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天使の探究者  作者: はなり
第五章 忘却再生

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The gears of fate turn(四)


「いないな」

 

「結構歩いたと思うが」

 

二人はひたすらに濃い霧の中を歩いていた。

すると糸音が前から歩いてくるルクスリアを見つける。

 

「おっ!ルクスリアがいたぞ。紅羽!・・・紅羽?」

 

糸音は振り返り、辺りを見回すと紅羽が居なくなっていた。

 

「今度は紅羽か。仕方ない、とりあえずルクスリアと合流・・!?」

 

糸音がルクスリアの方へ向き直ると鋭い爪を立てて襲ってきた。

 

「なんだ!いや、お前ルクスリアじゃないな!」

 

続け様に偽物のルクスリアに糸音は襲われる。

 

(この感じ、幻覚か!?)

 

糸音は針剣を取り出してルクスリアへと攻撃するとそれは消えていった。


 

「やられたな」

 

「糸音!どこだ!」

 

紅羽も同じく糸音と逸れてしまった。

 

「くそっ!見事に分断されたな」

 

しばらく歩いていると前方に人影が現れた。

 

「おい!誰だ!そこにいるのは!」

 

モヤっとしていた人影に紅羽が近づくと次第に姿があらわになった。それは喪服を着た何とも怪しげな男だった。

 

「何者だ!・・お前、この騒ぎの首謀者か」

 

「初めまして、私は宗谷という。紅呂紅羽、お前には死んでもらう」

 

「俺が目的か。しかしそう簡単にはやられないぜ」

 

紅羽は和刀を抜いて宗谷を斬りつける、がしかしその剣は空を切った。

 

「なるほど、この霧はお前の仕業か。異能だな」

 

「そうだ。そしてお前は私には勝てない」

 

「ぬかせ、椿をどこへやった?」

 

「残念だが。お前はあの娘には会えないだろう」

 

「答えになってないな。まぁいいさ、自分で探すから、よっ!」

 

紅羽は、宗谷が現れては次々に斬りふせるがどれも空を切り、宗谷には届かなかった。

 

「くそっ!」

 

すると再び紅羽の前に人影が現れる。よく見るとそれはルクスリアだった。

 

「ルクスリア!やっと見つけたぞ」

 

紅羽はルクスリアに近づいた。しかし間合いに入った瞬間にルクスリアの爪が紅羽を襲う。

 

「くっ!」

 

一瞬の判断で避けることはできたが、軽く傷を負ってしまった。

 

「偽物か!ふざけた真似を」

 

そのルクスリアの偽物を見ていると視界が次第にぼやけ、やがて糸音へと姿を変える。

 

「とことんふざけやがって!」

 

紅羽は偽糸音からの攻撃を躱し後退する。

 

「やりずれぇな」

 

その頃、糸音も紅羽とルクスリアの幻覚に惑わされていた。

 

「全く、やりずらい」

 

攻撃力はさほどないが知っている顔だからこそ、タチの悪い。そんな敵のやり方にどんどんイライラする糸音。

 

「!?」

 

次々に切り捨てていく糸音の背後にたくさんの幻影が現れた。

 

「どうして、殺した」

 

「なんだと?」

 

それはかつて糸音が切り捨てたこの地方にいた悪党達だった。次から次へと現れて口々に皆、同じ言葉を口にする。なぜ?どうして?殺した?、と。

 

「殺す必要があったのか?あんなに酷い殺し方をして」

 

「やめろと言っている!」

 

糸音は次々にその幻影を斬り捨てていく。しかしそれは、ただ消えることなく血を吹き出して倒れていく。

 

「なっ!?」

 

「やめてくれぇ」


「いたいよ」

 

斬られた幻影達は血を流しながら糸音に助けを求めては悲鳴をあげる。糸音は幻影とわかっていても精神的に耐えれなかった。怒りと後悔が溢れ出して、やがて糸音は現実がわからなくなり、闇雲に針剣を振り翳して斬り捨てていく。気づけば糸音の足元には多数の屍と血の池があった。倒れたその顔を見るとどれも糸音の見た事がある顔だった。

 

「あ、あ、あああああああ!!!!!」

 

そして遂に糸音の精神は崩壊した。

 

「今の声は糸音か!」

 

紅羽は声のする方へと進むと膝を落として下を俯く糸音を見つける。

 

「本物か!?」

 

紅羽は糸音に駆け寄ると、糸音の持っていた針剣でゆっくりと貫かれた。

 

「うっ!」

 

糸音は何かが近づいていることに気づくと少し顔を上げてその顔を確認するが顔が無かった。話している言葉も糸音には届かなかった。


(ああ、まただ。殺さないとやられる)


怯える糸音はその幻影の様な人影に肩を譲られる。その相手にゆっくりと針剣を突き刺した。次の瞬間、糸音の意識は現実へと戻される。

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