第10章 Two Sides of the Same Coin【友達】
俺は旅先で出会った大人の友人との交流が嬉しくて、その後、串カツ屋、お好み焼き屋と梯子し、大阪グルメを楽しんだ。
「あかーん!星くんと飲むのたのしすぎるー!」
まるさんは、何杯目かわからないハイボールをグビグビと小さな喉仏をならして飲み干すとにやぁーっと微笑んだ。
「いや、俺はシラフですから」
「お前は、酒飲みの舌や!俺が断言する!」
人差し指をピッと指差して俺の鼻先を潰した。
そしてそのまま目を合わせるとギョロリとした目を見開いて大きく息を吐いた。臭い。酒臭い。
「…星くんの目ぇ。綺麗やなぁ?」
「そうですか?」
「綺麗すぎるやろ。ピッカピカのキッラキラのお星さんが散りばめられとる。満点の星空や。これ、お暇の人間が見たら、正気じゃいられんやろな」
「おいと?」
「は?知らんのか?星くん龍やろ??
人間の読み方も教わっとらんの??」
追加したハイボールが運ばれると、空グラスをニコニコしながら店員に渡し、また喉仏を上下して液体を体内に運ぶ。
「僕が…青龍と知っていて…ずっと飲んでいたんですか?」
正直、この男に嫌な予感はしていたがいざ自分も慣れない身元を言われるといい気はしない。
ぐっと体勢を直して睨むように丸に問いかける。
「今なんて?」
「いや、だから僕が青龍って」
「セイリュウ?」
「はい」
「SAY RYU?」
「おーいえす」
「青龍!!??」
丸はバンッとテーブルに手を叩きつけて大声で叫ぶと真っ青になった。
「……忘れてた。忘れてた…。お前…」
わなわなと手を震えさせ顔を手で覆いつつ、隙間から俺を見るが顔は真っ青を通り越して黒くなっていく。
「あの、丸さんも神庁関係者ですか?」
俺が単刀直入に聞くと、丸は口から泡を吐いた。人間?驚くと何でも出来るんだなぁ。
「…ノーコメントや。はぁ、青龍ってことはあのクソめんどくさい白蛇がついとるんか」
丸さんは近くにあった水を飲み干した。
俺は何処かで、何となくこの人は人外で俺たちと同族なんだろうと気がついていた。
が、心地いいのだ。
酒は飲めないが、同じ食べ物を口に運び同じコンテンツを共有して、たわいのない話をする。話の内容なんて、何を話したなのかなんて既に忘れている。
それって相性がいいってことじゃないか?
露木と話していても…楽しいし…安らぐ気もする。
だけど、覚えている。あいつがどんな時に怒って、悲しむのか。
たまに見せる…苦しそうで、俺を見て微笑むあの笑顔。
嬉しさと寂しさが入り混じって、俺の心臓を素手でなぞる様な。
「星くん?」
丸さんが酒臭い息を吐きながら俺に顔を近づけ覗き込んだ。
いかんいかん…俺は一人旅なんだぞ。
露木の事は考えるな。あれは、単なる知り合いだ。うん。
「…まあ、ええ。そや、俺はな。澄の兄の菫や。聞いとる?双子の」
丸さんは、今更照れているのか何故か頬を赤く染めて頭をポリポリとかいた。
きっとみんなは、この菫を探していて。
菫が亜の秘密を握るトラブルメーカーに違いない。きっときっと、こいつが何人もの人間を苦しめ、亜の力で闇の底まで覗かせているに違いない。
…が、俺はこの人を吊し上げて、すぐ神一行に告げ口する気にはなれない。
何故なのか。
「聞いてません。誰ですか?澄って」
俺は、脊髄から直接話すように。
今まで嘘なんか、大してついたこともないのに。
ベテラン詐欺師のようにニコニコ笑って言葉を紡いだ。




