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Das Heldenlied   ヘルデンリート 20 Die Hymne  作者: Siberius
ノエルの章
30/59

ノエル――暗部

正教の会議にて。

「あのジョルジオがやられた!?」

「そんなバカな!?」

「なんということだ!?」

「フン! しょせんは口だけの男だったか」

会議ではジョルジオの敗北を認められない派とジョルジオを侮辱する派に分かれた。

それにしても正教は会議を重視する。

ノヴァ―ル人の性向か、ノヴァ―ル人は合議制を好む。

何かを決める時、ノヴァ―ル人は合議制で決めることが多い。

一方、ツヴェーデン人やシベリア人は指導者の意思に従うことを好む。

意思決定は指導者にやってもらいたいと考えているからだ。

ゆえに、リーダーシップを重視する。

大神官のピエトロが口を開く。

「暗部の三人を呼べ」

「はっ!」

大神官の命令のもと、三人の暗殺者が呼ばれてきた。

暗部・黒といって、三人のチームである。

「お呼びでしょうか、大神官猊下」

隊長のマルコ=クイリーノ(Marco-Quirino)が答える。

ほかに髪をオールバックにしたオヴィーディオ(Ovidio)と筋骨ムキムキなゴドフレード(Godofredo)がいた。

「君たち三人に頼みたいのは、シベリウス教会堂の人員を抹殺すること、ミレーナを連れ帰ること、だ。いつ出撃するか、どういう手段を取るかは君らに一任する」

「はっ! 大神官猊下の御心のままに! 必ずや抹殺をやり遂げて見せます!」

「うむ、よろしい。期待しているぞ」


 

「セリオン、あなたはまだ寝ないの?」

アンジェラが教会でセリオンに尋ねた。

「ああ。ジョルジオ昼間に堂々やってきたが、正教の暗殺者が夜にこないとも限らないからな。俺は夜のあいだ起きていることにするよ」

「そう……ありがとう、セリオン。私たちはあなたによって守られてばかりだわ。あなたに苦労をかけるわね。だから、お礼くらい言わせて」

「別に、礼を言われるほどのことじゃない。俺が自分の義務と思ってのことだ」

アンジェラは優しくほほえんだ。

「そうそう思えるものじゃないわよ。あなたは立派すぎるわ」

アンジェラがコーヒーを持ってきた。

実はルブリアナ支部教会でコーヒーが流行っているのだった。

「あなたはコーヒーが好きだったわよね? はい、どうぞ」

「受け取ろう」

短い返事をしてセリオンはコーヒーカップを受け取った。

「うまいな」

「そうね、おいしいわね」

「あれから彼女のほうはどうだ?」

彼女とはミレーナのことである。

「少しだけ変化があったわ」

「変化?」

「彼女は改宗を申し出てきたわ」

「改宗か。なるほど、正教を刺激するわけだな」

「そうね」

「正教はシベリウス教を脅威と感じているのだろう。おそらく平民や貧民が信徒になっているのが原因だ。シベリウス教には貴族も平民も区別がないからな。それに下層民がいなくなってしまっては、正教の下部構造を消滅させてしまう。つまり貴族の存在意義を消失させる。俺たちに対立の意思がなくても、対立の構図はでき上るわけだ」

「ええ、でも正教では貴族、平民、貧民の区別はその分断は永遠に続くというわけよ。そこに終わりや救いはないわ。彼らは決して正教の教えでは救われない。正教ではそれらは永遠に区別されるべきだと思っているから……シベリウス教では平民や貧民のために基礎学習を行っているけど、それさえも正教にとっては脅威なのでしょうね。下層民の知識や技術が向上すれば貴族の脅威になるから」

