特別話 宣伝その4
「やっほー、ボクだよ」
丘に立つ家の前。
リファがのんびりとした口調で挨拶をして、手を振る。
「……」
沈黙して、
「あ、もういいの?」
ふと、視線を横に向けて。
それから再び前を向いて、口を開く。
「『勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う』書籍7巻、11月2日、明日発売だよ。よろしくね」
そんな宣伝を口にしたリファは、そこで唇を閉じてしまう。
そのまま、じっと待機すること数十秒。
「ダメなのだー!」
「どうして、それだけで終わってしまうのですか!?」
とても焦れた様子で、ルナとソラが飛び出してきた。
ルナは、手にしたメガホンをビシッとリファに突きつける。
そして、厳しく言う。
「宣伝なのだぞ? 我らの活躍が収められた書物が発売されるのだぞ? なればこそ、もっと派手に元気にかっこよく、宣伝するべきではないか!」
「ボク、がんばったよ?」
「ぜんぜんがんばっておらぬ!」
「えー」
リファは不満そうに言うものの、その表情は変わらない。
わりとどうでもよさそうだった。
そんな態度に憤慨するのは、精霊姉妹。
姉のソラは、同じくメガホンを手にして、リファを叱る。
「いけませんよ、リファ。これはとても大事なことなのです。ルナが言うように、もう少しがんばらないといけません」
「うーん、そうなの?」
「そうです」
「でも、どうすればいいのかな?」
「そもそも」と間を挟み、リファは言葉を続ける。
「ボク、こういうことは不向きだと思うな」
「諦めてはいけませんよ。諦めずに挑戦を続ければ、いつか花開くというものです」
「……姉は料理を諦めてほしいが」
「なにか言いましたか?」
「なんでもありません!」
ソラは適当に口笛を吹いてごまかして、それからうーんと考える。
「そうだな。もっと派手にするには……うむ、良いことを思いついたのだ!」
「どんな?」
「それは、我が姉が実演してみせよう」
「えっ、ソラですか?」
――――――――――
「こんばんは、みなさん♪ もうすぐ7巻が発売だから、絶対に買ってね。ソラとの約束だぞ☆ 買ってくれない人は、おしおきしちゃうんだから!」
「あはははははっ、ぶは、ひーっはっはっは!!!」
ルナが指定した通りの台詞、かわいいポーズを決めるソラ。
しかし、それを見たルナは大爆笑した。
「ひーっははは、ほ、本当にやるとは思わなかったのだ! やばいのだ、これはやばいのだ! お腹痛いっ、笑いすぎてねじ切れてしまうのだ!」
「イクシオンブラスト」
「ぎゃあああああっ!!!?」
怒りの超級魔法でルナが吹き飛んだ。
直撃したとか。
受け身を取っていないとか。
そんなことは特に気にしない。
全部、ルナが悪い。
姉をからかう妹は、制裁あるのみだ。
「さて……」
「っ!?」
問答無用で超級魔法を放つソラを見て、リファがビクリと震えた。
気がつけば直立不動になり、ついつい敬礼をしてしまう。
「リファ」
「うん」
「ソラ達で、がんばって宣伝しましょうね?」
「えっと、ルナは……」
「駄妹はいりません」
「了解」
保身のため、ルナを切り捨てるリファだった。
でも、仕方ない。
そうしてしまうくらい、今のソラは恐ろしいのだった。
「変なことはしないで、シンプルに宣伝すればよかったのです。そうに決まっています」
「どうするの?」
「普通に宣伝して、普通にお願いをすればいいのです。いいですか?」
ソラは、宣伝のための台詞をリファに耳打ちした。
ふんふんと頷いて、リファは理解を示す。
ややあって、二人は横に並び、柔らかい表情で口を開く。
「『勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う』書籍7巻」
「11月2日、明日発売だよ」
「「よろしくお願いします」」
ソラとリファは、綺麗にお辞儀をして……
「よ、よろしく……なのだ……がくり」
遠くに吹き飛ばされたルナも、なんとかそう付け足すのだった。




