火、水、風、土、光、闇──の六属性です』


 「それって結構すごいやつ?」

 『初級魔法という点は残念ですが、全属性を扱えるというのはこの世界でも有数です。磨けば十分実力者を目指せます』


 「ええ! 俺にそんな才能が……」

 『【チート】とは別の転移特典です。あなたの才能ではない、という点に要注意』

 「やっぱ残念」


 『はい、説明パート2(ツー)終了。そこのモンスターを倒してください』

 「へ?」



 前後左右を見ても、何もいない。



 「どこに……」

 『上です』

 「へぁ?」



 言葉を飲み込むより先に、命の危険を感じた身体が動いた。上空から飛来したソレを、かろうじて避けたが……。



 「いだっ!」



 手の甲に違和感を感じて目線を向けると、親指の付け根から小指の付け根に掛けて、切り傷ができていた。



 「なになになに!?」

 『()()()です』

 「つばめ!?」

 『()つの()で天に()す、で双刃召(つばめ)です』

 「殺意高ぇ!」

 『さ、初級魔法で切り抜けましょう』

 「もっと易しくお願いします!」



 辺りを警戒しながらイシュネッタと会話をする。双刃召の姿は見当たらない。



 『小さいので草陰に隠れているかもしれませんね』

 「神様パワーで分かったりとか……」

 『ないです』

 「おっけーがんばる! 今のうちに水の初級魔法の詠唱を教えてくれ!」

 『水だけ?』

 「ああ!」

 『【ルロー】です』

 「了解!」



 そしてついに、俺は行動に出る。



 「ルヴォン!」



 風の初級魔法だ。唱えると、周囲に突風が巻き起こる。自身は台風の目のようなもので、その風を受けない。



 「──チュン!」

 「掛かった!」



 俺の作戦通り、双刃召は突風に驚いて勢いよく飛び立った。宙に浮かぶ双刃召に対して、手の甲を切られた右掌を向ける。そして……



 「ルロー!」



 唱えると、そこそこ良い値段のする水鉄砲くらいの威力の水が、右手から放たれる。



 「──チュン!」



 見事命中し、双刃召は落下を始めた。

 その落下点目掛けて、お椀型にした両手を差し出す。そして双刃召は俺の手中に落ちた。



 「ごめんよ。でもこれで、おあいこだ」

 「チュゥン……」



 見た目は知っているツバメと変わらない。



 「どこに刃があるんだ?」

 『両翼です。薄くて軽い刃を、羽の中に忍ばせています』

 「ほえー」

 『聞いといて何ですかその返事は……』



 俺は濡れた双刃召を、服で拭う。



 「チュチュ、チュン!」

 「あ、こら」



 双刃召は羽を羽ばたかせ、飛び立とうとした。が、すぐに羽を閉じて、俺の手の中で落ち着いた。



 「──?」



 行動の意図を疑問に思っていると、一粒、頬に何かが当たる。するとすぐに、二粒、三粒、と身体を軽く打ち始めた。



 「雨……」

 「チュウ」



 ツバメが低く飛ぶと雨が降る、というが、その言い伝えが関係しているのだろうか。



 『にしても先程の作戦、普通のツバメだったら通用していませんでしたよ』

 「え」



 ツバメは水で羽が重くなると飛べなくなるから、雨の前は低空飛行をする。その認識だったから、水が弱点だと思ったのだが。



 『なんて考えていたんでしょうけど、普通のツバメは羽にある油分で水を弾くので効きません』


 「え、じゃあ雨の前に低空飛行するのって」

 『羽が重くなって低空飛行になるのは虫です。餌である虫が低いところを飛ぶから、それを狙うツバメも低空飛行になる、という訳です』

 「勉強になるな」

 『もっと勉強してください』

 「はい……」



 雨足は強まり、若干早歩きになりながらイシュネッタと会話を続ける。



 「ならどうして、この異世界版ツバメには効いたんすか?」

 『羽に刃を持ってますからね。薄くて軽いとはいえ、他の鳥より重いですし、一時的でも重さを増せばポトンと落ちちゃいます。そもそもこの双刃召は、その重さから長距離・長時間は飛べませんし』

 「あ、だから俺を切ってすぐ草陰に」

 『かもしれませんね』

 「異世界おもしろっ」

 「チュゥン……」



 俺は異世界の面白さに興奮し、イシュネッタはナビゲート役として淡々と説明をする。そして双刃召は弱々しく鳴いた。



 「よし、早いとこ街に着いてゆっくりしよう」



 ざあざあ振りの中、俺は手中の双刃召を大切に包んだまま、地面を強く蹴って走り始めた──。



 「ちなみに街まであと何分?」

 「もう目の前じゃないですか、わざわざ聞かないでください」



 ※



 自室でうずくまって泣いていると、窓の外から雨音が聞こえ始める。いつだって、私が泣くと雨が降る。


 ──私が落ち込んでいる時に、励ましてくれる存在は周りにいない。


 私は王族。強くなくちゃいけない。一人で立ち直れなきゃいけない。けれど私は、どうしても強くなれないのです。今もまた、誰かに助けを求めています。





【一章一話】雨で始まって

終わり


▲▼▲▼

トピック──魔法編2──

▼▲▼▲


ルロー:水の初級魔法。ちょっと高級な水鉄砲くらいの威力の水が出る。硬水。

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