1175話 焦りは失態へと繋がる
「ぐっ……!?」
グローヴェインは原因不明の不調に焦っていた。
最初は、己がそうしたようにレインも魔道具を使い、妨害してきたと思った。
しかし、そのようなことは確認されていないという。
グローヴェインも魔道具を使っていたから、わかる。
魔道具を使用する際、どれだけの加工をしたとしても、どうしても微弱な魔力が漏れる。
それは独特なもので、魔力に長けた竜族がそれを見逃すことはほぼほぼありえない。
ただ。
今回はそれがない。
レインがなにか細工をしている様子はないし。
観客の仲間達も至って問題ない。
一人。
なにかしら妙な魔力を発しているが……
それは、もしかしたらグローヴェインが用意した魔道具への対策なのかもしれない。
それはそれとして、だ。
「なぜ、体がこうも自由に動かない……!? それに、魔力も……!」
水の中にいるかのように、思っているように体を動かすことができない。
栓をされているかのように魔力をうまく放出することができない。
なんだ?
なにが起きている?
突然の不調。
しかし、それが偶然であるとは思えない。
どう考えても、レインがなにかしているはず。
ただ、その仕組を見抜くことができない。
……とはいえ。
仮にグローヴェインがレインが仕掛けている内容に気付いたとしても、対処のしようはない。
そんな対処方法は教わっていないし、学んでもいないし……
能力を全般的に封じられてしまう。
そんな無茶苦茶に対抗する手段なんて思い浮かぶわけがない。
それに、レインはあくまでも能力を使用しているだけ。
魔道具などに頼った不正ではない。
「くっ……!」
レインは遠距離から連続で魔法を叩き込んできた。
ただの火球。
しかし、妙な不調を感じるグローヴェインは、あれも、もしかしたらなにか仕掛けがあるのではないか? と勘ぐってしまう。
回避。
ただ、体は重い。
自由に動くことができない。
ドガガガッ!!!
全て直撃した。
本来なら人間が使う魔法で傷つくことはない。
上級魔法でも使われたら別だが……
今のは初級魔法。
基礎魔力が高く威力が増していたとしても、たかが知れている。
なにも問題はない。
……問題はないはずなのに。
「ぐぅ、あああああっ!?」
グローヴェインは吹き飛ばされて悲鳴をあげた。
痛い。
痛い。
痛い。
思考がかき乱されて、まともな対応を取ることができない。
それも仕方ない。
グローヴェインは強き竜ではあるが、本格的な戦闘経験は薄い。
魔物を相手に戦うことはある。
時に、無法者の人間と戦うこともある。
しかし、それらは全て格下。
苦戦することはなく、全てが圧勝。
故に、苦戦の味を知らない。
どう対処すればいいかわからないし、ダメージを受けた時、メンタルの弱さが表に出てきてしまう。
「このっ……調子に乗らないでもらおうか!」
ただ、グローヴェインはなんとか体勢を立て直した。
歪んでいるものの、プライドだけは一人前。
それを糧に、どうにかこうにか立ち向かう。
ただ……
そのようなものを頼りに戦えるほどレインは甘い相手ではない。
そのことを、グローヴェインはすぐに痛感するのだった。
◇ お知らせ ◇
新作はじめました。
『最強だけどバズりたくない陰キャダンジョン配信者と、放っておけないアイドル配信者』
二人の女の子のダンジョン配信ものです。
よかったら読んでみてください→https://ncode.syosetu.com/n7272lv/




