男三人、一人を想う ≪3≫
本当は、この人のパートが長くなったから三つに分けたんですけど…
同い年の男三人組。自己主張激しすぎ(苦笑)
あぁっ!切実に恋愛パートを欲してます!私が!
ほのぼの恋愛を返してー(涙)
男3:私だけの君になる。
『あれ』と初めて会った時の記憶は鮮明だ。
その邸宅は、自分と同い年の少年がいる屋敷で、当家の主人と父の弟である叔父が学友だと聞いていた。
同い年で男同士。大人達のように、子ども達も将来まで仲良くなれるように、と叔父が行くときには自分も連れて来られていたので、何度も訪れていた場所だった。
そんな屋敷に、少し間があいたが顔を見に行くと言われ、今ではすっかり仲良くなった友人に、久しぶりに会えると楽しみに行くと、そこには今までと違う空気が流れていた。
変化は、邸宅の敷地に入った時から始まった。
馬車から見える屋敷がキラキラと光っていたのだ。あまりの美しさにみとれていると、叔父がどうかしたか、と尋ねてきたので、見たままにお屋敷がキラキラと光っている、と伝えた。
叔父は邸宅をじっと見ると、陽が射しているからな、と言った。
陽の光とは明らかに違うきらめきだったのだが、それをどう説明していいのか分からなくて、それ以上続けることはできなかった。
邸内に入ると、キラキラとした光りはもっと強くなった。
屋敷の奥から、主人とその息子である友人が現れた。
私は、叔父達が話しているのをいい機会と、彼に見えた光りについて話した。
『ここのお屋敷、何かありました?すごくキラキラと光ってるのですけど…』
『え?光ってる?…そんなの僕には見えないけど………。うん、まあ、何かはあったよね。あのね、僕の、妹が産まれたんだ』
『妹?』
『そう、すごく可愛いよ?もう、毎日、可愛くなるんだよ!すごいね、妹って。君は?兄弟はお兄さんだけだっけ?』
『ええ…そうです。兄弟は兄だけです』
『そっか…じゃあ、妹の顔、見てく?』
彼に妹が産まれたことと、お屋敷のキラキラした光とが関係するとは思えなかったが、彼にも原因は分からないのだろうと、諦めてついていった。
叔父たちも見に行くようで、いつも通される応接間とは違い、本来なら家族だけが使う、暖かな陽射しがたっぷり入る居間に通された。
そこには、ゆったりとした安楽椅子に座った奥方が、美しい陽射しを浴びていた。
『まぁ!カルロ!わざわざ来てくださったのね!ありがとう。よろしければ、顔を見ていってくださいな』
『出産おめでとう。リンデル、僕たちが、ただお祝いを渡しに来ただけだと思ってるのかい?もちろん、我らがお姫様のご尊顔を拝しに罷りこした次第にございますよ、奥方様』
叔父がわざとらしい丁寧なお辞儀をすると、お屋敷の主が呆れたように苦笑した。
それを見た叔父は、さらに気安く奥方様にニヤッと笑い、私の肩に手を乗せて、奥方様に抱かれた友人の『妹』を見られるよう前に進んだ。
白く柔らかそうな布にくるまれた『妹』を覗きこんだ。
そこにいたのは肌白く、柔らかな曲線を描いた頬は薔薇色に染まり、青空のような青い瞳を持った赤ん坊だった。
その瞬間、衝撃が体を通り抜けた。
私の眉間に水の球のようなものが激しくぶつかって、弾けたのだ。
額を触ってみても、濡れても何もない。痛くもない。
でも確かに感じる違和感を不思議に思いながら、もう一度赤ん坊を見た。
すると、その赤ん坊が友人に笑いかけた。
キャッキャッと声を立てて、笑顔を向けられた友人は、さらに嬉しそうに破顔した。
『可愛いだろ?ちゃんと僕がわかるんだよ?』
奥方様が笑顔の友人を、嬉しそうに見つめながら
『そうなのよねぇ、本当にお兄ちゃん大好きな妹みたいなのよ。マリウスが来ると泣いていても笑うのよ』
と言った。叔父は、へぇ、と覗きこむ。
『何か強い繋がりがあるのかねぇ。どれ?…あぁ、これは、この姫じゃあ、グイドが手離さないだろうなぁ』
『カルロ!ジロジロ見るな。うちの姫が汚れるだろ!』
『うわっ!…奥方様ぁ、お宅のご主人ずいぶんひどくないですかぁ?で?もう女神様の祝福は授かったのかい?』
