表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双眸妖異譚  作者: 夜澄レイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/4

探偵事務所

畳の匂い…僕の好きな匂いだ…

この匂いは僕を安心させてくれる。大好きなじいちゃんのところで嗅いだ香り。だが自分で移動した記憶はないけど……


「起きた〜?」「うわっ!?」瞼を開けると目の前に顔立ちが綺麗な男性の顔があった。「雪起きた!起きたよ〜!」足早に部屋の外へ掛けていく、辺りを見るとそこはじいちゃんの部屋などでは無く掛け軸などがある和室であった。でも何処か懐かしいような気もする。


「起きたか」扉にもたれかかりこちらを覗く黒髪の男性とその男性の肩に顔を乗っける先程の男性。背が高い…こわい…「怖がってんじゃん〜〜雪の顔が怖いから〜」「私がじゃなく、詠がだろ」「まあいい、自己紹介もせず御客人の目の前で喧嘩をするのも失礼だ」


「改めまして私の名前は 神楽雪(かぐらせつ) 此処妖異(ようい)探偵事務所の社長の様な者だ、宜しく頼む」「いつも通り堅苦しい挨拶だね〜〜俺の名前は(よみ)長い名前もあるけど皆からはこう呼ばれてるから宜しくね」手を振りながら和かに話してくれる詠さんとドスンと構えて振る舞うかっこいい雪さん…妖異探偵事務所ということは助けてくれたのかな…


「は、初めまして!僕の名前は 坂口(さかぐち) 伊織(いおり)です…助けていただき有難う御座います…!」「君のお爺さんには助けて貰った恩があるから気にしなくてもいい」「お爺さん…あっ!!じいちゃんは!じいちゃんは大丈夫なんですか!?」ベットから身を乗り出す。生きていないのかもしれない…僕の所為で僕が助けられなかった所為で…シーツをギュッと掴む。目元が熱くなり涙が零れる。二人は何も言わずこちらに近付きギュッと手を握り返した。


 何となく察してしまった。言いたい事はあるけど傷付けたくない顔。こんな時に察し良くなくていいのに。大切な人を自分の所為で失うのは二度目…母さんもじいちゃんも僕が…喉が痛い。叫んで泣いて頭の中がぐちゃぐちゃでなんで僕が生きてるのか分からなくなって、僕が生きるくらいなら皆が生きてる方が良かった。なんで僕が…「なんで僕がなんて思っちゃダメだよ」目元の涙を指で拭いながら詠さんはそう言った。真っ直ぐ僕の目を見て。


「昔にも似たような事があったけど、その人達は伊織くんの事が好きだったんだと思うから、命を賭ける程に君に生きてて欲しかったからその覚悟を無駄にしないであげてね」「今は辛いと思う、けど辛さの上に君は立たなきゃいけない君は強くなるべきだから」この人は目をちゃんと見て話してくれる。僕に誰かを重ねて話すように。その言葉が重くてでも苦しい重さではなくて。


雪さんは頭に手を置きながら撫でてくれた。優しい手で祖父のように安心する手だった。「私はその弱さは悪い事では無いと思う。けれどその弱さに浸り続けるのは苦しいだけだぞ」二人の言葉が重く伸し掛る。でも何処か嬉しかった。弱い部分も含めて認められたような気がしたから。欲しかった言葉をくれたから。


暫く泣き二人は「ま、泣き止んだら外おいで」「嗚呼、隣の部屋に私達は居るから待っているぞ」そう言って部屋から出て行った。苦しく吐きそうだった気持ちを独りで落ち着けるためには暫く時間を要した。


「雪があんな事言うなんてね」「昔の自分に見えたからだ、お前こそ過去の俺に言ってた様なもんだろ」隣の部屋に向かい、珈琲を飲みながら会話をする。「まあね〜」と笑いながら浮かぶ彼奴は何も変わってないような気がして俺の胸も苦しくなるのが分かった。「なあ、詠」「ん?なぁに」昔と何も変わらない姿でこっちを和かに見る。憎くて、でも好きでしょうがない俺が憎い。


「いや、なんでもない」「いやいや何が言いたいことある顔じゃん!言いなよ〜」ギュッと後ろから抱き着きにくる。「ただ昔の事思い出しただけだ」そう頬に接吻をする。「ふーん、そっか」と悲しそうな笑顔をする詠に気付くことはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