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夜中に、誰かが鳴いている  作者: 宍戸 耀


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第1話 目覚め

目を覚ますと、知らない場所にいた。


「……どこだ、ここ」


俺の名前はケイ。


身体を起こし、辺りを見回す。


古びた家具。破れた袋。壊れた家電。


もう使われなくなったらしい物が、あちこちに積み上げられていた。


少し離れたところには、何が入っているのか分からない袋まで無造作に転がっている。


どう見ても、まともな場所じゃない。


「ゴミ捨て場……なのか?」


なんで俺がこんなところにいるんだ。


昨日のことを思い出そうとする。


けれど、どうにも記憶が曖昧だった。


ここへ来た覚えなんてない。


誰かと一緒に来た覚えもない。


気づいたら、こんな場所にいた。


「参ったな……」


しばらく考えてみたものの、何も思い出せそうになかった。


それより――。


「家に帰らないと」


俺が突然いなくなったんだ。


きっと、みんな心配している。


今頃、探しているかもしれない。


俺がいなければ困るはずだ。


今までだって、ずっとそうだったんだから。


こんなところでのんびりしている場合じゃない。


俺はその場所を離れた。


とはいえ、一つ問題がある。


「ここ、どこなんだ……?」


まったく見覚えがない。


とりあえず、記憶にある景色を探すしかなかった。


知らない住宅街を歩く。


何本か細い道を抜け、ようやく大きな道路へ出た。


けれど、そこにも見覚えはない。


「……こっちだったかな」


なんとなく右へ進んでみる。


しばらく歩いたところで足を止めた。


違う。


こんな道は知らない。


仕方なく引き返し、今度は反対へ向かう。


歩いても、歩いても、なかなか知っている場所に出ない。


それどころか、妙な違和感まであった。


「こんな建物、あったか?」


知らない店。


見覚えのない家。


逆に、あったはずの店が見当たらない。


景色が、俺の覚えているものと少し違っていた。


「……ずいぶん変わったな」


どのくらいここへ来ていなかったんだろう。


そんなことを考えながら歩き続ける。


それでも、帰らないわけにはいかない。


みんなが待っている。


きっと心配している。


早く帰って、安心させてやらないと。


そう思いながら道を渡ろうとした、その時だった。


突然、横から眩しい光が迫ってきた。


「え?」


次の瞬間。


――プアァァン!


耳をつんざくようなクラクションが響いた。


「うわっ!」


慌てて後ろへ下がる。


すぐ目の前を、車がものすごい勢いで走り抜けていった。


風が身体をかすめる。


あと少し遅かったら、まともにぶつかっていた。


「……危なかった」


遠ざかっていく車を見送りながら、しばらくその場から動けなかった。


知らない道をずっと歩き回っているせいだろうか。


どうにも調子が狂っている。


「しっかりしないとな」


こんなところで何かあったら、それこそ家に帰れなくなる。


もう一度、左右をしっかり確認する。


今度は慎重に道を渡った。


「帰らなきゃ」


みんなが待っている。


そのことだけを考えて、また歩き始めた。


どれくらい歩いただろう。


さすがに少し疲れてきた頃だった。


前方に、小さな公園が見えてきた。


「……あれ?」


足が止まる。


どこかで見たことがある。


いや、違う。


知っている。


「あそこ……」


何度も見たことがある公園だ。


その向こうに続いている道にも覚えがある。


「そうだ」


頭の中で、ばらばらだった記憶が一気につながった。


「こっちだ」


ようやく分かった。


公園を抜ける。


坂を下る。


角を一つ。


もう一つ。


途中で一度迷いかけたけれど、今度はすぐに道を思い出した。


進むにつれて、見覚えのある景色が増えていく。


懐かしかった。


やっと帰ってきたんだという気持ちが、少しずつ強くなっていく。


そして――。


「……あった」


見覚えのある塀。


その向こうに、懐かしい屋根が見えた。


間違いない。


俺はその場で、しばらく家を見つめた。


ようやく見つけた。


俺の家だ。


「まったく……」


思わず笑ってしまう。


「みんな、心配してただろうな」


俺が突然いなくなったんだ。


きっと大騒ぎだったに違いない。


怒られるかもしれない。


どこへ行っていたんだ、と問い詰められるかもしれない。


でも、そんなことはどうでもいい。


ちゃんと帰ってきたんだから。


俺は少しだけ足を速めた。


早く帰ろう。


そしてみんなを、安心させてやらないと。

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