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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第四章】フェンローゼ家の生活
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第96話 ファース貴族の食卓

 私も泣き止んで、段々と落ち着いてきて……恥ずかしくなってきてしまった。顔を真っ赤にしていると、おじいちゃんんが頭に優しく手を載せてくれた。ガイアスおじさんがそれを見て微笑み、「さて、そろそろ夕食にしましょう、お父さん」と言う。


 私たちは頷いて礼拝堂から出て小道を歩き屋敷に向かう。月と、星が綺麗だった。


 屋敷の入り口でそのまま立ったまま待っていたらしい執事長のホルスさんと、他の執事さん、メイドさん達がいて、「食事の用意はもうできているかい?」とガイアスさんが尋ね、「はい、できております。ただいますぐご準備します」とホルスさんが一礼し、メイドの一人に厨房などへ伝えに行かせる。


 私たちはホルスさんに先導されて歩いて食堂まで向かう。白いテーブルクロスのされた長テーブルに椅子が並んでおり、まだ見たことがなかった料理がたくさん並んでいる。


 やっぱりそうなのだが、食材は、テーブルのフルーツ皿にあるチコレットはやっぱりりんごだろうし、その横にはバナナとしか見えない、高級な果物として扱われている「レットの房」がある。どうみてもバナナだと思う。地球と生態系がやっぱり似ている。


 生態系は魔獣などの存在以外は、地球と極端に違うようにも見えないのだが……、とかつい考えてしまうのは、食事のたびに「これは何の肉だろう」とか「これは何の野菜だろう」とか「これは何の魚だろう」とか、つい考えてしまうからだ。やっぱり食べ物についてはつい気なってしまう。


 さておき並んでいる料理の前に……私はどこに座ろう、と思っていて、王女であるレメディが長テーブルの中央の窓際の席に座り、その次にフェンローゼ家の当主であるオスティスおじいちゃんがその正面に座る。


 その隣に右側にガイアスおじさんとルーファおばさんが座る。その横にフォスティおにいちゃんが座り、もうひとりの9歳くらいのいとこのお兄ちゃんが、フォスティおにいちゃんの隣に座った。


 その後ろをさらに豪快そうな性格をしているように見える、おじいちゃん似の顔をしていた銀髪の30代後半くらいの青年である叔父さんが、後ろに奥さんらしき少しキツい視線をした黒髪の女性と、私と同じくらいの年代の黒髪の少女が、食堂の入り口に立って一礼をし言った。


「レメディアーラ第二王女殿下、ご機嫌麗しゅうございます。フェンローゼ家第二子、マドールアーニにございます。遅ればせながら本日は同席させて頂きます」


 「気にせずに良い。新たな家族との出会いではないか。まずは挨拶をその子にするがよい」とレメディは微笑む。


 そしてマドールと名乗った叔父さんが、私とブランの方を見てにこっとする。


「私はマードル。よろしくな。こっちは妻のオルフェア、こっちは我が娘のロデリーラだ。いや、シェラサーナに本当によく似ている!」と私を中腰になってまじまじと見て微笑む。


「はじめまして、マードルおじさん。わたしは、レニーナ・フィングル、5さいです」と答え、「母はシェラとなのっていて、じゅうみんとうろくもシェラでしたが……?」と目をおじいちゃんに向けると、「シェラは家族での愛称だ。恐らくは愛称に合わせて改名したのだろう」とだけ答える。


