パンイチ2人とクエスト
金稼がねば。金稼がねば。金稼がねば。
俺はそんなことを思いつつ、パンイチ2号と共に、クエストを受け前回とは違う森に来ていた。
時間帯は夕方だ。この世界の朝に転生され、午前中と正午らへんでビッグベア戦。その後気絶から覚めてギルドに向かって、そこで多少のご飯を食べて今は夕方から夜にかけとの時間と、1日で色々やりすぎじゃないですか?
ちなみに先ほどギルドを出た時に、彼の袴は売られた。
可哀想だなと思いつつ、俺はギルドでエナに聞いたことを思い出す。
Z時間前 ギルド
俺の魔力の件で一通り笑い終わった、エナに俺はプルプルしながら聞いた。
「お、おい。もう笑うのはよせよ。それよりクエスト報酬の金をくれよ。早く服が欲しいんだよ」
俺の質問に、エナは涙を浮かべて笑っているのを、深呼吸を何度もしてから止めて言う。
「え? そんなのないわよ。報酬の7割は借金返済に。残りは今月の家賃と食費に費やすもの」
「「え??? 借金???」」
俺と2号は同時にそう聞き返す。そんな事実は初めて知った。
「あ、そういえば伝えてなかったわね。私借金が『とある事情』であるのよ。ごめんなさいね」
「「……………………」」
沈黙がこの空間を制覇する。
「お前……借金があったのか?」
2号が恐る恐る聞く。
「えぇ、家庭の環境でね。だからアンタたちには渡せないの」
なんてこった。ぺたんこのやつ家庭の環境で、借金があるのかよ……。でもさ、服くらい買えるお金はあるよな?
俺はそう思い聞く。
「でもさ、ぺたんこ。家庭ならこちらから言うことはないんだけど、服くらい買うお金はあるよな?」
するとエナは一瞬顔をピキピキさせるがそれを抑え、モジモジし答える。
「えー、アナタたちのその格好カッコいいのになぁー。ホント惚れそうー。服なんて着ちゃったら、エナ困っちゃう(ハート)」
「「うっわ……」」
俺と2号は同時に、エナを引き気味に見る。するとエナは、満面の笑みで、
「あーでもどうしても服着たいなら、2人で稼いでくればぁ? 私はちょっとやんなきゃいけない事あるから(ハート)」
そんなことを言ってきた。すると、ギルドの女性たちがエナを呼ぶ。
「エナちゃん! そろそろ女子会やるよ!」
「早く早く!」
え? 女子会? 聞き間違いか?
「今日はエナがホストなんだから!」
「主役! 早くきて」
「「お前! 借金は?!!!!」」
俺と2号は叫んだ。
現在 違う森
「あのクソ貧乳め。帰ったら潰してやる」
「やめとけ。確かにぺたんこは憎いが、潰してしまったら、男性の胸の大きさと、変わらないことになるぞ」
「だがな、あの悪魔は俺の目の前で袴を売ったんだぞ! 今日初めて会ったばっかりなのに」
「また買えばいいさ。でもエナの笑顔見たら、お前も憎むに憎めないだろ」
「確かにあの笑顔は可愛かったが、残念ながら俺には心に決めた女がいるんでな」
「まぁ過去を掘っていても仕方ない」
「ああ、今は」
「今は」
「「この太ったケンタウロスをどうにかしないとな」」
俺と2号の目の前にいるのは、ファンタジーでお馴染みの、ケンタウロスだ。
しかしその姿は俺が想像していた、下半身は速そうな馬、上は剛力の人間というイメージとは真逆のものであった。
下は大根のように太く、それでいて短い足。上は一言で言うとデブであった。
「「……………」」
俺と2号は失望していた。
「おい、ケンタウロスって本当にこれか?」
少し間があり、2号が答える。
「ああ、下は獣、上は人間だから間違い無いだろうな。しかし……」
その後に続く言葉は聞かなくてもわかった。なにせ目の前にいるケンタウロスの格好はそりゃ酷いものだ。ちなみに今は、俺たちの方を向いて鼻をほじり、汗を流している。
俺たちが失望した目でケンタウロスを見てると、彼? は話しかけきた。
「ぬぬぬぬ、おまえらだれだ? ふーふー」
一応上は人だから話せるらしい。
「……お前こそ誰だよ。俺の中でのケンタウロスのイメージを返せ」
俺が言うとそのモンスターはまた話す。
「ぬー? おでがだれだって? そりゃこの地帯で1番足が速いケンタウロスだ。ふーふー」
「「嘘つけ!!!!」」
「ぬ? おでのこと疑ってるのか? ふー」
少し話すたびに大きく息をする。デブタウロス
コイツどう見ても嘘ついてるよな。この格好と性格じゃ……友達いなさそうだな。
俺がそんなことを思っていると、自称この地帯で1番足が速いケンタウロスは、ほじっていた指を止め、なんだか汚い丸い物体を俺の方に向ける。
そして。
砲ッッ!!!! そんな轟音が鳴ると、俺の右側の頬から血が出た。後方からは、バキバキバキと木が倒れるような音が聞こえる。
「………………え…………え?」
何が起こったのか分からなかった。
「野郎が言っていたことはマジかもな。今見えなかったか? あのケンタウロス、鼻くそを指で押し飛ばして、あの速度と威力を出しやがった……」
分かりやすく説明してくれた2号を俺は見る。
「1号は無職らしいじゃねーか。ここは俺がやる。てめーは、その眼とやらでアイツでも見てろ」
そんなカッコのいいことを言う、パンイチ下駄刀使いの変態の指示に俺は従う。
「……頼んだぞ」
俺は恐る恐る後退りしながら、ここから距離を取ろうとする。
その時、こんな声が聞こえた。
「ぬー? 逃がさないぞぉ! ふーふー」
刹那、5メートルあったその距離を一瞬で詰めてきたケンタウロスが目の前に現れた。
ゾワッとその太った顔と汗で、俺は鳥肌が立った。
ケンタウロスの太りびしょびしょに濡れた腕が俺に振り下ろされた時、
「師走」
と言葉で俺の目の前に2号が刀を横に構えて現れた。
打ッッ!!! 刀と拳が交差して音が鳴る。
「なっ……おまえこの一瞬でどうやっt」
「質問は後だ。ささっとここから離れろ!」
俺はそう強く言われ、すぐにその場から逃げ出す。
こんなヒーローから遠い主人公がいたでしょうか? いやそんなことより、あいつ師走という日本特有の言葉を言ったけど、どういうことだ……。
そんなことを考えている間にも、戦闘は激しさを増す。
動きが早すぎて何が行われているかが分からない。たまに見える、刀と拳が交差するその数秒ほどを見るのが精一杯だ。
くそ、こんな状況で眼でケンタウロスのことなんて見れるのか?!!! だがアイツも戦ってくれてるし、やるしかない!
俺は目を一度閉じ、念じながらその眼開く。
すると黄色く見えるその景色の中に文字が浮かび上がってきた。
ついてるな。この動きの激しい戦闘で、一発でこの眼を使えるとは。
俺はその文字を口にして読む。
「えーっと、《好きなもの:アイドル 嫌いなもの:エナ》だって?」
俺は大きな声で叫ぶ。
「お前かよ!!!!!!!」