「そうだな。信徒を決して俺は見捨てない。絶対に見捨てはしない。だから……!?」

セリオンは視線をステンドグラスに向けた。

ステンドグラスは破られ、三人の黒づくめの男たちが現れた。

「何者!?」

アンジェラが厳しい目を向けた。

セリオンは大剣を出した。

「お初にお目にかかる。私はマルコ=クイリーノ。正教に属する者だ」

「そしてぼくはオヴィーディオです」

「俺様はゴドフレードだ」

「つまり、おまえたちは正教の暗殺者というわけか」

「フフフ、よくわかったな。それにしてもこんな深夜に起きているとはな。これは想定外だ。寝込みを襲おうとしていたのだがな……」

「おまえたちの行動など、お見通しだ」

「フフっ、どうやらそのようだな。おまえがセリオン・シベルスクか?」

「そうだ」

「そうか。オヴィーディオ、ゴドフレード! 青き狼の相手をして差し上げろ!」

「はっ!」

「はいさ!」

オヴィーディオが槍を構えた。

ゴドフレードが拳闘の構えを取った。

セリオンは大剣を見せる。

オヴィーディオが槍で突きかかってきた。

彼はセリオンの心臓を狙っている。

それをセリオンは大剣で弾いた。

ゴドフレードが拳を振りかざしてきた。

狙いはセリオンの顔だ。

よく見るとゴドフレードは金属の拳をしていた。

セリオンはあっさりと退ける。

オヴィーディオとゴドフレードはタイミングを合わせて同時攻撃を仕掛けてきた。

セリオンは蒼気を叩きつけて二人を引き離した。

ゴドフレードの火炎拳。

ゴドフレードは燃え盛る炎の拳でセリオンを攻撃してきた。

そしてオヴィーディオの氷晶槍。

オヴィーディオは氷の槍を形成してセリオンに突きを放つ。

ゴドフレードの拳から炎が飛びだす。

セリオンはそれを蒼気の刃で斬り捨てた。

オヴィーディオの槍をセリオンは蒼気の刃で受け止めた。

ゴドフレードの炎掌破。

ゴドフレードが手の平を出し、そこから炎を放つ。

オヴィーディオの氷刃。

オヴィーディオは槍から氷の刃を放った。

セリオンは蒼波刃を飛ばしてこの二つを迎撃する。

二人はセリオンと距離を取った。

それはつまり、意図的にそうしたというわけだ。

セリオンは二人の行動を警戒した。

ゴドフレードの火炎波。

ゴドフレードは大きくアッパーの構えを取ると、炎の波を出した。

一方、オヴィーディオは氷晶波――氷の波を出した。

セリオンは蒼気を収束した。

セリオンの蒼気が集まり力となる。

「翔破斬!」

セリオンが蒼気の波を出した。

二つの波と一つの波がぶつかり合い、はじけ飛ぶ。

すかさず、オヴィーディオが氷の槍で突いてきた。

セリオンはそれをかわし、蒼波斬をオヴィーディオに叩き込む。

「がっ!? こ、このぼくが……」

オヴィーディオが倒れた。

「オヴィーディオ! きさま! 許さんぞ! ウオオオオオ!」

ゴドフレードが巨体を動かして炎の拳でセリオンに打ちかかる。

セリオンの斬撃。

それはゴドフレードの手を切断した。

「ぐおお!? 俺の手が!?」

すかさず、セリオンはゴドフレードに斬りかかる。

セリオンの蒼波斬。

「ごっ!? 俺様がやられただと!? こんな……がはっ!」

ゴドフレードも倒れた。

そこに、パチパチと拍手が送られた。

それはマルコだった。

「オヴィーディオとゴドフレードを倒すとはさすがだよ、セリオン。Bravoブラーヴォ!」

「次はおまえが俺の相手か?」

「その通り。私が君の命を屠ろう。では勝負だ!」

マルコが黒い刀を抜いた。

マルコの闇黒刀。

マルコは一瞬にしてセリオンの懐に踏み込んだ。

疾風のごとき速さだった。

マルコにはセリオンが反応していたとは思わなかった。

セリオンは反応した。

マルコの踏み込みと刀の軌道を読んでセリオンはかわした。

「ほう……私の一撃をかわすとはな。だが、これで!」

マルコはすばやくセリオンの周囲を疾駆した。

それはすさまじい速さで、自然界にはこれほどの速さで動ける者はいないだろう。

マルコはセリオンの背後から、セリオンを斬りつけた。

セリオンは振り返りもせずに、大剣でマルコの攻撃を受け止めた。

「そんな攻撃など俺には通じない」

「よく受け止めたな。私の力はこんなものではないぞ!」

マルコは魔力で石の槍を形成した。

硬石槍である。

「死ぬがいい!」

マルコは硬石槍をセリオンに向けて投げつけた。

セリオンは威力もスピードも見切って硬石槍をはじき飛ばす。

「石の呪縛よ! 石灯せきとう

セリオンの足元からグニャグニャとした黒い塊が襲ってきた。

セリオンはとっさに後ろに跳び、石灯を回避する。

黒い塊が残った。

「ほう……よくかわすな。しかし私の力はこんなものではない。これがわかるか?」

マルコはニヤリと笑い、自分の刀を見せた。

刀に緑色の液体のようなものが付着した。

「それは……毒か?」

「その通り! この毒の刃! 受けきれるか!」

マルコは毒の斬撃を二発セリオンに飛ばしてきた。

セリオンは蒼波刃で毒刃を相殺した。

その後、マルコがすさまじいスピードで間合いをつめた。

セリオンに毒の刃で斬りかかる。

セリオンは半歩跳んで毒の刃を回避する。

「ちい! よくかわす! 毒の槍よ!」

マルコは緑色をした槍を形作った。

マルコの毒槍どくそうである。

マルコは毒の槍を発射した。

セリオンはすばやく身をかわして、毒の槍をよけた。

「この私と、ここまで戦えるとはな。だが、これでケリをつけさせてもらう!」

マルコは闇を刀にまとわせ、大きく伸ばした。

「力で押すのは好みではないが、この深き闇を思い知れ!」

マルコの刀がセリオンに迫る。

セリオンは蒼気を一つの刃として収束させた。

蒼白い刃が形成される。

「蒼気凄晶斬!」

セリオンはマルコの闇の刀を斬り裂き、さらにマルコ自身にも深い傷を浴びせた。

「げはっ!? バカな!? こんな……こんなことが……この私が対象の暗殺に失敗するとは……これが青き狼の力……」

マルコはばたりと倒れた。

その体からは多くの血が流れていた。

「戦いは終わった。もう出てきてもいいぞ、アンジェラ?」

セリオンが呼びかけた。

「さすがですね。正教の暗殺者を倒してしまうなんて」

「ああ、これで正教も大きな危機感を持つだろう。それに俺たちに攻撃をするということがどれだけ愚かで代償を伴うことであるかもな」

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