『まだよ。外に出られるようになったら、王城大神殿でいただくことになってるの』
『そうかぁ…この子なら良いのを授かりそうだねぇ。二ついただくこともあるかもしれないなぁ』
叔父がのんびり話してるのを聞いて驚いた。
あれ?皆には『あれ』が見えていない?じゃあ教えないと、と私は思い、それを伝えた。
『この子、二つありますよ?正しくは三つに近いですけど、三つ目はすごく小さいからおまけみたいな感じです』
『え?』
『ええっ?』
『なに?』
一斉に全員が私の方を振り向いた。
『え?キーラン、お前、何言ってるんだ…それは神官の…』
叔父が慌てて私が言ったことを取り消そうとする。
『………何か、見えるの?』
叔父に被せるように、友人が言ってきたので、私はコクンッと頷く。
『見える?見えるって、何が見えてるんだ?』
『叔父上、先ほど私が、お屋敷がキラキラ光っていると言ったのを覚えてますか?』
『あ?っあ、あぁ。陽の光が、キラキラしてるとかって言ってたな…』
『違います。私がキラキラしていると言ったら、叔父上がそう言いました。…ここに来て、あのキラキラはこの子だと分かりました』
『…つまり、キーラン君。うちの子がキラキラ光ってると言うのか?』
『そんなにキラキラ光ってますの?』
『…え、っと…はい。今は二色のキラキラがこの子の回りでグルグルと光っています。たまに三色目がひょこっと飛び出してきてて…これが女神様の祝福だと思います』
私は物怖じせず、全てを言えたことに安堵する。
叔父に、いつもその景色は見えるかと聞かれ、今日が初めてだ、と答える。さっき眉間に何かが当たって以来、キラキラの色や形まで見えるようになった、と叔父に言うと、叔父はバタバタと慌ただしく帰り支度を始めた。
『グイド、リンデル!すまないが今日はここで失礼する!これは…多分、魔力が発現したんだと思う。急ぎ、魔道省で確認が必要なんだ』
『あ、ああ。もちろんだ、早く行け!』
『すまん、また日を改めて姫のお顔を拝みに来るよ。…キーラン、おいで!』
叔父はバタバタと私の手を引くと、私を抱えるようにして馬車に乗せ、お屋敷を後にした。
まだ、私は『あれ』を見たかったのに…
こうして、私の魔力が発現した日は、彼女と初めて会った日となった――――
☆☆☆☆☆
そして、あの日が来た。
魔力が発現して以来、叔父に連れられて、叔父の職場でもある魔道省に通わされていた。
自分では普通と思っていた景色は、どうやら全く普通ではなかったらしく、これは全て強すぎる私の魔力が洩れた結果の景色だ、と言われた。
魔力の発現から四年。
魔力とはどんなものか、魔術とはどんなものか、少しずつ叔父に教えられた内容が分かってきた頃だった。
どうも私の魔力量は他の人よりも多いようで、きちんとコントロールする必要があるらしい。
魔力のコントロールが利かないと、いずれ暴走してしまい、最悪は大災害を引き起こす、と言われた。
失礼だな…私は災害を起こすような人間ではないのに。少し腹が立つ。
そしてそれは、そのコントロール訓練を長々とさせられ、疲れと飽きが溜まってきていた時だった。
『カルロ!カルロ!頼む、助けてくれ!』
友人であるマリウスの父親、ウィルフォード公爵が叔父の仕事部屋に、何かを抱えながら飛び込んできた。
『なっ…グイド?どうしたんだ急に…?助けるって、何を?』
『呪術の確認と治癒魔術を頼む!娘が…マリエルが大変なんだ!』
『!?…とにかく、こっちの長椅子に!』
叔父の誘導に従った公爵が、抱えていた黒い布の塊を長椅子の上にそっと置く。
『何が起きたか分からない。急にこうなった、と王子は言ってたが、私もその場を見ていないので分からないんだ。もし何かの術なら…とお前に見てもらいたくて…』
布の合わせをそっと丁寧に開きながら、公爵が話す。叔父も頷きながら聞く。
『分かった。まずは見せてくれ』
くるまれた中から彼女特有の銀色の艶やかな髪が一房こぼれ落ちたのが見えた。
それだけで、自分にもそこにいるのが本当に彼女だとわかる。
