715話 覚悟を決めて
翌日。
俺達はダンジョンの攻略に挑むことにした。
メンバーは、カナデとタニアとニーナ。
それと、リファとライハだ。
あまり大人数で挑むと、いざという時に混乱してしまうし……
村の方でなにかあるとも限らない。
なので、このメンバー分けになった。
「くっ、わたくしが留守番になるなんて……やはり、夜這いをしてレインさまの心を掌握しておくべきだったでしょうか?」
「ふふん、そういうことなら協力するぞ?」
「ソラ達の力が合わされば、百人力です」
「我らぺったんこシスターズの魅力を、レインに見せつけてやるのだ!」
「いえ、あの……わたくしも、その珍妙な仲間に入れられてしまうのは、ちょっと……」
村に残るみんなは元気そうだ。
それはいいんだけど……
ちょっと無警戒すぎるのが気になるかな?
「ソラ」
ちょいちょいと手招きをして、ソラを呼ぶ。
「なんですか、レイン?」
「心配しすぎかもしれないけど……もしかしたら、俺達が留守の間に村でなにか起きるかもしれない。その時は、みんなの指揮を頼む」
レイチェルが村を復活させた、ということだけど……
でも、そこに至るまでの力の源は不明のままだ。
色々なパターンを予想しているけど……
もしも、最悪の予想が的中していたら、ここも安全とは言えない。
「わかりました。ここは、ソラ達に任せてください」
「うん、頼んだ」
ソラなら、みんなの指揮をうまくやってくれるだろう。
心配はいらない。
後は、俺達の方で、ダンジョン攻略をがんばるだけだ。
「よし……じゃあ、いこうか」
「「「おーっ!!!」」」
「おー」
カナデ達の元気な声と、いつでもどこでもマイペースなリファの声が響くのだった。
――――――――――
「ここがダンジョンの中か……」
石の床と石の壁。
そして、石の天井。
ただ、普通の石じゃないらしく、ぼうっと淡く光っている。
おかげで明かりに困ることはない。
通路は広く、馬車が通れるほどだ。
今のところ魔物の気配はない。
「ちょっと変わったダンジョンだね」
「いきなり魔物が襲いかかってくるかと警戒していたんだけど……なによ、つまらないわね」
戦闘を求めないでほしい。
「でも、みんなも入ることができてよかったよ」
俺でしか扉を開けることができない。
だから、中に入れるのは俺だけ……なんて展開も考えていたんだけど、どうやら杞憂に終わったらしい。
「すんすん、すんすん」
突然、ライハが匂いを嗅ぐように鼻を鳴らした。
「アニキ、ここ、妙な感じであります!」
「どういうこと?」
「魔物の匂いが一切しないけど、でも、なんかやばい感じがします。奥の方から敵意を感じるのであります!」
「うーん?」
魔物以外の敵が潜んでいる、ということだろうか?
ライハは嘘を吐くような子じゃないけど……
でも、感覚的にものを話すから、なにが言いたいのかよくわからないところがある。
「ってか、カナデ。なんでライハに負けているのよ。ほら、思う存分、匂いを嗅ぎなさい」
「私、猫だからね!? 嗅ぐのなら、どちらかというとサクラの役目だよね!?」
犬には劣るけど、猫も優れた嗅覚を持っているんだけど……
それは口にしないでおいた。
「……みんな、静かに」
少し歩いたところで、俺は足を止めて、みんなを制止した。
ライハが言うような魔物の匂いはしない。
でも、ピリピリと刺すような敵意が近づいてくるのはわかった。
様子を見ていると……
「「「ぐるるるぅ……!!!」」」
犬、狼。
猫、虎、ライオン。
その他、様々な動物が姿を見せた。
いずれも牙を剥いて、明確な敵意を示している。
「お? こいつら敵か? 俺の敵か?」
「ダンジョンの番人、ってところかしらね。なら……」
「ボク達が倒す」
「あたしのセリフまで盗られるように!?」
いまいち緊張感に欠けるメンバーだった。




