1161話 塩を1t持ってきて!
「それで……」
俺との挨拶。
というか、宣戦布告?
それが終わり、ミルアさんの方を見る。
ミルアさんになにかしら話をするのが本題だったようだけど……
「むがーーー!!!」
「ちょ!?」
二発目のブレス。
というか、俺もいるんですけど!?
慌てて避けた。
一方のグローヴェインは……
「ふむ……ミルア殿は、まだ私のことを認めてくださらないのですか?」
平然な顔をして避けていた。
いったい、どういう反射神経をしているんだ?
あれをあのタイミングで避けるとか、ありえないと思うのだけど……
「当たり前だよ! 私の可愛い可愛い可愛いタニアちゃんを! 可愛いことだから三回言った!」
ちょっと言葉の意味がよくわからない。
「そんなタニアちゃんを、どこの誰かわからない相手に渡せるわけないでしょ!」
「私は同胞なのですが……」
「だーめ!!!」
いーっ、と子供のようにあかんべーをするミルアさん。
「私は、レインくん以外の人を認めるつもりはないよ!」
「むぅ……そこまでですか」
「さあ、帰って! これ以上、話すことなんてなにもないよ!」
「……わかりました。今は帰りましょう。ただ、私は絶対に諦めません」
グローヴェインは優雅に一礼して、外に出ていった。
がるるる、と興奮するミルアさん。
一方で俺……
というか、タニアを除いた俺達はぽかーんとしていた。
今までの話を聞く限り、タニアに迫る男……グローヴェインは、ろくでもない趣味を持ち、卑劣な方法でタニアを手に入れようとする悪漢という認識だったのだけど。
いざ実際に顔を合わせてみると、普通に紳士だった。
良い人を装っている。
猫をかぶっている。
もちろん、そういった可能性はあるのだけど……
ただ、俺は、彼は嘘を吐いていないように感じた。
まあ、俺に人を見る目がないだけかもしれないけど。
「なあ、タニア……」
「……ええ、わかっているわ。レインやみんなの戸惑いも」
「なら……そういうことなのか?」
「そのあたりのことも、後で説明しようと思っていたんだけど……先にこんなことになっちゃったわね。迂闊だったわ。同じ里にいるんだから、いつでもあいつが来る可能性を考えておくべきだった」
「ふむ?」
ミルアさんと違って、タニアはわりと落ち着いていた。
けっこうな怒りを抱えていると思っていたんだけど……
「……あぁ、そうか」
タニアが苦い表情でミルアさんを見ているのに気づいて、今、そこまで怒っていない理由を察した。
先にミルアさんが激怒して、ブレスを放つほどに暴れて。
そこまで怒っているところを見て、逆に冷静になってしまったのだろう。
人の行いを見て我が身を直せ、っていうわけじゃないけど……
そんな感じで、今は怒っても仕方ないと感じたのかもしれない。
「とりあえず……中断した作戦会議の続き、かな?」
「そうね。みんなもそれでいい?」
タニアの問いかけに、カナデ達はこくこくと頷いた。
「ただ……」
タニアがとても苦い表情に。
「その前に、やらないといけないことがあるわ」
「それは……?」
「……母さんを落ち着かせないと」
「タニアちゃん! 塩! 塩を1t持ってきて! 蒔いて!」
フシャー! と。
子猫が威嚇するような感じでミルアさんが吠える。
迫力はあるのだけど、でも、外見の可愛らしさもあり、いまいち締まらないのだった。




