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悩み、のち、決意

前半と後半を、分けたので少し短めにできました!


私めの決意!多分後6話?7話?くらいで終われるはず!

誰かが維持を張らなければ。誰かがごねなければ。多分。

((T_T))

「…ん………………んぅぅぅぅぅ……………っ」


「お嬢様、眉間にシワが寄ってます」


 部屋に戻るなり、寝台に倒れ込み枕に顔を埋めて唸る。


「…わけない!」


「はい?なんでございますか?」


「顔、見えないのに、眉間にシワなんて分かるわけない!」


「…今、見えました。ほら、やっぱりシワ寄ってますよ」


 顔を上げてから、嵌められた!と気づく。

あぁっ!もう、今日はこんなのばっかり!


「はい、お茶を淹れました。お着替えは後でもよろしいですから、まず気を落ち着けてください。うぅ、うぅ、唸られたら、こっちが落ち着きません」


「ターシャ……安定の冷静さね」


 枕を抱え込んで、長椅子の上に座り直す。


「ね、ターシャはどう思った?今日のあれ」


「トール様の天然追求ですか?…よく見てらっしゃるな…と思いましたよ。正直、今までより評価は上がりました」


「…名前で呼んでるものね…で、あれはやっぱり天然よね?隠し事がバレてるわけじゃないわよね?」


「そもそも、お嬢様に隠し事はありませんよ」


「あるでしょ!顔とか、顔とか、顔とか!…本当に、失敗した!気が緩んでた!表面のオドオドした態度にうっかりしたんだわ!トール様は…あの方は気になったらどこまでも、忘れず、逸らされず、追求する人よ。そうよね、最初から学者肌の方だったのに、なんで忘れてたのかしら…」


「そうですね…でも、お嬢様。…それで、何か問題がございます?…お嬢様が多少、居心地悪く感じてらっしゃるだけで、トール様はお嬢様の本性を追求されたかもしれませんが、糾弾されてはいませんよ?だいたい、今回は…トール様とは婚約破棄はせず、添い遂げるお覚悟がおありなんですよね?でしたら、本性をお互い知った上で、と言うのは理想的なのではありませんか?…期限まではまだ間がありますが、考え時ではないですか?」


 ターシャの言った『期限』というのは婚約期間のことだ。

 通常、エリアーデでは婚約期間という名のお試し期間がある。

これを経て本格的に結婚準備を進めるが、その婚約期間の期限は、だいたい半年を目安と考えられている。


 だから、マリエルはどの人とも半年以内に婚約破棄をしてきた。


 この期間内であれば、お互い条件が合わなかったんだな、とか、性格が合わなかったんだな、と周囲も理解してくれる。

 本契約前の緩さが認められているのだ。


 もっとも、この期間に親密な関係まで発展してしまえば、それは即時本契約と見なされるので、半年以内の破棄は両者ともに清いことが前提ではある。

 

 マリエルはこの慣習と、世の中からされている認識、すなわち『三人目の婚約者に傷つけられて、条件がうるさくなってしまったご令嬢』ということも利用して、婚約破棄を繰り返していた。


