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天使の探究者  作者: はなり
第五章 忘却再生

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吸血鬼(二)

紅羽たちが川下りをしている頃、糸音達も紅羽達のいる東へと移動を開始していた。

 

「この先、東と西の堺目に私たちの拠点がある、そこで落ち合うようになっている」

 

「拠点・・」

 

「どうした?」


「いや、また小屋かと思ってな」


「その通りだ」


「はぁ。そうか」

 

糸音は今さら突っ込むことは面倒になってきたので、それ以上何も言わなかった。

特に何事もなく、森の中をしばらく歩いていると一件の小さな小屋が見えた。


「あれか・・私たちがいた所と全く同じ外観だな。こう全く同じだと、怪しまれないのか?」

 

「そうでもないさ。こんな小さな小屋はこの地方ならいくらでも建ってるからな」

 

「そうなのか。ところで、なんかこの辺り雨でも降ったのか?なんか地面が濡れている」

 

「ここらには雨はあまり降らないが雪は降る。しかし、妙だな。雪なら、ここら一面積もっていてもおかしくないはずだが。それに私たちが来た道の反対側にだけ、水たまりがあるな。慎重に行こう、もしかしたら敵がこの場所を嗅ぎつけたかもしれない」


「だから言ったんだ、この小屋は怪しまれると」


「まだ敵とは決まってない。とにかく、警戒を」

 

二人は辺りを警戒しつつは小屋に近づきノックする。すると中から、わざとらしいしゃがれ声が聞こえてきた。

 

「あいことばは?」


糸音の知る限り、こんなことをするのは一人しか知らなかった。仕方なく糸音はノリに乗っておくことにした。

 

「・・・ルクスリアは毎晩、熊のぬいぐるみを抱いて寝ている」

 

「・・・よし!」

 

扉が開かれ、中から詩織がニタニタ笑いながら出てくる。

 

「何がよし!っだ!そんなことより、なッ、何でそんなこと知っているんだ!」


ルクスリアは珍しく、赤面していた。よほど恥ずかしいことだったのだろう。

 

「え、だって、こないだこっそり部屋覗いたら抱いて寝てたよ。ねっ?糸音」

 

「あぁ、それで詩織のノリに乗ってやったんだ」

 

「いやー、わかってるね糸音は。最近ノリいいよー」

 

「はぁ、全くお前らは・・・まぁいいや。おふざけはそこまでで。紅羽はどこだ?」

 

「今、偵察中。もうじき帰ってくると思うよ」

 

「敵の攻撃でも受けたのか?」


「いや、なんで?」


「あそこだけ、水気があったんでな。少し警戒していた」


「あー、あれは大丈夫。私がやったやつだから」


「そうか。まぁ追及はしない。よほどの事があったんだろう。とりあえず、今わかる情報を教えてくれ」

 

「あいよ。とりあえず、紅羽が帰って来てから話そう。どうせ込み入った話になるでしょ?そっちもそっちで何かあったんだろうし」


「そうだな」

 

三人は椅子に座り、飲み物を啜りながら紅羽の帰りを待った。数分後、扉が開かれ紅羽が帰って来た。

 

「悪い、遅くなった。周りに追っ手はいなかった。問題なし。二人共無事でなにより」

 

「あぁ、お互いにな。それで何があったんだ?」

 

紅羽と詩織は二人に説明をする。吸血鬼の眷属との交戦があったこと、そのせいで結局、引き返してきたことを。

 

「なるほどな。ならそっちのライククイーンも眷属崩れか」

 

「いや、それは少し違うかもな」

 

「どういう事だ糸音」

 

「眷属崩れとは吸血鬼化の失敗だ。理性が無くなり、制御の効かない化け物と化す。紅羽が対峙した奴ら、私が倒した、クレインバルドの様にな。だが、そうじゃなく眷属化の成功、これは自我を持っている。眷属にされた吸血鬼は、さらに別の人間を眷属にする事ができる。二人の話を聞く限り、そいつらは徒党を組んでいたんだろ。吸血鬼適正の無い者は眷属にはなれず眷属崩れとなってしまう。そして親である吸血鬼は眷属崩れを操る事ができる。クレインバルドが言っていたことも考えると・・・」

 

「まさか」

 

「あぁ。ライククイーンは吸血鬼になったんだろうな。親玉を殺せば統率がなくなり、眷属どもは指揮を失う。有象無象はほっといてもいいだろう。先に叩くならライククイーンだな」

 

「それはいいんだけど、どうやってあの大群を突破する?あれ突破しないと、たどり着けないよ」

 

「それなら大丈夫だ。眷属崩れなら陽の光に弱いから、日中は出てこれないはずだ。とはいっても森の中、天気が悪ければ、奴らは陽を擦り抜けて襲い掛かってくる。まぁ夜よりはましだろうがな。動きが遅くなるから」

 

「なら、行動は日中で天気の良い日にか。とは言ってもこの地方の天候は荒れやすいからな」

 

「いや、ダメだ」

 

「何がダメなんだ?紅羽」

 

「何故かは知らんが、あの地区全体は深い黒い雲に覆われていた。雲の様子が明らかに変だったあれはなんかあるぜ。その変な雲のせいで日中でも夜みたいに暗い」

 

「厄介だな」

 

「そうなるとまずいな。もしかしたらライククイーンって奴は思っていたより吸血鬼化が進行しているのか」


「どういうことだ?」


「聞いた話では吸血鬼は進行度合いで能力発現する可能性があるらしい。もしかしたら、そいつの能力の可能性は十分にある」

 

「はっは、さすが吸血鬼。何でもありだねー。たしかに糸音の言う通り、私も吸血鬼については少しだけ知ってるよ。吸血鬼は変わった力が使えるって吸血鬼の友人も言っていたからねー」

 

「笑い事じゃないぞ詩織。というか、そんな知り合いがいたことに驚きだ」

 

「私は友達多いからねー。えーと、たしか、一に陽を克服できず、二に能力覚醒、三に完全不死になる、って言ってたかな」

 

「三になったら、終わりってことか・・」


「詩織のその話が本当ならそうなるな。その前に奴を討つしかない。ルクスリアどうする?」


「・・・おそらく首都ラルダの王城に奴はいる。そこまで行ければいいんだが・・・」

 

「それなら私が道を作るよ」

 

「なんだ、策はあるのか?」

 

「策ってほどの事じゃ無いけど。まぁ任せなよ」

 

「なら、任せる。詩織、お前はなんやかんやで頼りになるからな。まぁ念の為、私も詩織に同行しよう」


「なら、ライククイーンは俺と糸音で殺るか」

 

「少し不安はあるが、今はそれが最善策だな。夜が明けて、明日の朝から行動開始だ、頼んだぞ三人共」

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