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二日目の終わり

雑貨屋で購入したのは変なぬいぐるみであった。

あれはなんというか、チグハグで奇抜なデザインであった。

元の世界でいう、なんだろう馬だったり熊だったりの動物が合わさったキメラのような感じだ。

サクラには気持ち悪いと感じるものでも大庭とアリスには気に入るものがあったらしい、アリスなんかは見た瞬間に買います、と言っていた。


「サクラさんはどうです?何か買いますか?」


「サクラ、これなんかはどうです?あ、これもいいな。可愛いですよ!」


「え、ああ。そうだな」


可愛いな、と引きつった笑顔で続ける。

自信満々な二人の笑顔、それをぶち壊すのはさすがに気が引けた。

この場面で気持ち悪いからいらない、なんてこと言ってしまったら二人の顔が絶望に染まるのが目に見えているからだ。


「え、えぇっと」


顔が馬で腕が猫みたいな感じで体がマッチョ、足がチンパンジーである人形と顔が虎で腕がゴリラ、体がガリガリで足が何故か魚の尾なぬいぐるみを二人が差し出している、どこが可愛いのだろうか。

本当に意味がわからない、なんなのだこれは。


オススメしている二人から何とか目を逸らして周りになにかないかと探す。

少しでも自分の趣向にあっているものをと短すぎる制限時間の中で何とか探しあてようとする。


(あったっ!!)


そんな言葉と共に脳内ではガッツポーズ、その次には小躍りする様が見えた気がする。

サクラの手は瞬時にそれを掴み、山の中からそれを引きずり出す。

思った通りのシンプルなクマのぬいぐるみ、結構大きいので抱き枕にできる。


流石私、さすが義母さんの体。

最高だ、今ならば運命に土下座できる。


「あ、ああ!私これは欲しいなぁ!それもいいけど私はこの方がいいなぁ!」


「それですか?」


「シンプルすぎません?」


「私にはこれがいいの!大庭さん、これくれ」


「えぇ‥‥‥、はぁい。シオンさんへのお土産と一緒に会計しちゃいますねー」


やれやれといった様子のアリスと不満げな大庭さん、そんな態度を取りたいのはこちらの方だと言いたいが我慢して帰りはぬいぐるみに抱き抱えて帰ることにした。

今夜はよく眠れそうである。














アリスの部屋に帰ってきた。

帰り際にアリスがシオンに例のぬいぐるみを渡したところ、シオンは明らかに顔を引き攣らせてアリガトーゴザイマースという明らかなカタコトで受け取っていたのだが大丈夫だろうか。

次は私基準で選ぶとしよう、そうするのが一番だろうな、うん。


買ってきたものを冷蔵庫に詰めるとアリスに呼ばれて正座でちゃぶ台の前に座ることになる。

もちろん座布団はあるので足は痛くない。


「サクラ」


「なんだ?」


なにやら手に地図らしきものを持っている。

それに真剣な顔だ、この都市のことについては結構教えてもらったがここの外については教えてもらっていないことを思い出す。

そのことについてかと思ったがその確証もないのでアリスの目を見つめる。


「貴方がここに来て二日。先日はこの都市についてを説明させていただきました」


「ああ、ありがたかった」


「それならば良かった。では次、ここの外、結晶の大地についてをお教えします」


「外、結晶?」


「ええ、この都市から見えませんがここの外、大陸は結晶に包まれています」


アリスは地図を広げるとその中に記されていたのは千年前の大陸。

形自体は変わっていないだろうとアリスはそれを見せてきたのだ。

中央には大陸の中で最も大きい、円形の島、その周りには大中それぞれの大陸が五つある。

それぞれに名前は割り振られておらず、唯一、中央に【結晶大陸】と刻まれているのみであった。


「中央の大陸がここなのか?」


「はい。私たちの中の通称ですが【結晶大陸】と呼んでいます。この大陸には港がありません、全て高い結晶の壁に遮られて入ってこれない場所になります」


「壁、ねぇ。周りの大陸は?これらに名前は」


「あったようですが記録には残っていません。いま、この大陸が増えている心配はないですよ」


「ほう?その答えは?」


「大陸はこの結晶大陸から分離していったからです。これ以上大陸が生まれるのはありえないことなんですよ」


ふむふむとサクラはアリスの話を聞いていく。

この大陸がどの程度の広さなのかはこの地図を見ればわかる、最も大きい下の方にある大陸より1.5倍と言ったところだろうか。

大陸に大きな大きさの違いはないようで、それぞれに国が栄えていると考えた方がいいだろうか。


「国の予想は、できないんだったな」


「ええ、何しろ千年も経っていますから。当時の記録もあらかた消去されていますし、予想のしようがありません」


その記録をサクラは見ていないがアリスの言うことだ、一旦は信用しておくことにする。


「各大陸に一つ国があると仮定するとして、戦争中だとかは?」


「観測所からはそんな報告はありません。この大陸自体に障壁が張られてるので音しか拾えませんが、戦闘音はしないそうです」


「戦争というまで大きなものはないのか?」


「はい。小競り合いは結構あるみたいです。その報告書も持ってきますね」


「いいのか」


「ええ、一気にやった方が楽ですからね」


そう言うとアリスは部屋を出ていく。

恐らくは最上階に取りに行くのであろうことを思うと少し焦る。


「あ、そこまでやってくれなくても!ってもう行っちゃった」


走れば間に合うだろうか、そんなことを思うが立ち上がった身体を座布団に座らせる。

いつもであるが今はさらにやる気が溢れている。

それを止めるのはどうかと思った。


「‥‥‥地図はっと」


もう一度地図をよく見てみる。

真ん中に広がる結晶大陸、その周り、南には結晶大陸を除く大陸の中では最も大きい大陸があり、北に二、そして東と西にそれぞれ一、大陸があることは分かっている。

やはり地図を見る限り海が大半を支配している。

七対三、というところだろう。

東には日本らしき島国も見える、それぞれの大陸は大きさこそ違うものの元々の知識にあった大陸に似ている。

結晶大陸はオーストラリア大陸、東と西を合わせればユーラシア、北は北米と南米、南はアフリカ、大きさ的には東が最も小さく、結晶大陸が最も大きい。


「逆だなぁ」


形自体は似ているが大きさは真逆だ。

完全に平面として表現されているから山や川などそれらの存在する位置も同じとは限らない。

これから予想できることも少なくなくなってきた。

昔のこと、今のこと、サクラの記憶データは軒並み消去されて確認はできないがそれと頭に残っている記憶は違う。

閲覧できるデータがないだけで記憶は残っているのだが、地理や歴史はそんなに詳しくないし義務教育も行えていないため色々と不安な面もあるが今ある知識で勝負をかけようと地図の手でなぞる。




次から三日目になります。


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