1173話 出所は?
「お前は……」
グローヴェインは自分の行いが歪んでいることを自覚していない。
そうすることこそが正しいと思い、迷わずに実行して、突き進んでいく。
……なんて厄介な。
自分の行いに絶対の自信を持っている。
省みる必要はない。
そう思う相手は妙な行動力があって。
それに、絶対的な自信を持つため、決闘で罠を仕掛けてきたように手段を選ばないことが多い。
……こういう相手と敵対するのは初めてだろうか?
「……だから、タニアとの決闘でも罠を用いたと?」
「ふむ、そこまで突き止めているか。さすがだな」
「……本気で褒めているんだろうな」
普通なら嫌味と受け取るところだけど、グローヴェインは本心なのだろう。
こういうところも厄介だ。
戦いづらい、とかそういう問題はないのだけど……
単純に、精神的な疲労が積み重ねられていく。
それと、まったく理解できないという困惑と恐怖も。
「タニア殿は女ではあるが、私は侮るような愚かな真似はしない。彼女は強い。おそらくは、里でニ番目に」
一番はミルアさんだろう。
「なればこそ、全力で挑まなければいけない。力だけを武器に、真正面からぶつかることは愚かだろう? 搦手を用意することは必然であり、常識だ」
「決闘は神聖なものじゃないのか?」
「もちろん、そうだ。だからこそ、この私が負けるわけにはいかない」
これも本気だろう。
欠片も己の行いを疑っていない。
全て正しいことと信じている。
……歪んでいる。
正義感は強い。
義侠心も持ち合わせている。
しかし、見ている方向がまったくの別だ。
俺だけじゃなくて。
一般的な価値観の人と比べても、まったくの明後日の方向を見ていて。
それでいて、それが間違いとまでは言わないものの、他と大きくズレていることにぜんぜん気づいていない。
いつか、ホライズンを力で支配していた貴族の親子と似たところはあるが。
こちらは自身を正義と信じているだけ質が悪い。
「皆、私が勝つことを望んでいる。そして、私が勝つことこそが、もっとも素晴らしい結果となる。なればこそ、手段を選ばない。下手なプライドにこだわり、勝たなければいけない戦いに負けてしまっては意味がないからな」
「妙なところで思い切りがいいというか……」
本当に厄介な性格をしているな。
いったい、どのような育ち方をしたら、こうも歪んでしまうのだろう?
彼を慕う人が多いのなら、誰も諌めなかったのだろうか?
誰も止めなかったのだろうか?
色々と惜しい。
「もう一ついいか?」
「ああ、構わない」
「タニアを小さくしたことは?」
「その方が可愛らしいというのもあるが……」
最悪の理由だった。
「ただ、彼女は力をつけすぎているからね。女性は男を立てるもの……なればこそ、余計な力はなくしてもらわないと困る」
それは……
タニアが自分より強いから。
それが気に入らないから小さくした、ということか?
あるいは。
小さくして力を削がないと安心できなかったのかもしれない。
いつかタニアに逆襲されるのではないか、と警戒していたのかもしれない。
本当に……この男は。
タニアと結婚するべきと言いつつも。
その実、まったくタニアを信用していない。
信用していないからこそ、タニアを小さくして力を奪った。
そうすれば安心できるから。
「……わかった。質問に答えてくれてありがとう」
「なに、構わないとも。たとえ敵対者とはいえ、キミは人間の英雄であり、それなりに誠実な男だ。ならば、私もそれ相応の対応をするべきだろう」
「そうだな。俺も、それ相応の対応をするべきだ」
遠慮も手加減も……
なにもかも全部、気にする必要はない。
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