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Das Heldenlied   ヘルデンリート 20 Die Hymne  作者: Siberius
シエルの章
9/59

シエル――サイーゼ

平日、休日の市街地戦の傷が癒えぬあいだにまた新しい事件が発生した。

クヴィンツ初等学校が闇のドームで包まれたのだ。

闇のドームは周囲や他者を拒絶するかのように立っていた。

この事件が発生すると、その道のプロに連絡が入った。

つまり、クヴィンツ教会である。

セリオンはバイク「メルツェーデス」に乗って現場に駆けつけた。

バイクをセリオンは止める。

「これが闇のドームか。この中にはシエルもとらわれている。いったい何が起こっているんだ?」

セリオンはドームを見上げた。

セリオンはドームに触れようとした。

するとスパークが起こった。

まるでセリオンを拒絶するかのようだった。

セリオンは神剣を出した。

「これで、どうだ?」

セリオンは神剣をかかげると、ドームを斬り裂くように大剣を振り下ろした。

その瞬間ドームに亀裂が入った。

「これで中に入れるな。この中ではいったい何が起こっているんだ?」

セリオンは亀裂から侵入した。



クヴィンツ初等学校の生徒たちはサイーゼが作った亜空間「コロッセウム(Colosseum)集められていた。

中央にリングがあって、周辺を観客席で囲まれている。

生徒たちはおびえていた。

彼らはまったく事態をわかっていなかった。

サイーゼが特等席から生徒たちを眺める。

「さて、みなさん! みなさんは何が起こったのか理解できていないでしょう。この私、氷の魔女サイーゼがあなたがたに命じます。戦士として魔物と戦い、生き抜きなさい」

サイーゼは氷のような冷たい目線で生徒たちを睥睨へいげいする。

闇の騎士たちがサイーゼの命令を順守するべく、生徒たちを槍で誘導する。

生徒たちの一部がグループとしてリングの中に押しやられた。

彼らは騎士から剣を渡された。

「さあ、戦士たちよ! あなたがたの相手は幽騎士ゆうきしデュラハンです! この私の前で、武勇を示しなさい!」

サイーゼの言葉が響き渡った。

デュラハンとは頭部のない幽霊のような騎士のことである。

デュラハンは大剣を持っていた。

生徒五人とデュラハン一体の戦いとなった。

しかし生徒たちはぶるぶる震えていて、まともに戦えるようではなかった。

闇の騎士たちは生徒たちが後退しないようにボウガンで武装していた。

もし、逃げるようであればボウガンで射殺せよと、サイーゼから彼らは命令を受けていた。

デュラハンは戦士たちに「接近」した。

そして大剣で一人の男の子を貫いた。

デュラハンの大剣が真っ赤に染まった。

デュラハンが大剣を引き抜く。

男の子は倒れた。

男の子は即死だった。

「きゃあああああ!?」

女の子が悲鳴を上げた。

この子は人の死を見ることが初めてであった。

デュラハンはこの女の子に近づくと、大剣を振りかぶった。

「こっ、来ないで!」

デュラハンは女の子の首を斬り捨てた。

女の子の体だけがリングの上に倒れる。

「ウッフフフフ! さあ、死にたくないのなら抗いなさい! 抗って、打ちのめされ、最後まで生き続けなさい! その中にこそ、人の命が閃光のように輝くのです!」

サイーゼは心底からこの状況を楽しんでいた。

生徒たちは震えていたが、一人の男子があまりの緊張状態に耐え切れずに行動した。

「うわああああああ!? もうやだー! おうちに帰りたーい!」

男の子は背を向けてデュラハンから逃亡した。

闇の騎士たちは一斉にボウガンの矢を放った。

男の子の全身に矢が刺さった。

男の子はどしゃあと倒れた。

「ウソ……死にたくない……」

「アーッハッハッハッハ! これでわかったでしょう! あなたがたはこのコロッセウムの戦士。敵前逃亡する者は許されません! あくまで戦うのです! 戦って、戦って、戦い抜いて、そして生命の輝きを見せるのです!」

「くそ!」

男の子がデュラハンに斬りかかった。

しかし、子供の力ではデュラハンの鎧を傷つけることなどできはしない。

サイーゼは生徒たちが勝てないことをわかって、このゲームを催していた。

もう一人の女の子が剣でデュラハンを斬ろうとした。

デュラハンの斬撃が二人を斬りつけた。

二人は倒れて血まみれとなった。

デュラハンは無言だった。

「あらあら、もう全滅したのですか? この程度では楽しめませんね。次の戦いをセッティングしなさい」

「は! 我がきみ!」

闇の騎士たちはサイーゼの命令を実行した。

次はシエルが戦わされる番だった。

シエルも剣を持たされる。

五人のグループで「グロース・デーモン(Großdämon)」と戦わされるようだ。

グロース・デーモン――筋肉質な体、鋭い爪、屈強な脚をしている。

生徒たち=戦士たちは闇の騎士が持つスタン・スピアで軽く電撃を浴びせられ、リングに誘導されていった。

「さあ! では戦いを始めなさい!」

サイーゼが命令する。

シエルは自分の死を意識した。

シエルは戦闘技術を教えられていない。

戦いなど今までやったことがないのだ。

シエルは死を身近に感じたことで、深い関係にある人を思い浮かべた。

まずはセレネを思い浮かべた。

セレネはシエルにとって、信仰の母といえる存在だった。

神を信じること、神を愛すること、そして兄弟姉妹と共にあること。

それらを教えてくれたのはセレネだったからだ。

死を前にして、シエルはセレネに感謝した。

そしてシエルはもう一人の人物を思い起こした。

それはセリオンだった。

セリオンは今どうしているだろうか? もう事件のことは知っているだろうか?