私はもっとよく見ようと、叔父が確認している横からのぞきこむ。
そこにいたのは、見たこともない彼女の姿だった。
美しく輝いていた白い肌は、赤黒く膨らみ、たくさんの切り傷には血がこびりついていた。
痛々しく腫れ上がった肌の上に、いくつかできた肉芽からは、ジクジクと体液が滲んでいた。
息苦しそうな喘鳴が聞こえ、肩や胸の忙しない動きが、呼吸のしづらさを物語っている。
あまりの惨たらしい姿に、叔父は息を飲んだ。
『…何の前触れもなく、こんな姿になるのか?』
『ああ、本当に分からないんだ。王子は毒を入れられたんじゃないか、と言っていたが、この子が食べたものは国王夫妻も全て食べていて、なにも起きていない。…毒でないなら、何かの呪術ではないか?と言われて…』
『はっきりは言えないが、呪術的なものはまだ感じない…』
叔父が探査の術式を唱えながら、彼女の体を探る。
普段、私は魔術に口を出してはいけないと言われている。しかし、これ以上は我慢ができなくなって叔父に声をかけた。
『呪術はかかっていない』
叔父と公爵がそろって振り返り、こちらを見ると、一斉に話し出した。
『キーラン君、何が原因か見えるのか?』
『キーラン、何が見える?』
『何か…というか、胸の辺りからお腹にかけて黒い靄が見えます。もし、呪術ならかけられた所に黒い塊が見えますが、それはありません。だから、体内に取り込んだものからだと思われます』
『そうかっ!では、物理的に取り込んだものなんだな?』
『ええ、そう思います』
『そんなことが見えるのか…』
『いや、グイド。この子が特別なんだよ。この子の魔力量は多いだけじゃない。人の魔力に作用して、独特の形や色で見ることができるらしいんだ。魔術を使うには、まだまだ不安定だが、これは特技みたいなものだから、誰にも害がない。助かったよキーラン』
『そうか…キーラン君、ありがとう』
『…いえ…』
自分はただ『あれ』を取り戻したいだけなので、誉められるのは変な気がする。
『さて、それだけ分かれば、ここからは私の仕事だな。グイド、キーランを連れて向こうの部屋に行っててくれ。二人の魔力が私に干渉されると変質してしまう』
『っ!叔父上、私も残ります!』
『いや、特にお前にはまだ無理だ。グイド、頼む』
『分かった……キーラン君、おいで』
公爵に肩を掴まれ、引きずられるように外の部屋に連れ出される。
嫌だ!出たくない!『あれ』は私が見つけたんだ。あの光は私のものだ!『あれ』に何かあるなら、見届けるのは私の役目なんだ!
しかし公爵の力は強く、魔力は強くてもひ弱な体の私には太刀打ちできない。
『心配してくれて、ありがとう。後はカルロに任せておけば大丈夫だ。早い対処ができるのは、君のおかげだよ』
公爵が宥めるように言うと、後から追いかけてきて、この部屋で待機していたらしい友人まで、私の横に立ち、キーランが力を貸してくれたんだね、ありがとう、などと言う。
違う!感謝なんかいらない!何故分からないんだ?『あれ』は私のものなんだ!『あれ』に関することは全て私が見なければいけないんだ!
自分の体の奥から、焼き尽くすような熱いものがボコボコと湧いて、膨れ上がるのが分かる。
これが暴走の前兆と、朧気に分かった。
魔力制御用に魔道省から付けられている首輪が、そのうねりを関知して、微量ではあっても効果的な電流に私の首はビリっと刺激され、一瞬息が止まる。
目の前がチカチカとして、その場に崩れ落ちる。私を気遣って、背中を擦る友人の手さえ煩わしい。
悔しい!もっと力があれば『あれ』は渡さないで済んだ。力の足りない自分が情けない。『あれ』を取り戻さなければ…全て私のものなのだから!
次は絶対、譲らない!
―――――キーラン・ナイトリッジ、7歳。執着の始まりだった。
と言うわけで、やっとキーランのヤンデレが…
タグから、ほのぼのを外してヤンデレを入れるかなぁ
気づいたら、マリエル何もしてない。のに、一身に浴びる執着…
怖っ、可哀想なヒロインに、なっちゃった…ごめん。




