1159話 グローヴェイン
力を大幅に減衰させて、精神にも干渉する。
そのような魔道具を俺は知っていた。
かつて、王都でアリオスと戦った時……
囚われたカナデ達が魔力錠をかけられて力を制限されていた。
最強種相手にも通用する魔道具がある。
なら、同じようにタニアの力を縛り付けた魔道具が存在してもおかしくないだろう。
もっとも、これは仮定の話。
実在するとしても、対策はわからないし、なぜ相手がそのような魔道具を持っていたのか? という謎もわからない。
「なんや、わからないことだらけやな」
「うー……自分、考えすぎて頭が痛くなってきたっす……ぼんっ、て爆発しそうっす」
「爆発……? 水をかける?」
「ルリ、やめてほしいっす……」
「氷……あるよ?」
「ニーナもやめてほしいっす……」
ライハが悩むのも当然だ。
俺も悩んでいる。
タニアの望まない婚約の解消をかけて、今度は俺が決闘をすることになった。
絶対に負けるわけにはいかないのだけど……
このままだと、タニアと同じ結末を辿る可能性がある。
まだ時間はあるから、それまでに敵の切り札を突き止めておきたい。
「ミルアさんは、なにか心当たりは……」
「むっ!?」
問いかけようとした時、ミルアさんが家の入り口の方を睨みつけた。
敵意たっぷり。
しかめっ面。
こんなミルアさん、なかなか見ることができない。
その理由はすぐにわかった。
小さな地響き。
それと共に、見事な赤い鱗を持つレッドドラゴンがやってきた。
「失礼する」
外見からはあまり想像できない透き通るような声が響いた。
「ミルア殿はいらっしゃるだろうか? 私は……」
「むがーーー!!!」
「ミルアさん!?」
突然の来客。
それに対して、ミルアさんはいきなりドラゴンブレスを放つという凶行に出た。
乱心した!?
「むぅ……今のはさすがに驚きました」
ブレスの衝撃による粉塵が晴れた後、無傷のレッドドラゴンが見えた。
うまいことブレスを避けたらしい。
……どうやって避けたのだろう?
今のはタイミングなど色々と際どいと思っていたが。
「ちっ、生きていたか……」
ミルアさん、怖い舌打ちと怖い台詞を口にしないでください。
ちょっと人格変わっていますよ?
というか……
ミルアさんがここまで強い敵意を示すなんて、決まりかな?
たぶん、このレッドドラゴンが……
「おや? 人間の客人もいたのですね。なら……」
レッドドラゴンが人の姿をとる。
見た目は二十代半ば。
タニアやミルアさんと同じ、燃えるような赤髪。
細身ながらもしっかりと鍛えられているのが服の上からでもわかる。
「はじめまして、人間よ。私は竜族のグローヴェイン。以後、お見知りおきを」
「あ……はい」
おかしいな?
タニアの話やミルアさんの態度を見る限り、この男が……
「はじめまして。俺は、レイン・シュラウドっていいます」
「……なるほど。貴殿があの……」
俺の名前を聞いた瞬間。
グローヴェインの目が鋭くなった。




