1166話 いざ戦いの地へ
グローヴェインとの決闘の日が訪れた。
場所は竜族の里から少し離れたところにある平地だ。
この日のために均していたらしく、大きな広場ができていた。
その周囲にたくさんの人。
もとい、人間に変身した竜族達。
人里離れた場所とはいえ、多数の竜族が集まっていたら何事かと警戒されかねない。
下手したら大騒ぎになる。
そうならないように変身して、配慮してくれたのだろう。
その気遣いは嬉しいものの、多数の竜族が集まっているため、その威圧感は相当なもの。
漏れ出る魔力もかなりのもの。
異変を察知して逃げたらしく、周囲から動物などの気配はしない。
「いよいよだね、レイン!」
カナデが、ふんす! という感じで気合を入れつつ、言う。
カナデが戦うわけではないけれど……
でも、自分のことのように意気込み、そこそこ緊張している様子。
他の皆も同じ感じだ。
仲間の問題を自分のことのように考えて、受け止めることができる。
それが、みんなの強いところで、かっこいいところだな、と思った。
「アニキ、あんなキショゴンなんてぶっとばしてやってくださいっす!」
「キショゴンとは……さすがの我も同情する呼び名だな」
「そうですか? ソラは、とても妥当な呼び名と思いますが」
「ま、今のタニアを見ていると否定できんなー」
「小さいの……ダメ?」
「ニーナはええんやでー」
よしよし、とニーナの頭の上に乗る人形バージョンのティナは、頭を撫でた。
「レインは決闘」
「ルリさま、心配ですか?」
「……ん」
「そうですか、信じていらっしゃるのですね」
「ん」
「はい、わたくしも、主さまの勝利を疑っていません」
「……カナデよ、コハネはどうやってルリの言葉を理解しているのだ?」
「……魔王にわからないことは私にもわからないよ」
みんな、ほどほどに落ち着いていた。
そんなみんなを見ていたからなのか、俺も落ち着いてきた。
タニアの未来をかけた決闘。
絶対に負けることは許されないのだけど……
気負いすぎてしまう、とか。
意気込みすぎて空回りしてしまう、とか。
そんなことはなくて、自然体でいることができた。
一人じゃない、っていうのが大きいし……
なによりも好きな人のために、という理由が一番強い。
「……」
顔が熱くなる。
「アニキ、なんか顔が赤いっすね?」
「察してやれ」
「む? エーデルワイスさまは、どういうことかわかるっすか?」
「わかるが、まあ、言葉にはできないな」
「えー」
「察してやれ」
エーデルワイス、ありがとう。
あと、できれば察しても、それを口にしないでもらえると嬉しい。
「「「オオオオオォ!!!」」」
ふと、歓声が湧き上がる。
そちらを見ると、グローヴェインの登場だ。
グローヴェインも配慮してくれているらしく、人の姿をとっている。
竜族の多くの者は彼に期待しているらしく、大きな歓声を送っていた。
グローヴェインはそれらに応えるように手を振っている。
「……ちっ」
ミルアさんが舌打ちした。
嫌悪に表情を歪ませていて。
わりと本気の舌打ちだ。
あのミルアさんにここまで嫌われるなんて……
グローヴェインは、実は腹黒いとかそういう感じなのだろうか?
言葉をまともに交わしたのはこの前が初めてなので、彼の性格を詳しくは知らない。
これから決闘を行う相手。
それと……もしかしたら、それだけでは終わらないかもしれない相手。
できる限りのことを知っておくべきだろう。
「ミルアさんがそんなに嫌う相手がいるなんて珍しいですね」
「あいつは別。すごくすごくすごーーーく嫌な奴なんだよ!」
吐き捨てるように言うミルアさんは、本気の嫌悪感があった。
◇ お知らせ ◇
新作はじめました。
『最強だけどバズりたくない陰キャダンジョン配信者と、放っておけないアイドル配信者』
二人の女の子のダンジョン配信ものです。
よかったら読んでみてください→https://ncode.syosetu.com/n7272lv/