セリオンならこんな魔物も倒してしまえるに違いない。

セリオンなら今の状況をどう見ているだろうか?

きっと自分たちを助けてくれるだろう。

(セリオンさん!)

シエルはセリオンに祈った。

グロース・デーモンはシエルたちをくびり殺すべく接近してくる。

生徒たちの顔に恐怖が浮かんだ。

その時である。

上空から何かが落下した。

落下したのは大剣を持った人であった。

彼は大剣でグロース・デーモンを一刀両断にした。

「無事か、シエル?」

「セリオンさーん!」

シエルはセリオンに抱きついて泣き出した。

「安心しろ。ここは俺に任せてくれ」

セリオンが優しく語りかける。

「ウッフフフフフ! よくここまでやってきましたね、青き狼セリオン・シベルスク? もう少し生徒たちが虐殺されるのを見ていたかったんですが」

「おまえがこの事件の首謀者か。おまえは何者だ?」

「私はサイーゼ。氷の魔女サイーゼといいます。闇に仕える者ですよ」

「おまえを倒せば生徒たちは解放されるんだな?」

「ええ、確かに。その通りですわ」

「そうか。なら話は早い」

「ですが、そうはいきませんことよ。私の騎士たち! さあ、青き狼を殺しなさい!」

セリオンの前から闇の騎士たちが一斉に襲いかかってきた。

セリオンは一撃を放った。

それはまさに圧巻だった。

セリオンの斬撃は一撃で闇の騎士たちの一部を倒した。

セリオンは圧倒的に強かった。次々と全周囲から襲ってくる騎士たちをセリオンは淡々と斬り捨てた。

そうして闇の騎士たちは全滅してしまった。

セリオンはサイーゼのほうを見つめた。

「どうした? もう、おまえの騎士は残っていない」

「ウッフフフ!」

サイーゼはニヤリと笑った。

「何がおもしろい?」

セリオンはふしぎがった。

「いいでしょう。かくなる上はこの私があなたの相手をしましょう。ゾクスもゼトも、ガルンツォもあなたに倒された。ここは私自身が戦うとしましょう」

「!? あの事件もおまえのしわざだったのか!」

「別な空間へ招きましょう。夜宮ノクスへ!」

セリオンの前に亜空間の扉が現れた。

セリオンはそれをくぐった。

すると、セリオンの前に黒い要塞と、夜の海が姿を現した。

「ここが、夜宮ノクスか……」

「その通りです。青き狼、セリオン・シベルスクよ」

そこには青いローブを着たサイーゼがいた。

セリオンは大剣をサイーゼに突き付ける。

「ここでおまえの野望もついえる! ここですべて終わりだ!」

「ウッフフフフ! それはどうでしょう? 私はサタン様に仕えるしもべの一人にすぎません。私は審問官にして氷の魔女サイーゼ。私のほかに何人もの審問官がいるのです」

「審問官とは何者だ?」

「闇はそれほど深いというわけですわ。さあ、それでは始めましょう! 私とあなたの戦いに終わりを!」

サイーゼは杖を構えた。

杖先から大きな氷が作り出される。

サイーゼはその氷を発射した。

「フン! そんな攻撃くらうか!」

セリオンは大きくジャンプした。

身体強化で脚力を強化する。

セリオンは跳び上がると、大剣をサイーゼに向けて叩きつけた。

サイーゼは幻影をまとい、セリオンの攻撃を回避した。

セリオンはさらに大剣で薙ぎ払う。

再びサイーゼは回避する。

セリオンはサイーゼに大剣で突きつけた。

さらにサイーゼはかわす。

「ウッフフフフ! 無駄ですよ。その程度の攻撃などたやすくかわしてみせますわ」

サイーゼは氷の魔力を集めた。

サイーゼの「氷牙」。

氷のレーザーが弧を描いてセリオンに向かう。

それからとがった氷が現れて、セリオンを突き刺そうとする。

セリオンは大剣で氷牙を砕いた。

「多連・氷結槍!」

サイーゼが上空から氷の槍を次々と発射した。

セリオンの斜め上から氷の槍が襲いかかる。

セリオンは一太刀で氷の槍を一気に打ち砕いた。

「つらら!」

サイーゼはセリオンの上方からつららを落下させた。

セリオンはつららの落下地点を意識してタイミングよくつららをかわした。

「氷雪山!」

山のような氷がセリオンの真上に現れた。

凍てつく氷の山がセリオンめがけて落下する。

セリオンは後方に跳びのいた。

氷の山は砕けた。

「フフフ……よくかわしますね。ですが、これはどうでしょう? 氷雪波ひょうせつは!」

氷と雪が波のようにセリオンに襲いかかる。

セリオンは凍てつく闘気を発した。

氷雪がセリオンから吹き飛ばされる。

「くっ……これほどとは……ですが、これならどうでしょう? 氷分身!」

サイーゼは氷の魔法で自身の分身を作り出した。

「死になさい!  氷矢ひょうや!」

分身したサイーゼたちは氷の矢を一斉にセリオンに放った。

セリオンは目を細めた。

そして膨大な蒼気で氷の矢を打ち砕いた。

「そこだ!」

セリオンは本物のサイーゼに斬りかかった。

本物のサイーゼ以外は分身は消滅した。

「ぐう!?」

サイーゼは杖でセリオンの攻撃を受け止めようとした。

しかし、セリオンの蒼気によってサイーゼの杖は切断された。

「なっ!?」

セリオンはサイーゼに突きを放った。

「あああ!? そんな……」

セリオンの突きはサイーゼを貫いた。

サイーゼはそのまま後ろに下がった。

サイーゼは笑うと、要塞の手すりから海へと落ちていった。

その後亜空間は消失した。

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