716話 ビーストテイマーとしての資格
「穿て、ブラッドシュート」
リファが先手を取り、血の弾丸を放つ。
ただ、動物達を直接狙うことはない。
彼らの手前に着弾させて、その足を止める。
あるいは怯ませて、逃がそうとする。
相手は魔物ではなくて動物。
番人だとしても傷つけるのは本意じゃないらしい。
リファの優しさがよく表れていた。
「ほら、逃げて」
「ぐるるる……!」
「あれ? 逃げない?」
リファは不思議そうに小首を傾げた。
俺も疑問に思う。
今の一撃で、圧倒的な力量の差を悟ることができたはずだ。
それなのに逃げないなんて……
「なら、これはどう!」
「ちょ!?」
タニアが火球を吐き出した。
止める間もなく、炎が動物達を襲う。
炎は動物達を飲み込んで、そのまま奥へ進み……
扉があった様子で、行き場をなくして、跳ね返ってくる。
「にゃ!?」
「自分に任せてください!」
ライハが前に出て、床に手をついた。
すると影が盛り上がり、壁となって炎を遮る。
「ふう……なんとかなった」
「今の、ライハが? すごいな」
「えへへ。自分、影を操ることができるので。攻撃も防御もできます!」
「助かったよ、ありがとう」
「ふぁ……」
みんなにしているせいか、ついつい反射的に頭をなでてしまう。
ただ、嫌がられることはなくて、むしろ気持ちよさそうに嬉しそうにされた。
俺の手、本当になにか出ているのかな……?
「タニア……いきなり、ダメ」
「うっ……で、でも、敵は倒したわけだし……」
「……動物さん……」
「むぐ」
「こういうところで炎とか使うと、今みたいに跳ね返ってくることもあるんだから。使う時は、慎重にならないと」
「カナデに諭されるなんて……もうダメよ、あたしはダメよ……」
「どういう意味かな!?」
みんな、わいわいと声をあげるのだけど……
「ストップ。気を抜くのは、まだ早いみたいだ」
「え?」
奥から足音が近づいてきて、再び動物達が姿を見せた。
新手……じゃないな。
姿形はさきほどのものとまったく変わらない。
再生したのか?
「どうやら、単純に倒すだけじゃダメみたいだな」
「そんな……それじゃあ、タニアはまるで役に立てないよ!」
「ちょっとカナデ!? あんた、日頃からかわれている恨みを、ここぞとばかりに晴らそうとしていない!?」
「にゃんのことかな?」
こんな時でも、いつも通りな二人が頼もしい。
「どうします、アニキ?」
「そうだな……」
「お話……してみる?」
ニーナらしい発想だけど、説得はさすがに……いや、そうでもないか?
少し考えて……
それから閃いた。
「そっか、そういうことか」
「にゃん?」
「俺に任せてくれ」
俺は、一人で動物達の前に立つ。
みんなが心配そうにするのが見えたけど、大丈夫。
考えている通りなら、きっとうまくいくはずだ。
軽く息を吸い……
集中してから、力を解き放つ。
「止まれ」
「「「……」」」
俺の命令に従い、動物達は足を止めた。
「道を開けてくれるか?」
「「「……」」」
動物達はおとなしく、言われるまま道を開けてくれた。
ピシリと動く様は訓練された兵士のようで、どことなく頼もしく見える。
「わぁ……すごい、ね」
「ニーナのおかげだよ」
「わたし……の?」
「話をしてみる、って言ってくれただろう? それで、思ったんだ。ここは、力尽くで通る場所じゃなくて、ビーストテイマーとしての能力を見せないとダメなんじゃないか、って」
タニアの火球では、動物達は消滅することはなかった。
仕組みはわからないけど、おそらく、瞬時に再生したのだろう。
倒すことは不可能。
なら、どうすればいいか?
ラウドネアは、別名、ビーストテイマーの里だ。
なら、ビーストテイマーらしく、動物達を従えて無力化すればいい。
そう考えたのだけど、見事、正解だったらしい。
「ありがとう、ニーナ」
「えへへ」
ニーナは嬉しそうに、三本の尻尾をぴょこぴょこと揺らした。
「いいな……」
「うらやましいわね……」
カナデとタニアは、どこか物欲しそうな目で見て、
「アニキの役に立ったから、ニーナだけの特権であります。仕方ないですね」
「二人は力押ししか考えてないからね」
「「うぐっ」」
リファの悪気のない一言に、カナデとタニアは苦い顔をするのだった。




