勇者を目指す少年
よく晴れた日の朝。
この日、一人の少年が村を旅立とうとしていた。
鍛え上げられた肉体に赤い髪、腰には木刀を差している。
石造りの門の前、村人たちが少年を見送る中、聖典統一教会の神父が少年に歩み寄り、そっと肩に手を乗せる。
「カイル、勇者学園のあるエラマン王国までは神殿騎士が送り届けてくれる。入学するには試験に合格せねばならんが、お前なら大丈夫、両親を亡くしてから今まで、寝る間も惜しんで学んで来たんだ」
「神父様、今までお世話になりました。この御恩は忘れません」
少年は以前、魔物に襲われていたところを喜一に助けられた、リューネ村のカイルだ。
喜一と別れた日から毎日、喜一から貰った木刀を振るい続け、カイルの体は逞しく育っていた。
村人ハンスがカイルに声をかける。
「お前の父さんと母さんも、立派に育ったお前のことを、きっと空から誇らしく思っているぞ」
「ハンスさんも、お元気で」
別れの挨拶を済ませ、馬車へと向かう。
馬車に乗り込む直前、振り返り村を目に焼き付ける。
生まれ育った、両親と暮らし、友達と遊んだ村。
カイルは手を振って見送る村人たちに深々と頭を下げると、腰に差した木刀を手に持ち、馬車に乗り込む。
馬車に乗り込むと、茶髪の少年が一人乗っている。
「おはよう、君も受験者だよね? お互い頑張ろうね!」
「ああ、道中よろしく」
茶髪の少年はぶっきらぼうに応える。
カイルがこれから向かうのは、勇者を育てるための教育機関、勇者学園だ。
魔人が魔界から現れ、エルグラントに侵攻を開始してから、すでに十三年の時が過ぎたが、どれだけ人々が待ち望んでも、聖女も勇者も一向に現れない。
そして、現れるのを待つのではなく、各国から優秀な人材を集め、勇者を育て上げようという考えのもと、勇者学園が開校した。
勇者学園の入学資格は十三歳以上、性別、種族は問われない。
そしてカイルは今年、十三歳になる。
馬車が動き出す。
馬車の前後には、教会から派遣された神殿騎士が四名ずつ、騎乗して護衛についていた。
リューネ村から勇者学園のあるエラマン王国までは、半年ほどの旅路になる。
道中、教会からの受験者を乗せながら向かっているのだ。
カイルは木刀を眺め、喜一の言葉を思い返す。
『お前が世界を救え』
カイルは木刀を握りしめる。
(キーチさん……僕、やるよ)
馬車は進む、勇者学園のある、エラマン王国へ向けて。




