01話 彼は悪人です
俺の名前は、フール・アルバート。
代々、王国の仕えてきた騎士の家系に産まれた。
もちろん俺も、騎士として、モンスター討伐や町の門番などの雑用をしていた。
5年前までは…
平和ぼけした王国で、貴族による反乱が起きた。
これまで貴族の駒でしかなかった騎士が、反乱を鎮めたことで王国での立場が一変する。
父親は出世し、俺は王宮騎士の職を得た。
廊下を歩く兵士。
最高だ!
広く美しい庭園に、高価な建物。
こんな所で生活できるなんて、思ってもいなかったが…
王族にでもなった気分だな。
我が物顔で歩いていたアルバートの視界の端には、物陰に隠れた王子が映る。
女は勝手に寄って来るし、知らない奴も媚び諂ってくるようになった。
税金泥棒と揶揄されていた、あの時とは違う。
本当、反乱を起こした貴族に感謝だな!
上を見上げて歩くアルバートは、前から走って来た人物と肩がぶつかる。
「痛てぇな!おい」
「しゅ、すみません。すみません」
なんだ。侍女か…
少し遊んでやるか~
「おいおい、どうすんだよ。俺は、騎士だぞ。大事な体を怪我して剣が握れなくなったらどうするんだ!」
「う~ん。すみません」
「そのぐらいで、やめておけ」
「あぁあ?」
「侍女にぶつかり、騎士が怪我をしたとは、王様に報告出来ないだろ」
「・・・ちっ」
貴族の分際で邪魔しやがって…
騎士様に逆らったらどうなるか、思い知らせてやる!
人気の無い路地に入る。
「こんな所に…呼び出し?」
「おい」
「はっうぅ!」
鳩尾を拳で殴る。
はは(笑)全然、筋肉の感触が無いよ…こいつ、弱!
更に、膝を二回打ち付け、足の裏で体を蹴り飛ばす。
壁にぶつかり倒れたところを、踏みつける。
「雑魚が!二度と、しゃしゃり出てくんな」
地面に唾を吐き、その場を後にする。
あーすっきりした~弱者をいたぶるのは楽しいな
木陰から覗き見る、王子の影。
別日~警備の仕事で槍を持ち立たされる。
あ~暇だ…こんな昼間に、怪しい奴なんて来ないだろ
「おい。おまえ、俺の分も見張っとけ!」
「え!は、はい」
人目を避け、こっそりと、その場から抜け出す。
見張りなんて、一人居れば十分だろ
このまま、街に…は流石に無理か~さぼっているのばれたら、やばいしな~
一人の女性が目の前から歩いてくる。
あれは…王女じゃねえか!丁度いい、少しお近づきになっておくか
「あっこれは、これは、王女様。本日も、大変お綺麗で…」
「きもい!黙れ」
「・・・」
は?きもい⁇この俺様のどこが⁈
王女は、そのまま何処かへと行ってしまった。
「あ。おい!」
「ちっ。覚えてろ…」
王女だからって調子に乗りやがって!絶対に許さないぜ、俺は…
悪巧みの笑みを、遠くから見張る王子。
王宮に併設された教会の中。
教会、初めて入った…綺麗な窓ガラス、高値で売れそうだな~
違う、違う、本棚!今は、本棚を探す。
え~と、あ!あった…
備え付けられた本棚に登り、上部の金具に紐を引っ掛ける。
後は、本棚を傾けて…
少し紐が長かったが…まあ、良いか!
殺人装置、傾いた本棚の完成。
聞いた情報では、王女は毎日、教会で本を読んでいるらしい。
だから、俺は思いついた!本を探しに来たところを狙う。
「この本棚の前を通ったところで、紐を切れば…」
「だめだよ。そんなことしちゃ」




