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天使の探究者  作者: はなり
第三章 動乱平定

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神薙夜戦(二)

「これは困りましたわね。これでは私が迷子なのか、それともメイが迷子なのかわかりませんね。それにしても本邸に入って数分、ここまで憲兵にすら会わないとは・・・やはり、これはもう確定で罠ですわね。まぁ、とりあえず奥へ進んでみましょうか。何かあるでしょう」

 

涼香はいつのまにかメイと逸れていた、というのも気づいたらいなかったのだ。さらに屋敷の奥へと進み、長い廊下を歩く。


「はぁ・・一度あの子には、落ち着いて行動するように言わないと・・・ん?」


廊下の途中、足を止め、涼香は思い返し呟く。


「そういえば、どこで逸れたのでしょうか・・いつから・・・おや?」


いつの間にか、涼香の前には一つの扉があった。なんてことのないただの扉。


「これは・・・なるほど。どうやら、本当に私たちも嵌ってしまったというわけですか。ふーん、人の気配がしますわね。中には果たして誰がいるのやら。それに明らかに扉の向こうから嫌な気配を感じますが・・・」

 

涼香は扉を開けた。その扉の先には暗闇が広がり、奥にある玉座には人が座っていた。暗闇、僅かに月の光が照らしだす玉座には、黒く長い漆黒の闇色の髪、黒い羽織ものの下には黒の高貴な衣装。さながら、おとぎ話に出てくる吸血鬼のような女。

 

「やはりあなたでしたか・・・ほんと嫌になりますわね」

 

「・・・・・」

 

「あら?無視ですの、こうして久しぶりに会ったというのに、挨拶も無しですか」

 

玉座の人物、夜月六花は無表情のまま手をかざして、何も無い空間から自身の周りに鋭い矢を無数に作り出す。

 

「いきなりですか」

 

無言で矢は放たれた。無数の矢は、涼香の身体を貫くが、もちろんそれは氷となり砕け散る。再び涼香が現れた位置は玉座の真横。氷の刃を手に、未だ動かない六花に振り下ろす。

 

シュンッ!


そうして六花は斬られ、霧のように消えた。次の瞬間、気づくと涼香は先ほどまでいた玉座の前にいた。そして玉座には無傷のままの六花が座っていた。

 

「・・・なるほど、幻影。はぁ・・・こういうのはあんまり面白くありませんわね。随分昔に一度だけ、その手の類の人物と殺り合ったことがありますの。おそらく、本邸に入った時からでしょうか。もしくはこの館の入り口からか・・メイがいなくなったのもあなたの仕業ですね。夢、もしくは幻術の異能力者。それで、あなたは一体だれですの?」

 

「ふっふっふっふ、すごいね、お姉さん!ルナの夢を一瞬で見破るなんて!それにすっごく強いね!これじゃだめだ!」

 

玉座の人物、ルナは六花の姿をしたまま、楽しそうに笑い涼香を見ていた。

 

「そう、あなたルナといいますのね。それにしても、その姿でその口調は少し愉快ですわね。それはそうと、あなたはきっと六花さんのこと知っているんでしょうね・・いや、それとも私の記憶から作り出した幻。おそらくここは夢の中なのでしょうね。もしこれが夢ならば、あなたの本体はここにはいないのでしょう。術師はたいてい現実にいますから。だけど、精神そのものはここにある。そしてここで死ねば現実世界でも死ぬ。どうですか?」

 

「正解!正解!大正解っ!すごいね、お姉さん!そうそう、これは夢。私の記憶で作り出す私だけの世界!六花さんのことは知ってるよ。だって仲間だもん、でも話したことはないの」


「仲間・・最悪の情報ですわね。まさかとは思いましたが、あの人が敵になるなんて。本当に厄介ですわね。あなたは色々と知っていそうですから、このまま大人しく捕まってくださいな」


涼香は手を玉座の方へと翳して氷を走らせた。玉座ごと、ルナを一瞬で凍らせる。


「まぁ、さほど意味はないでしょうが・・・」


ルナの体から氷が溶けだし、氷は全て水となる。


「やっぱり・・・」


自由になったルナは指を鳴らすと自身の傍にメイ、糸音、遊、火憐、シャオを顕現させる。

 

「この人達を一斉にあなたと戦わせたらどうなるのかな?私の夢の中でも、それなりに強いと思うけど、どうだろうね。さぁ、やっちゃって!」

 

ルナの声で動き出す夢の住人達。しかし涼香は動じず。それもそのはず、夢とはいえ意識の持たない有象無象の上位互換達ならぬ下位互換達。動きはあまりにも単純だった。涼香は手を一凪するだけで全てを凍らせた。

 

「あまりにも粗雑。でも、一つだけ褒めておきましょう。私に気づかせることなく罠に嵌めたのは上出来ですわ。その異能を磨き続けて数年後のあなたが使っていたら、もう少しは楽しめたでしょうね」

 

「すごいよっ!お姉さん!でもさぁ、そんな事言っても結局はここからは出れないじゃん。それにこの子たちは死なないし、何度でも襲い掛かってくるよ!」


ルナの声に反応してか、氷が全て溶け、敵は自由の身となる。


「だからさ、これを繰り返して飽きるまで遊ぼうよ!飽きたら、また別の遊びを考えるの!」

 

「子供というのはどうにも苦手ですわね。わかりました」


「へー、遊んでくれるんだ」


「いえ、出ます」

 

「あはは、なーにを言ってるのかなー、お姉さんは?出ここからは出れないよ。私の本体を殺すか気絶させないとね。それにね、私はこの夢の外にいるんだよ。この状況でどうやって出るのかなー?」

 

「死にますわ」

 

「え?・・はは。だからさ、何言ってるの?死んだら出れるけど、ここで死ねば現実に戻っても死ぬんだよ」

 

「そう、それでいいですわ。では、ごきげんよう。また外で・・」

 

涼香は氷刃を作り出して、自身の胸に突き刺した。そうして夢の中の涼香は死んだ。

 

「え?・・・・あはは、本当に死んじゃったよ。つまんないの。まぁいっか!あっちのお姉さんはどうかなー。見に行ってみーよ」

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