第9回 闞沢、徴兵をかける
闞沢の名は、若いながらやり手の人物として、徐々に知られるようになった。そして、太守の張羨も、将来を考えての事なのか、善政を敷き、桂陽郡の評判も良くなってきた。
張羨が闞沢を呼び聞く。
「徳潤よ。お前のおかげで、桂陽郡は住みやすいと評判になった。一方で、流民の数が増えてきているとも聞く。郴県でまだ受け入れは可能なのか?」
「今のところ、まだ余力はありますが、このまま流入が続くようになると、受け入れが難しいかもしれません。」
「わかった。その場合は、他の県に受け入れをさせよう。」
「その様な場合に備えて、この竹簡をお持ち致しました。」
「竹簡?見せてくれ。」
そこには、流民の受け入れから、既存農民の減税についてなど、事細かに書かれており、これを読めばすべてがわかる様になっていた。張羨は言う。
「徳潤よ、用意の早いこと、見事である。この竹簡の写しを、各県に送れるように手配してくれ。」
「かしこまりました。」
闞沢は拝礼して立ち去ろうとしたが、張羨に呼び止められた。張羨が言う。
「徳潤、実はもう一つ話がある。」
いつもより、重たい雰囲気である。張羨は続ける。
「これより、桂陽郡の軍の拡大を行いたいと思っている。」
「軍の拡大・・・。」
「そうだ。今、荊州牧の劉表殿は、北方と中央の動静には気を配っているが、こちらの南方を全く見ていない。今、徳潤のおかげで内政は充実している。あとは、それに見合った軍事力を備えれば、劉表殿はもちろん、漢王朝も何も出来まい。」
「わかりました・・・。郴県では、盗賊、山賊の討伐を名目に徴兵をかけましょう。しかし、民の生活はどうなりますか?」
「民の生活は、そう大きく変わるものではない。それは、この張羨の名に懸けて約束しよう。」
「承知いたしました。」
こうして、郴県を皮切りに、桂陽郡各県で一斉に徴兵が行われたのである。




