1172話 本質的なところは善である。しかし……
グローヴェイン。
最強種の一角の竜族。
レッドドラゴン。
まだ若いながらも多くの同胞に認められていて、彼を讃える声は大きい。
その理由の一つに、グローヴェインの両親が関係している。
グローヴェインの両親は偉大な竜族だった。
一騎当千。
いや。
万に等しい力を持ち、星の数ほどの敵を蹴散らしてきた。
そして、里と同胞を救ってきた。
しかし、二人は武人気質であったため、里の長になることはない。
戦いの方が性に合っていると、自由気ままに空を飛ぶ。
ただ、里が危機に陥れば必ず駆けつけてきた。
仲間のピンチは絶対に見逃すことはない。
故に、長と同等……それ以上の信頼を得ていた。
グローヴェインはそんな二人の息子であり。
両親の力だけではなくて、善性を受け継いでいる。
仲間のために体を張り。
足を取られた者がいれば手を差し出して。
闇を照らす灯りとなって同胞を導いていく。
グローヴェインの本質的なところは善である。
善き竜なのだ。
しかし。
その価値観は大きく歪んでいる。
仲間は絶対に助ける。
ただ、そのためなら他はどうなろうと構わない。
敵は倒す。
ただ、必要とあれば犠牲を許容する。
というか、それを当たり前の前提で動く。
家族を愛する。
ただ、女は家を守るべきという古い価値観を持つ。
それを疑うことはなく、また、こうするべきだ、という自分の価値観を押し付ける。
……などなど。
本質は善であり。
行動力もあり、自身が傷つくことを恐れずに前に出る。
その姿と、彼の血筋に期待する者は多く、多くの同胞に慕われている。
しかし。
もっとも根本的なところは……
大事なものがまるで見えていない、という結論に至る。
こうすることが正しいと信じて。
大して考えることもなく突撃して。
無茶な理論をばらまいていく。
結果、グローヴェインは周囲をひたすらにかき乱すことが多く……
今まで、良い結果を得られたことは少ない。
彼を慕う周囲の竜は、それを許容する。
あの両親の血を引いているのだ。
行動力があって勇気もある。
なによりも強い。
多少の失敗は誰でもする。
それを糧として前に進むことが大事だ。
事実、グローヴェインは足を止めることなく、前に進み続けている。
いつかきっと、素晴らしい竜となるだろう。
里の長になるだけではなくて。
歴代の誰と比べても上をいくような、そんな伝説の存在に。
……なんて。
グローヴェインではなくて。
彼の両親に忠義を捧げている者達の言葉もあり、グローヴェインは己の問題に気づくことができない。
こうすることこそが正しいと信じて。
歪んでいることを知らず、修正せず。
ひたすらに前に突き進んでいく。
それが、グローヴェインという竜だ。
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