02話 転生しました
僕の名前は、ヘルヴィルク・リッシュ。(5才+31才)
一国の末の王子です。
先日、派手に転び、頭を打った衝撃によって、前世の記憶を取り戻しました。
前世では、一般人だったのですが…
まさか、転生したら王族になっているとは…
5歳児の知識では、この世界について知らないことばかりです。
唯一得た知識は、”この世界の人間は知能が低い”という事。
『知能が低いですね』なんて、悪口でしかないが、5年生きてきて得た”事実”なのだ。
そんな世界でも、悪人は存在する。
僕は、王族として国民を守るため、知識を身につけなければならない。
ここからは、この世界を学ぶ僕の日常と苦労を、お見せしよう。
「ヘル様!ヘル様!朝ですよ。起きてください」
「…おはよう。ティーア」
おぼつかない足取りで立ち上がると、綺麗に折り畳まれた服を手に取り、着替え始める。
「ヘル様…まだ5歳だというのに、もう一人でお着替えできるなんて”天才”です!」
ご覧の通り。服を着ただけで、この扱いだ。
「ティーア、今日の予定は?」
「はい。今日は、ヴィペラ先生と言語学の・・・」
言語学か…5歳児に教える内容は、もう覚えた。
文字も読むことが出来る僕には、無駄な時間だな~
よし。さぼっちゃおう!
「ヘル様?聞いておりますか」
「ティーア。お菓子が食べたい」
「はい?」
「お菓子、食べたい。お菓子、食べたい」
「ここに、朝食が…」
「…食べたいな~」
「わかりました!このティーアが、直ぐにご用意します」
急ぎ、部屋を出て、厨房に向かうティーア。
ふーちょろい。天才5歳児の手にかかれば、簡単に騙せてしまう。
今のうちに、書庫へ逃げよう…
部屋を出て、鼻歌を響かせながら、廊下を歩く。
「スタスタ…ドタドタ…」
足音!誰か来る。隠れないと…
辺りを探し、額縁の外れた王の肖像画を見つける。
「あった!」
肖像画の後ろに隠れる。
右から、細見で兵士の顔とは思えない、兵士の男が歩いてきた。
左からは、お菓子を持った、世話係の侍女が走ってくる。
これは…ぶつかって恋に落ちるパターン!
「痛てぇな!おい」
「しゅ、すみません。すみません」
そんな事には、ならないか…
人を見た目で判断してはいけないが、あの兵士は、顔と性格が一致していた。
「また、誰か来た?」
「やめておけ」
あれは…王の忠臣、オスラ叔父さんの息子だったけ?
「・・・ちっ」
あ、舌打ちして逃げた…態度の悪い兵士だな~
「あ、ありがとうございます」
「いえ。お怪我はありませんか」
「はい。あ、ヘル様を見ませんでしたか」
やばい!抜け出したのがバレている?
ヘルは、肖像画から飛び出した顔を、慌てて隠す。
「ヘル様?いえ、見ていません」
「そうですか…ありがとうございます」
二人が消え、静まり返った廊下。
「ふー。気づかれなかったみたい…では!書庫、書庫へ、ふふふ」
肖像画の後ろから出たヘルヴィルクは、鼻歌と共に書庫へ向かう。
王の肖像画には、小さな子供の手形が付いていた。




