20話 ずっと、あなたを見ている
「久しぶりだな、ランベイルよ」
「やはり、貴様か。オーウェン」
格子越しに睨み合う、二人。
「こうして話しをする事も、あの時以来だな…」
「お前はまだ、あの時の事を…」
過去を思い、目線を下げる、ランベイル。
「忘れるものか!貴様が”我子を殺した”あの瞬間は、昨日の事のように思い出す」
「申し訳なかった…」
下を向くランベイルは、怒るオーウェンから顔を背ける。
「全ての責任が、お前にある訳ではない。あれは、息子も自業自得だったのだ」
「それでも、申し訳ない」
格子を力強く握り、オーウェンに真剣な眼差しを向ける、ランベイル。
「今更、罪は変えられない。そこで、ゆっくりと死を待て…」
格子の隙間から、離れて行くオーウェンを、見つめる。
「・・・悪いが、今、死ぬわけにはいかんのだ!」
格子窓の外から伸びた影が、ランベイルに忍び寄る。
王宮から屋敷に戻ったオーウェンは、自室に入り、散り積もった書類を吹き飛ばす。
「どうなっている!作戦は、成功したのではなかったのか」
「それが…魔獣は出せたのですが、偶々、王の元に兵士が居た様で…」
「・・・まあいい。当初の目的は、達成したのだ」
散らばった書類をまとめ、頭を冷やす、オーウェン。
「証拠は、消しただろうな?」
「はい。魔術師は、全員、消しました。ただ…」
「ただ?」
言葉に詰まった使用人を睨む。
「いえ!何でもございません」
「そうか…」
なぜ、上手くいかない!
ランベイルを捕まえるところまでは、上手くいったのに、王の元に、兵士が居ただと?
誰かが、私の邪魔をしていることは、間違いない。
「誰だ?」
まさか、あのお方が!
他に、絵画のことを、知っている者はいない。
使用人も、何か隠している。
念の為、捕まった義息子を、助け出しておくか・・・
窓枠に差し込む木々の影が、林の中へと消える。
ローブで隠した顔を、見張りの兵士に晒す、オーウェン。
「私だ。中へ通せ」
「は!オーウェン様ですね。話は、聞いております」
「黙れ!大きな声で、私の名前を呼ぶな」
何なんだ、この兵士は!
本当に、警備騎士長の部下か?
「お前は…誰の命で動いている?」
「”上”から、オーウェン様に協力するようにと、言われております」
「上から…そうか」
この牢を、警備しているのだから、上で間違いはないのだが…
兵士に疑念を懐くオーウェンは、案内されるまま進み、義息子の牢の前に立つ。
「おい、私だ。義息子、こっちを見ろ!」
後ろを向く義息子に、小声で呼び掛ける。
「おい、おい!聞こえいているのなら、返事をしろ!」
苛立ちを含んだオーウェンの大声が、建物に響き渡る。
「も~うるさいな~。そんな大声ださなくても、聞こえてるよ」
義息子の影から、耳を押さえたヘルが顔を出した。