 そして次にヨスタナ師が微笑みながら、「私はマドール。レニーナの家庭教師をしてくれるそうだね」というと、ヨスタナ師は一礼をして言った。


「私はリンドル村のホート幼稚舎で教師をしておりました、レニーナちゃんの家庭教師のヨスタナ・フェブリカをさせて頂きます」


「そして……その、リィズさん、だったな。レニーナとブランと親しくしてくれているようだ、ありがとう」と微笑む。リィズは相変わらず見事な一礼をして微笑んで言った。


「私はリィズ・ブロンシュテインと申します。リンドル村でフィングル一家と仲良くさせて頂いていました。よろしく御願いします」と答えた。


「マードル。まずは席に座れ」とおじいちゃんがいい、私とヨスタナ師はどこに座ればいいか分からずにいて、ブランが、きょろきょろすると、レメディが言った。


「そうじゃな、2人はわらわの両隣に座れば良いじゃろう。同じくらいの歳じゃし、それにオスティスの前に座った方が、初めての家庭の団らんがしやすいじゃろう」と微笑む。


「し、しかし、王族のかたの隣など……!」とおじいちゃんが言うと、レメディは「良い。早く座るがいい、せっかくの食事が冷めてしまう」という。


 おじいちゃんが立ち上がり、レメディに一礼して、「……それではお言葉に甘えまして。レニーナ、ブラン、そうしなさい」と厳めしい顔で言う。


 私とブランは、王女のそれぞれ、私が左側、ブランは右側に座る。「フェブリカ先生とリィズさんはこちらへ」と、ガイアスおじさんが招き、ガイアスおじさんの家族の、一番横の席に座った。


「まずはお互いの紹介をしろ」とおじいちゃんが一言言って、その言葉を続けるようにガイアスおじさんが言った。


「それでは……当家の新たな一員となる、レニーナ、ブラン。これからよろしく。私はルピシエ州の州総監をしているガイアスだ。よろしく」と微笑む。そしてその隣の優しい顔立ちをした、少しふっくらとした義叔母さんが、「私はルーファ。ガイアスの妻よ。二人ともよろしくね?」と微笑んでくれる。


「僕はフォスティール、二人には危ない所を助けてもらってね、ありがとう」と微笑み、9歳くらいの男の子が、「お、オレは、ウールガード……」とぼそっと顔を赤くして言う。


「それじゃ私たちの番だな」とマードルおじさんがいい、「私はマードルアーニ。州軍の長をしている。よろしくな」といい、隣の黒髪の最初は少し視線がきつめに見えた細身の女性が、「私はオルフェアといいます。よろしく御願いしますね、レニーナちゃん、ブランちゃん」と微笑むと、とても愛嬌ある顔になった。


「……ロデリーラです」と私と同い年くらいに見える黒髪の少女が恥ずかしそうに言った。


「自己紹介は終わったな?」とおじいちゃんがいい、「では神に祈りを」と言う。


 どの神に祈るのだろう、とつい考えてしまったが、すぐ答えが明らかになった。


「12神柱、そしてそれを統べし主神フェンリィズ様、今日の恵みに感謝します」


 なるほど……と思っていると、皆が胸に手を当て目を瞑り祈っているので慌てて私も真似をした。


 そう思っていると、【ふふん、私もたいしたものでしょう?】とリィズの声が心に聞こえ、【しかし、リンドル村ではこういった祈り方はしていなかったが】と思っていると、【ファース貴族ではこういう感じらしいわよ】と言う。


「食事にしよう」と声が聞こえ、慌てて目を開けると皆が既に目を開けていた。


「えっと、あたし、その身体が……植物でできているから、どうすれば……?」と救いを求めるようにこっちを見て、次におじいちゃんを見る。


 すると、おじいちゃんが「家族として居るだけで良いのだ」とだけ言うと、ブランがぱーっと笑顔になり、「おじいちゃん、ありがとう! だいすき!」と言うと、厳めしい形相をしていたのが、急に咳き込んだ。


 私は思わず身体の方がまさか元々悪いのだろうか、と心配していると、【ふふ、病気ではないから安心しなさいよ?】とリィズがいう。病気でないならよかった。何故かヨスタナ師は苦笑している。他の家族は皆、驚いたような顔をし微笑んでいる。


 オードブルだと思われるが、サラダとスープが並んでいて、サラダもスープも、サラダの大皿とスープの大皿から、それぞれ小皿に取り分けるための箸とお玉で分けて食べるのがファース王国の家族の食事だ。その辺は貴族っぽくなくて何だか好感が持てた。


 王女のような、来客の場合はどうも予めどちらにするか尋ねた上で、個別の皿にするか、取り皿かにするかによるらしいのだが、王女は取り皿での方を選んだらしい。身分の高い者からそれぞれ取り皿から取るらしいのだが……その辺は貴族っぽいのだろう。


 皆が取り皿に取り終わって、ようやく食べられるというのは、まあ身分制度というか貴族の食卓的なのだろう。案外食べるまで時間がかかるのに驚いてしまった。




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