「………ターシャ、冷たい………」


「いえ、せっかくなので、ここで私も追求しておこうかと思いまして…。お嬢様は、本当にトール様とご結婚されるおつもりですか?」


「っ!そ、それは………」


 マリエルは、息を飲む。


 これまで誰にも自分の隙を見られたことがない、と思っていた。

自分の真ん中に、踏み入らせたりしないと決めていた。


 そうして相手に線を引いたからこそ、大叔母が楽しんだというものを自分なりの形に変えて、刹那的な付き合いとして楽しんでこれた。


 マリエルの言う『本気で向き合う』など、そんなものだった。


 確かに、いい加減にしたわけではない。

相手を蔑ろにしなかったし、このままいられる相手ならいい、と毎回思ってはいた。

しかし、そんな相手かどうか見極める期間なのはお互い様、とも思っていたのは事実だ。


もし、相手を深く知って情が湧いたら、捨てられなくなる。

もし、私が深く知られてしまったら、捨てられるしかない。


 それなのに、トールはスルッとマリエルの本質を突いてきた。

 顔だけではない自分の醜さを、暴かれそうになった。いや、もう、彼は知ってしまったのかもしれない。

 誰にも見せずにきたことが、出会って間もない男に暴かれるなんて…それは、恐怖でしかなかった。


 (ターシャの言うように添い遂げる相手なら…最後までをともにする相手、とお互いが思えるなら、さらけ出しても受け入れてもらえるの?)


 マリエルには、そうなれた自分など想像もつかなかった。


「どうなんです?」


「どう、って………どうしましょう…ターシャはどう思う?」


「私はお、おっお…お嬢様がお幸せなら…トール様はいい方だとも思っています」


「だけど?…って付きそうね?」


「だけど………ええ、()()()お嬢様は、もう少し周りを見てから決めた方がよろしいです!」


「え?周り?」


「はい!トール様に問題があるのではなくて、もちろん、お嬢様に問題があるのとも違うのですが…でも!周りの方がどうお嬢様を思ってらっしゃるのか、どんなことをしてこられたのか、ちゃんと知るべきです」


「トール様とお話ししたことみたいね…」


「ええ、ですから申し上げています。トール様にお嬢様がおっしゃった通り、お嬢様は知らないことがたくさんおありです。あえて見ないようにされてきたのかもしれませんが、見ないできてしまったことも、たくさんおありです。…それでは、正しい道は選べません」


 ターシャに『正しい道』と言われてドキっとした。

そして、大叔母の言葉が頭に浮かんだ。


『自分が『前』を向いて選んだ道は、どの道も正しいの。でも、よそ見をして進んだ道は、その決断を、やがて他の人や別の事のせいにしてしまうわ。そういう選び方をしなければ、あなたは必ず幸せに生きていけるのよ』


 この考え方は、マリエルの指針だった。

自分が進むべき道を選ぶ時、必ず一度はこの言葉を元に考えた。

 そうしてきたはずだった。


(確かに、私…ここしばらく忘れていたわね…)


「慌てなくても、まだ時間は……たっぷり、とは言えませんが、まだございます。今、私が申し上げましたことを頭に入れておいてくだされば、お嬢様のことです、きっと見落とさずに気付かれたことを基にして、お決めになられると信じております」


「ねぇ、ターシャにはわたくしには見えていないものが、見えているのよね?それ…わたくしに教えてやろう、とは思わないの?」


ふと、不思議に思ってターシャに訪ねると、ターシャは微笑んで


「全く、思いません!」


ばっさりと言った。


「私に見えているものは、私の思いで見たものです。今、お伝えしたとしても、お嬢様にそのまま伝わることはございません。どんなものを見たとしても、お嬢様がお決めになるのは、お嬢様のお気持ちからでなくてはなりません。ですから、お教えいたしません」


「………やっぱり、安定の冷たさだわ…」


「ふふっ、お嬢様の幸せを思えばこそ、ですよ?もちろん、命の危険があればお教えいたしますが、それはありません。………心がちょっと危険かも知れませんが…壊しはしません」


「…頼もしいのか、突き放されてるのか、分からないわ」


「失礼な!私はお嬢様の侍女でございますよ?お嬢様のためになることしか働きません!」


「はい、はぁい。そういうことにしておくわ…間違えそうになったら、ちゃんと言ってね?」


「はい。命の危険があれば、お教えいたします」


「………もはや、安定の拒絶だわ…」


 今は、初夏。

 この決断の期限まで、後5ヶ月。

この間、トールに本当の自分を見せられるかを見極めて『前』を向いた選択をしよう、とマリエルは思っていた。


久しぶりのターシャとの会話。


今回、ターシャの秘密が漏れかかってます。

優秀だから隠せたのか、マリエル相手だから隠せたのかは分かりませんが…

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